中国放送民族楽団来日公演 07.2.13
中国放送民族楽団、中国での正式名称は中国広播民族楽団。北京では中央民族楽団と並び、数々の高名な演奏家が所属した楽団ですね。そんな彼らが来日と聞けば、これはもう聴きに行くしかない!
たとえチケットが高価であっても。・・・でも7,000円は痛いわ。
板胡の姜克美や中阮の沈非や柳琴の崔軍淼や琵琶の陳音、みんなまとめて来日するのかなあ。日本に居ながらこの楽団の演奏を聴きに行くことが出来るとは。上海に居てもなかなか機会が無いというのに(北京に居れば違うんでしょうが・・)、日本ってホントにいい国だな~。
思えばその昔、所属していたオーケストラが1999年に北京公演を行った際、交流していただいた団体が、すなわちこの広播民族楽団。噂に高いこの楽団の面々、それぞれ独奏においても有名な方々に実際に会えるというだけで、当時はもうドキドキでした。あの頃は若かった・・・。
演奏会当日。会場でパンフを買って・・・と。あれ。メンバーの名前に沈非の名前がないや。残念!
チャンスがあれば会ってお話してみたかったのにな。もう楽団辞めてソロ活動してるんだろうか。でも崔軍淼の名前はあったし、もちろん姜克美もコンサート・ミストレスとしてトップに名前がありました。まあ彼女はほとんど楽団の顔みたいな存在ですもんね。
曲目を見ると、お、白毛女がある。姜克美が得意の板胡をご披露するんだね。第一部はほとんどが中国の曲で、茉莉花にラストエンペラーかぁ。そして第二部はすべて西洋モノ。うーん、ずいぶん日本の観客にコビた選曲になっていて、ちょっといやな予感がするぞ・・・。
さて、いよいよ開始。団員が入場して着席するのを見て、心中躍り上がって喜んだ私。・・・柳琴が、最前列だ!!!
いつも大量の琵琶にスミに追いやられ、音はすれど影に隠れて見えない柳琴くん。それがなんと、琵琶どころか揚琴まで抜いて、指揮のまん前にいるではありませんか。
ああ嬉しや、はっきりしっかり柳琴のチェックが出来る!と思ったのも束の間、指揮者が台に立った途端、お目当ての崔軍淼はすっぽりと隠れてしまい、かろうじて彭氏の脚の間から時折ちらちらと見えるのみ。まあでも、もう一人の若い柳琴奏者の方はばっちり見えるのでよしとするか。
一曲目の「春節序曲」。うーん、冒頭の気迫はさすが! 気負いが感じられますねえ。おそらく広播楽団では何百回と演奏して、目をつむっても弾けるであろうレパートリーのはず・・・なんだけどよく聴いていると・・・細かいところバラバラ。一曲目なので緊張しているんだろな、きっと。
・・・と、温かい目で最初は見守っていたのですが、どの曲だったか、琵琶と二胡が合わせてお互いソロで入るところも思い切りタイミングはずしていたし、西洋オケならまずこんな失敗はしないだろうという、民族楽器の構造上の問題以前のポカミスが耳につきます。
それでも第一部はお初の曲も聴けて、まあ以前の上海民族楽団(←新体制になってからは随分良くなりましたよ!!)に比べればハラハラせず楽しく聴くことが出来ました(・・・「ラストエンペラー」以外は)。でも第二部に関しては、悪くないのも多いけれど、なまじっか知っている西洋曲ばかりなので、どうしても点を辛くつけざるを得ません。
中国民族楽器は改革の歴史も浅く、音程も不安定だし音量も少なく、その他技術的な問題もあり、独奏はともかく合奏においては西洋楽器に劣るのは仕方の無いことです。でも、だからこそ、楽器の編成を工夫するとか、選曲の際にもっと配慮が必要ではないでしょうか。
特に西洋オケの楽曲を演奏する場合、パートの割り振りの際、管楽器や擦弦楽器はそのまま似たような音の高さの楽器に移行し、では民楽オケの特色である弾撥楽器はど
するかというと、管楽器や擦弦楽器に割り振りしきれなかった残りのパートをそのまま当てている・・なんてことも珍しくありません。
弾撥類は点の楽器ですし個性もきついですから、各楽器に西洋楽器のように単純に和音を割り振っても、美しいハーモニーになりにくいように思います。ですので他の線の楽器につなぎの役目を担ってもらうとか、点は点同士大きな塊りにして独自の厚みを持たせてやるとか、トレモロにして線につないでやるとか。またリュート系の琵琶や阮、柳琴等は四弦あるのですから、単弦で使うよりも和弦で使えば音量が四倍になり厚みも増すので、逆に打楽器のような役割を持たせるとか。
でも実際は、それぞれの曲に本来あるべき効果やハーモニーなどが考慮されず、バランスの悪いまま。編曲者も指揮者も、これでは具合が悪いなと思ったら途中であっても編成や楽譜に変更を加えるべきではないでしょうか?特に指揮者は、曲の持つ魅力と、同時に演奏者の持つ能力を最大限に引き出してやるのが役目ではないでしょうか。
そういう意味では、香港中楽団の独自の視点での試みは成功していると言えると思います。まず楽器の改革から行い、個性を抑えることで、まろやかな、西洋オケのような響きを追求していますね。ちょうど彼らの、男女の区別なく紺一色の長袍のユニフォームから見て取れるように、楽団全体が一つにまとまっていて、聴きやすい演奏には定評があります。楽譜も色々工夫しているのかな。とても知りたいです。
ただ、香港中楽団は個性を抑えすぎて、個人的にちょっと物足りない感じもするので、他の楽団にはもう少し各楽器の良いところも発揮して欲しいところ。なかなか難しい課題だと思いますが、民楽の発展の為にもっともっと色んな試行を重ねてもらいたいと思います。
楽団員も世代交代が激しく、どこの楽団もどんどん若返りが進んでいます。熟練の味わいも捨てがたいけれど、若手は技術的には昔の世代よりちゃんとしているので、少なくとも正確さにおいては改善されていくことでしょう。十年後の民楽オケがどうなっているか、とても楽しみです。
ところが後日、ゆっくりパンフを読んで・・・あれれ。楽器の解説コーナーで、柳琴の読みがなが「ようきん」とあったのは、まあお愛想で許してあげるとして、阮の解説、なんだこれは!!!
「右手の指使いに弾、挑、・・などがあるが、左手は弦を押さえるだけで、他の技法ない。」・・・ちょっと何コレ!!何をふざけた解説書いてんねん!!
阮だって打、帯、滑、推、拉、吟、揉、[手へんに數]等、琵琶にある奏法はひととおり全部あるんだ(一応絞弦だってあるんだよ)!!
ばかにするなぁぁ!!
ちなみに琵琶の解説欄には、本来右手の奏法であるものが左手の奏法の中にあったりして、この欄を執筆した担当者のいいかげんさが知れるというもの。二胡の解説でも「千斤と呼ばれる馬の尻毛を張った弓が・・」んん!?
こんなデタラメをこんな公式パンフで堂々ともっともらしく書くと、皆信じちゃうでしょ!!
パンフレットの編集者はもっと責任を持って欲しいものです。ったくもう 。
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