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モモの音楽日記上海音楽学院


 さすらいの上音理髪室 06.12.28

 行ってみようか学校の理髪室

  留学して間もない頃の話。同学が寮に戻るなり突然洗面所で髪を洗い始めるので何事かと思いきや、「いま髪切りに行った」とのこと。・・・えっ? 中国って髪を切った後、洗髪してくれないもんなの? 「それ、どこの散髪屋さん?」「学校の中だよ」・・・・この狭いキャンバスの中には散髪屋まであるのか・・・。

 当時は言葉もあまりできず、そんな私がカットに行ったところでどんな風にされるか想像するのも怖ろしい。だもので、中国ではずっと髪を切らずに、帰国時にたまに美容院に行くぐらい。お陰で留学前はショートだったのが随分伸びてしまいました。

 わがルームメイト、オドノちゃんはオシャレさん。しょっちゅう「パーマかけたい」だの「あんな色に染めたい」だの言ってます。「ねえオドノ、いつもどこの美容院に行ってるの?」「すぐそこよ、寮のウラ」それってつまり・・・・例のところ?

 学校の中のって"理髪室"、いわゆる"散髪屋さん"みたいなもんじゃないの? どっちかっていうと男性御用達のイメージがあるんだけど。「ううん、学校の老師たちもよく来ているよ。安いし、便利だし」ふんふん。カラーリングなんかはいくら位するのかなぁ。「不安なら、自分でカラーリング剤を買って持参すればいいのよ。私はシャンプーの時もそうしているし」とオドノ。


  古びた建物の一角にある上音理髪室

 意外と気持ちよかった

 ふむ。一度偵察に行ってみるか。留学生寮の裏、中国人学生寮辺りの壁に直接ペンキでなぐり書きされた表示(←この辺が日本人には理解できない感覚なんだよね〜)をたどっていくと、あ、あった!!散髪屋さんのぐるぐる(何て呼ぶんだろ?)が回ってる!

 まずは値段交渉。シャンプーとカット、カラーリング後再度シャンプーしてドライ。「まとめて60元ってとこでどう?」もともとシャンプーは10元、カットは5元。じゃあカラーは35元くらいかな。シャンプーのほうがカットより高いってのが、なんだか不思議・・・。だから昔同学はカットだけして寮で洗髪してたのか。何だか外国人だから少し上乗せされてる気もするけど・・ま、いいか。んじゃ、それでやってもらい
ましょう。

 水でシャンプーされたり、肩が毛だらけになってたりしたらどうしよう、なんてドキドキしていましたが、案外てきぱきとやってくれて、カラーリングなんて逆に日本の安い美容院より丁寧かも。カットに関しては、私の場合前と後ろを切りそろえる程度なので特に問題ないし。

 時はさわやかな初夏の昼下がり、ツタが絡まる校舎の片隅で、バックミュージック代わりにゆったりと聴こえてくるホルンの音色、途中からはお店貸し切り状態で、何だかとっても贅沢で気持ちいいな〜。

 シャンプー台の心地が良くないとか、まあ小さな問題はあれど、カラー込みで60元(約900円)だったら、近いし安いしでまあまあ納得。普通の美容院だと、シャンプーカットだけで100元200元はするもんね。よし、次からはここにしよう!!

  ご夫婦でやっておられるようです
 てなわけで、留学中はずっとここに通っておりました。さすがに若い子達はこんな所じゃなくてもっとお洒落なお店に行ってるみたいですが、年配の老師なんかはセットだけしに来られたり、若い子もシャンプーだけしに来たり。というのも、古い家だとお風呂がない所もまだまだ多いので、洗髪だけでも散髪屋さんに来るわけです。

 しかし学校の大改修が始まり、留学生寮や理髪室のある一帯も取り壊されることになりました。しばらくは門のそばで開店していたのですが、今度はその辺りも工事が始まり、最後は食堂の裏でほそぼそと営業していました。行く度に場所が変わってて、探すのが大変・・・。

 「移転のたびに排水とか設備の出費もばかにならないでしょう。学校の都合なんだから、移転費用なんかは学校が補助してくれないの?」と聞くと、「まさか!全額自分持ちよ。文句があったらいつでも出てけって感じだから」大変なんですねえ。それってちょっと可哀想だなあ。中国にはそういった権利の保証みたいなのが存在しないのですね・・。

 まだまだ続く学校の大工事、「ここもいつまで居られるかわからんなー」とつぶやくご主人。それでもちゃっかりとどこかに場所を借りて営業しているんだろうな。ほんとに中国人はたくましい! また上海に行ったら訪ねてみようっと。

 帰国当日の朝 06.9.15

 帰国から一ヶ月半、まだまだぽや〜っとしてて、早寝早起きならぬ遅寝遅起きの毎日です。真面目で有名だったあの上海のモモはどこへやら・・・週二回のゴミの日も収集時間に間に合わず、収集車の「赤とんぼ」のメロディで目が覚め(だって8時ちょっとに来るんだよ)、溜息をついてます。上海では24時間、いつでもどこでも(そう、よくマンションの上階から降ってきてたもんね)ゴミを捨ててOKだったのになあ。・・・これじゃぁダメ人間まっしぐらではないの。

 さて。上海回顧録、とりあえずは一番近い過去、帰国当日の朝から。

 4年の留学期間を終え、7月いっぱいまでのビザの期限のぎりぎりまで上海に居残り、そしてとうとう帰国の日。前日までにほとんどの荷物を郵送し、残りの荷物をトランクに詰めるだけ・・・のはずだったのに、山ほどの楽器を含む荷物があまりに多く、結局全部支度を終えた時には窓の外から鳥の声が・・。でも帰国は船なのでゆっくり寝られるでしょきっと。

 部屋もちゃんと掃除して・・と。私より前に完全帰国した同学の面々、人によってはゴミだの色んなものを置き去りにして、ものすごく汚い状態で出て行った(中にはゴキちゃん大家族まで置き土産にしていった同学も・・)人もいて、ああはなりたくないなあ、と思っておりました。しかも部屋を汚しまくって出て行った同学に限って「ワタシの国は中国と違ってとても礼儀正しい国です」なんて常日頃口にしていたのが思い出され、礼儀とは何ぞや?と首をかしげてしまいます。

 私とて日本人のはしくれ、皆から「なんだ、日本人は礼儀正しいっていうけど、ヒドいもんだ」と言われるより、「やっぱり日本人はきっちりしているなあ」って思ってもらいたいじゃないですか! そう、大袈裟かもしれないけれど、外国では個人すなわち国の代表。だから言動に気をつけないとね。

 もそもそと朝ご飯を食べていたら、なんと呉強老師からショートメッセージが!! 内容は、帰国に向けての暖かい励ましのお言葉でした。う、嬉しいなあ。最後の最後はちゃんとキメてくれましたね、老師。しかもまだ朝の8時半! 朝が弱い老師、こんな早い時間にどーしたっての!? あ、そーか、今日は考級試験がある日だ。審査のためにご出勤だから早起きされたのですね。

 鑑真号の出航時間が12時なので、10時すぎに寮を出発。もう夏休みでほとんどの同学が帰国しており、寮にはほとんど誰も居なかったのですが、残っている同学たちが荷物運びを手伝ってくれたので大助かり。寮にはエレベーターなど無いので、4階から下まで荷物を降ろすだけでひと苦労なのです。事前に荷物を郵送したとはいえ、それでも大中スーツケースにそれぞれぎっちり詰まって合計65.5kg、そこに中阮2台と柳琴3台に二胡2本。もし飛行機で帰国していたら、重量超過料金だけでもう一度往復船旅ができてしまうとこでした・・・。

 日本人同学のG嬢が見送りをしてくれることになり、荷物でぎゅうぎゅうのタクシーに乗って共に波止場へ。受付カウンターでチェックイン、そしていよいよ出国の時が近づいてきました。見送りのG嬢とは双方うるうるで何度も手を振りながらお別れし、後ろ髪を引かれながらも慌しく荷物検査に出国審査をすませ、鑑真号に搭乗しました。

 4年間の留学、これが最後の瞬間、普通ならばきっとここで感慨にふける自分があるはずなのに、不思議と何も特別なものを感じられないのです。何度も上海と日本を往復して、どちらが自分のいるべき場所なのかわからなくなっているのもあり、単にトシをとって情緒がマヒしてしまったせいもあるかもしれませんが、何だか全然お別れの感じがしないのです。こんな気持ちで帰国しちゃっていいのかな・・。

 ゆっくりと進み始める船。だんだんと小さくなっていく上海の象徴、東方明珠塔をずっと目で追いつつ、「また、きっと来るから。」そう確信しながら、とりあえずは一旦心の中でピリオドをちょん、と打った瞬間でした。


  寮の引越し 06.2.3
 ――申し訳ありません。本文にもあるとおり忙しかったので遅まきながら日記は送ることができたのですが、なんとまたパソコンの調子が悪くなり写真を送ることができなくなりました。ということで今回は写真なしです。くやしいこの胸中お察しください。  モモより――

 悪戦苦闘の半年でした


  新年好! 皆様お久しぶりです。このところずっと忙しくて、8月以来日記もすっかり滞っております。教えてくれていた同学が卒業したため長い間休んでいた古箏も再開し、呉強老師もやっと時間を割いて中阮のレッスンを再開して下さったため、今は柳琴・中阮・二胡・古箏の四重苦(?)状態。留学最終年ということで、老師達もとても気合いを入れてレッスンして下さっていて、ばんばん宿題を出されるし、一度すべての楽器で同時に新曲を渡された時には死ぬかと思いました・・・。ま、充実していると言えば充実した日々を過ごしております。

 今やっと冬休みに入りホッとしたのも束の間、呉強老師からは「アンタは日本に帰るとダメになるから、二週間以上の帰国は許しません!」と言い渡される始末。・・・はい、仰せの通りでございます・・・。だもので、中国の新年もこれが最後だし、春節を中国で過ごしたあと(ちなみに春節は1/29、もう過ぎております・・)帰国、2/27から始まる新学期の前に戻って来ようかと思っています。

 そんなわけで、本来ならば8月のウイグル旅行記、新学年からの授業の様子や上音理髪室、そして先日広州に寧勇老師を訪ねに行った話、他にもご紹介したいネタは山ほどあるのに、なかなか日記を書く時間がなく、申し訳ありません。とりあえず今回は、9月の寮の引越の話から。

 中国式突然の引越通達

 寮の引越の話は、私が上海に来たときからずっと噂されていて、やっと今年になって本決まりになりました。夏休み前に、学校側から突然「夏休み中に引越するから、帰国前に荷物をまとめるように」との通達があって、同学達は帰国前で時間がないってのに大わらわで荷造りです。学校側の計画では、上音にほど近い、以前研究生の宿舎だった所を改装し、我々留学生の宿舎とし、夏休み中に改装を終えて同学達の荷物もみな運び入れ、すべてを完了して新学期を迎える・・・という予定でした。

 私とオドノは夏休み中早々に上海に戻る予定でいましたから、「ま、どーせ中国では計画通りに進むはずがないし、必要に迫られてから荷造りすりゃいいでしょ」と悠長にかまえ、帰国前に何ひとつ準備しませんでした。そして予想はもちろん大当たり。

 8月27日から新学期が始まるのにあわせ、同学達が次々と戻ってきました。そして引越し準備が何一つ進んでいない事を知って怒り爆発!! ま〜ね、生活道具すべて箱の中に突っ込んでしまって何がどこにあるかわけわからん状態、どうしてくれよう、ってなものでありましょう。

 同学達の怒りを知ってか知らずか、寮の改装は遅々として進まぬ様子。・・・やっぱりというか、計画だけが先行して実際はちっとも予定通りじゃないんだよね中国のやることは(笑)そして毎度お馴染み、「突然」改装が完了し、「突然」引越しの通達が。いっつも急なんだから〜まったく。

 新寮の部屋は広いんですが、シャワー室が・・・

 新しい寮は、上音から数軒離れた、某スーパーの上階。この建物、1階と2階がスーパーで、3〜5階が我々の宿舎。3階は男同学、4〜5階が女同学のフロア。以前は3階だったのでさらに階があがるのは年寄りには辛いわ〜。ま、4階なので5階でないだけマシってものか・・。当然ながらエレベーターなんてものは存在いたしません。

 部屋割りについても、学校側が適当(?)に決めて不公平があったので、落ち着くまで相当すったもんだありました。いろいろあって同学同士の関係が悪化したりとか・・。また、元が三角形の土地なので、部屋によって形や大小の差が大きく、変な形の部屋が当たった可哀想な同学とか・・。ちなみに私とオドノの部屋はトイレの横(泣)。でも他の同学より条件的にはまだマシなので文句もいえません。

 なんのかんのいっても新しい部屋はきれいだし、以前の寮にくらべ1.5倍くらい広いので、特に楽器が多くて置き場所に困っている私には有難い。オドノとあーだこーだと部屋のレイアウトを決めるのもまた楽しいもの。しばらくは電話やテレビがつながらない等、その他もろもろ不便な事もありましたが、慣れれば何てことも・・。
 でもしばらく慣れなかったのがお風呂。ま、お風呂というよりシャワーなのですが、以前は1フロアに2室あったので、順番待ちもそう長くなかったのですが、今度のシャワー室は1室のみ。いや、正確にいうと1室の中にシャワーの蛇口が3つあって、カーテンで仕切られています。・・・しかし3つあったって、誰が3人仲良く一緒に入室するかっての。このへんが中国人の発想なんだな〜。というか、習慣の差ですね。・・・と思っていたら、入浴中にノックの音がして、「ドア開けて〜私入りたいんだけど」・・・うそぉ。やはり国によって色々習慣が違うんだなあ。

 壁の薄いのが縁で中阮の同学と交流が深まる

 あと困るのは、以前は研究生達の大部屋だったのを無理矢理小部屋に改造したため、隣との壁板が薄く、隣の物音がまる聞こえなのです。時には会話の一言一言まではっきり聞こえるので、内緒話がしにくい・・。特にうちの隣室の同学がまたでかい声で、夜も遅くまで喋っているので、デリケートなオドノは眠れず、時々壁を叩いて抗議しています。

 当然練習していると音はまる聞こえ。私は午前中は琴房に行くけど、午後からは部屋で練習するからごめんね、と隣に了解をとっています。まあ隣の二人も民族楽器系なので、その辺りはお互い様。ただ、やっぱり迷惑は迷惑だし、ご近所への手前もあるし(中国人は夜10時に寝る人も多いので)、10:30くらい以降は音を出さないようにしようよ、と呼びかけて互いに自粛しています。

 隣室の二人のうち、シンガポール人のH同学は中阮の本科生で、私と同じく呉強老師の学生です。以前は住んでいるフロアが別だったのであまり交流がなかったのですが、隣同士になってからかなり距離が縮まりました。彼女は練習しないので有名(?)なのですが、私が練習していると隣からも中阮の音が聞こえてきます。彼女いわく、「モモが練習してるから何だか私もその気になるわ〜」ふむ、いいことだ。といっても彼女が始めるのはたいてい夜9:30以降なので、たいして練習しとらんようですが・
・。

 でも呉強老師にちゃあんと宣伝してくれているらしく、以来老師から練習時間の事で怒られる事はなくなりました。その代わり、内緒にしておいて欲しい事まで暴露されるので、レッスンの時に「アンタ先週蘇州に行ったでしょ」などと突っ込まれ、「なんで知ってるんや〜」とドキドキするのであります。

 同室オドノの食事のパターン

 近いとはいえ学校の敷地内から離れ、忘れ物をしても取りに戻るのが面倒な距離、以前に比べ授業にいくのさえおっくうになってきた私達。毎日、「・・・何食べよーかな〜」とつぶやいてます。前はしょっちゅう利用していた学校の食堂も、ついでがないと行く気になれない。私は午前中練習に出かけたついでに、たいてい学食で昼食をとっていますが、オドノは昼までずっと寝ているわ、4年生なので授業も少ないわですっかり部屋にこもりっきり。食事も最近は出前をとることが多くなりました。

 で、電話をかけて注文するのですが、もちろん日本のようにサービスが行き届いている店なんてありません。ぞんざいな口調で応対されるのが普通なのですが、オドノも負けておりません。同じくらい高飛車な口調でやり返しております。

 「何?米飯がないから麺にしろ?いいけどおたくら最近すごい量が少ないのよね、分量たくさん、野菜もたくさんね!」(←ま、この辺までは私と大して違いはない・・)

 「あん?今人手が出払っててすぐは無理?何言ってんのよ、アタシは病気なのよ!店に行けないから出前頼んでるんじゃないのよ!今すぐ持って来て!!」(←うそつけ〜単に起きぬけなだけじゃないの)

 ・・・そして待つこと数十分、来ない。キレたオドノ、再度電話。「来ないからキャンセルするわ!!」そして外に食事にでてしまいました。最初からそーすりゃいいのに(笑)それからさらに数十分後、出前のにーちゃんが・・・来た。あーやっぱし。でも断る役は私なんだよなあ・・・。

 今はオドノも帰国中で、私一人で残っておりますが、自由と言えば自由、でもやっぱり彼女がいないと少し寂しいんですよね〜。彼女も私も今年の夏に同時に卒業、それまではよろしくね、オドノちゃん。

 いよいよ復活 05.3.7
 ようやく戻った上海

 
復学早々出鼻をくじかれる

 三月にはいり、まだまだ寒いとはいえ、何とはなしに日差しが暖かく感じられるこの頃。今日は一日ずっと突風が吹き荒れていましたが、あれって上海の春一番ってやつだったのかなあ。

 私モモも、一年の休学を終え、ようやく上海に戻って参りました。これからは再び上海より皆様にお便りを発信したいと思います。・・・が実は上海に来る前にパソコンのバージョンをアップしたところ、恐ろしいほど動きが遅くなってしまいまして、ホームページもまともに見られないし、何よりメールの送受信にものすごく時間かかり、お便りを頂戴してもなかなかお返事を書けない状態であります・・お許しを。

 休学中も、日本で色々な方々にお世話になりました。レクチャーを企画していただいたり、演奏のお仕事をいただいたり、学生を教えたりと、中国でレッスンを受ける以上に貴重な経験を沢山させていただきました。実際自分の実力の至らなさを痛感しましたし、これからもこの経験を念頭に置いた上で、更に努力を続けて行きたいと思っています。

 さてこの一年の間、すっかり頭も身体も日本仕様になってしまい、中国世界の厳しさを忘れかけておりました。そして秋口から早々と復学手続きを開始しようとして、早速出鼻をくじかれたのであります・・・。

 学生名簿に名前がない!

 私は現在、奨学金をもらっている身分なのですが、何をするのにも北京にある管理委員会と学校の両方の同意を得なければなりません。まず委員会に復学の旨を伝えると、「学校の同意があればOKです」と言われたので学校に連絡しました。すると学校側は「委員会から連絡が無いとうちも動けないので」とのこと。・・私にどーしろと? 休学前に学校の同意はもらってあるのに。いつもの押し問答とたらい回しで、これでは問題は永遠に解決しないではありませんか。

 幸い、上音の漢語班に在籍している知人が、事務所と色々連絡を取ってくださったのと、うちの先生からも圧力をかけてもらったお陰で、前期の終了する直前になってやっと復学の同意をもらうことができました。かなり前からずっと連絡を取っているのに、中国では物事が決まるのはいつもぎりぎり。段取りって意識がないんだよなあ。おまけに「手続きが間に合わないから、とりあえず旅行ビザで来い」ってんだもん。間に合わないのはアンタらのせいだっちゅーに。

 いくばくかの不安を胸に、21日から授業が始まるのに合わせ、2/19に上海へ出発。といってもどうせ私は新入生と同じ扱いだろうので、きっと授業が始まるのは一週間遅れのはず。少し早めに来て昔と同じ部屋をキープするつもりだったのですが、なんと! 初日からいきなりトラブル発生。宿舎に行って名前を告げると、留学生名簿に私の名前が・・無い。当日飛行機が遅れ、宿舎に到着したのは夜で、事務所の先生はすでにいないし、どどどーしたものか。

 幸い、なじみの宿舎の先生がいらしたので融通を利かせてもらい、部屋が決まるまで、まだ到着していない新入生の部屋に入れてもらう事になりました。「わしに連絡しておいてくれたら前もって手配しとくのに」・・おいおい、普通そんなのは学校の部署同士でちゃんとするべきじゃないのかい? おそらく、私の復学がぎりぎりに決まったので、事務所の先生が名簿に入れるのを忘れたのでしょう。

 その後も揉めに揉め、なかなか希望の部屋に入れてもらえません。こういう場合、基本的に当人同士の同意があれば、部屋を変わるのは自由なのです。日本から以前のルームメイト、モンゴルの同学に電話した時にも、「丁度今のルームメイトが部屋を出る事になってるの。私たち、また一緒になれるよ!」と話をしていたし、何も問題ないはずなのに・・。本人たちはとっくにその気で既に部屋の配置換えまで始めているにもかかわらず、その部屋に入る許可がおりるにはもう少し時間がかかりましたが、最後には無事元のさやにおさまり、以前と変わらぬ暮らしが始まったのでした。
 


  以前と変わらぬ古巣に戻れてひと安心

 呉強老師、Y老師のやさしさ

 各部署へのスタンプラリーや教科選択などの手続きもいちからやりなおし。でもすでに上海3年目の余裕のなせるわざ、たとえ留学生名簿に名前が載ってなくても顔パス(?)で切り抜け、学びたい授業は直接担任の先生と交渉し、何喰わぬ顔で教室に紛れ込んで授業を受けております。

 呉強老師とは北京の学会ですでにお会いしていましたが、本来なら2週目からのはずの私のレッスン、忙しい中を時間を割いて、1週目の終わりにわざわざ練習室まで来てレッスンしてくださいました。何だか優しくなったみたいで気持ち悪いぞー。まあでも口調は優しいけど、レッスン中の要求は相変わらず高いのであります。近いうちに落ちるであろうカミナリに備え、また気合いを入れて頑張らねば。

 Y老師も変わらずお優しい。初めて連絡したとき、「君が来るまでずっと雨や雪ばっかりだったんだが、太陽をつれて来てくれたね」なんて言ってくださる。リップサービスうまくなりましたねぇ老師。その後レッスンの時間を決めて電話を切った途端、すぐまたかかってきて、「1年前と地下鉄やバス停の場所が変わってるから」と色々心配して教えてくださいました。そして初レッスンで弾いてくださった老師の二胡、久々に聴くとやっぱり味があっていいなあ。

 1年過ぎると環境も大いに変化

 Y老師のお住まいのある場所、すなわち私が以前住んでいた地区なので、レッスンの日はとても懐かしくて辺りをぐるぐる廻ってしまいました。道路向かいは更地だったのに、今や高級マンションが建ち並び、映画館のあるショッピングセンターまでできている! 私が住んでいた部屋は、小学校の先生が住んでおられるそうで、家賃も以前の850元から1000元に値上がりしたのだそうな。

 この1年の間、少しずつですが変化が起こっています。寮には知らない同学もいっぱいで、「新しく来たの?」なんて言われると、何だかちょっと寂しいような。でも漢語班だけでなく音楽班の同学達もとっても年齢層が若いので、どのみち私のような老人(はい、平均年齢上げまくってます!)とは生きる世界が違うのであります・・。

 ちょっと嬉しい事。北京のテレビ局、中央電視台に新しく"CCTV音楽"という音楽専門のチャンネルが増えて、かなりの確率でまとまった時間、民楽を放映してくれるのです。以前は音楽というとほとんどクラシックか流行音楽ばかりでしたが、お陰で頻繁に有名な演奏家の舞台が観られるようになりました。今日も宋飛と姜克美と于紅梅という豪華な顔ぶれで一緒に"賽馬"を弾いている舞台をみましたよ。

 さあ、これからだというのが実感

 ちょっと残念な事は、前にあったお気に入りのパン屋さんなどのお店が数軒つぶれてしまったこと。まあパン屋さんについては、Y老師のお宅の近くに新しくできたパン屋が結構イケてるので我慢するとして、すごい安い和食ランチの店もなくなってしまったので大ショック! それでなくても毎日食事には頭を悩ませているのに・・・。学食のパサパサ御飯も毎日続くと哀しくなってくるしなあ・・。

 そしてとっても悲しい事。私の愛機、チャリンコくんが無くなってしまった事。半年くらい前に、元漢語班の知人が上海に戻った際、わざわざ確認してもらい、ボロボロだけど生存していたよ、と報告を受けたところだというのに・・・。あれがないとどこに行くのにも不便で仕方ありません(といいつつ校門のおばちゃんに自転車借りて荷物を取りに行ったりしてましたが・・・厚かましいなぁ)。新しいのを買うべきかどうか迷っています。ああチャリンコくん、あなたはどこに連れ去られてしまったの
・・。

 トラブル発生で、さっそく最初の一歩でつまずきかけましたが、終わりよければすべてよし。とりあえず今のところ、おさまるべきところにおさまっているし、復学できた事だけでも良しとせねば。・・・・って日本なら何の問題も無い事が中国では理不尽な事だらけなので、無理矢理そう思い込もうとしている事自体、すでに中国世界にどっぷり浸かっているのだと実感しております。これからもこういう事が続くんだろうな。はぁー・・。でも負けないぞ!! 。

 【新学期スタート】 03.11.7
 新学期もスタートし、学校に戻っての新しい1年の幕開け・・・なんて大袈裟な(笑)。でも私にとっては上海での最後の1年になるので、決意も新たに再スタート、という心境なのです。マレーシアの同学、S君が最近デジカメを購入しまして、色々写真を写してくれました。最近は本当に便利になったもんですね〜。私も買おうかな・・・。
 
 ルームメイトはモンゴル人

 さて今年、久しぶりに戻った留学生寮では、まだ学校に残っている同学達が暖かく迎えてくれました。寮の服務台のおばさん達や老師もそのままだし、新しい同学達がたくさん増えてはいるものの、古巣に戻った気分。こちらも寮の事はよくわかっているので、新しいシーツをお願いするだけでも一苦労だった2年前に比べ、結構厚かましく何でもアタックできるようになりました。

 例えば、昔は部屋ごとにあったゴミ箱が、今は外の廊下にまばらに置いてあるだけ。寮の老師に「前は部屋ごとにあったのに、何でなくなったんですか」と文句を言ったら、「よし、では君の為に1つ探して来てあげよう」と、後でこっそりゴミ箱を渡してくれました。また、テレビのコードが短くて部屋の中央に置けない、とまたまた文句を言ったら、接続口の違う2種類のコードの口を改造して、長いコードを作ってくれました。自分で買っている同学もいたもんね。ふふ。やっぱり中国では言ったもん勝ちなのです。
 日本人がたくさんいた2年前と違い、寮に住む日本人はどうやら今年は私ひとりだけのようで、二胡を学ぶ2年生のモンゴル人が今度の新しい私のルームメイトとなりました。

 彼女はモンゴルの音楽大学を卒業してから一旦南京に語学留学した後、ここ上音に本科生として入学しており、そのせいか寮での共同生活も慣れている様子で、なかなかに気を使って接してくれます。ですから私も色んなことを相談しやすく、部屋の掃除なんかも一週間交替で当番制にしたりと、お互いに意見を出し合って決定することにしています。

 実をいうと今度の部屋はまたまた例の作曲家、Jさんの反対側隣り(詳しくは旧日記第20回を御覧下さい)。あちゃあ、また部屋で楽器の練習ができないではありませんか。ルームメイトいわく、「隣とはねぇ、私もケンカしたよ。お互い譲らなくて、すごく険悪な関係だったの」。ううむ、私の時よりハデにやってるなあ。でもしばらくして得た情報によると、Jさんは近くに家を購入したらしく、寮の部屋に戻ることはほとんどないそう。やったー!

 優しい気持ちの持ち主

 楽器の練習についてはルームメイトと相談し、ふたりの授業の時間帯を書き出して行動がわかるようにし、相手が部屋にいない時に自由に練習できるよう、取り決めました。また外出する時は「何時頃まで部屋にいないから、その間練習すればいいよ」と互いに声を掛け合うようにしています。

 先日、こんなことがありました。彼女が引いていた風邪が私にうつったらしく、私も引っ越し等の疲れからかなかなか回復せず、何日もずっと微熱が出て咳き込み、寝込んでいました。そんな時、彼女が夜に突然「今から牛肉スープを作ってあげるから、それを食べて布団かぶってすぐ寝るのよ。そうすればすごく汗が出て、いっぺんに風邪が治るから」と言い出し、わざわざ私の為にスープを作ってくれたのです。まあ、一夜にして回復するなんて奇跡は起こらなかったけど(笑)、彼女の気持ちがとっても嬉しく感じました。

 去年の彼女のルームメイトがいい影響を与えていたようで、彼女は音楽に対してもとっても真面目で、私の学習についてもいろいろ忠告をくれます。例えば、「去年これこれの授業がとてもよかったから、あなたも受けるべきだ」と言われ、私は進修生なので本科生の授業は受けられないはずだと説明すると、「私のルームメイトも進修生だったけど国語とかの授業を受けていたよ。きっと交渉すれば大丈夫」と教えてくれました。

 本科でも多くの授業に出席

 ということで、本来ならば進修生は選択科目のみ、3つ(留学生は5つかもしれないが不明・・)までしか受けられないのですが、私は直接先生と話をつけて本科生の必修科目も受けられることになりました。進修生は特に専攻以外の授業は受けても受けなくてもよいのですが、今年は最後の1年ということで、自分自身に対して今までよりも要求を高めに設定することにしたのです。

 選択科目では2つ、「楽隊指揮法」「古琴音楽文化」という科目をとるつもりだったのが、人数が少なくて「古琴」の方は今年は開講しないことに。で、「楽隊指揮法」。先輩に聞いてみると、講議だけでなく、実際ひとりひとり振りの練習なんかもするようで、緊張しやすい私にはドキドキものなのですが、どーせ私しゃ外国人さ、わからなくて当然なんだから、と開き直ることにしました。

 本科生の必修科目では「民族打楽器合奏」と「楽理」の授業に聴講参加。指揮もですが、聞く一方でなく実践的な講議を故意に選ぶようにしました。打楽器に関しては、ずっとやってみたかったのですよ。合奏だから、失敗すれば他の同学たちに迷惑かけるかもしれないけど、まあ今年は何にでも挑戦するぞ! と鼻息荒く・・・でも他の同学達とはかなり年齢が離れているので、やっぱ何となく恥ずかしいなあ。え〜ん。

 去年1年間は、専攻の楽器のレッスンのみだったので、こういう一般の授業は久しぶりなのですが、驚いたのは授業中先生が話している内容がかなりの部分理解できるようになっていたこと。2年前はほんとに何を言ってるのかさっぱりわからなくて、全く授業内容についていけませんでした。もちろん今も完全に聞き取れるわけではありませんが、必死で聞けばなんとか授業にはついていけそうな感じです(今のところはね)。

 充実しそうな学生生活

 でも楽理の授業に関しては出てくる用語も日本語と名称が違うし、言語のニュアンス的にわからないところも多くて、毎回出される宿題では泣きながら先輩達に聞いています。しかしこの楽理を今やっておかないと、後期からの和声の授業にもついていけないし、そうなると和声が関係してくる作品分析も理解できない所がたくさん出てくるので・・。呉強老師もY老師も、「曲の処理の為には作品分析の授業は絶対に受けるべき」と2人とも口を揃えておっしゃるものですから。けどこれらの授業のために、練習時間がかなり減ってしまったのも事実。ああジレンマ・・。

 2年前は同学達は皆自分の事で精一杯だったのか、誰も教えてくれなかったし、誰も助けてくれませんでしたが(ま、私自身語学の問題がありましたからね)、今はこうやって好意的に助けてくれる同学がいる、そして自分自身でも沢山の事が理解でき行動できるようになっている。・・・まあ以前に比べ少しは成長したってことですかねぇ。お陰でこの1年間、ますます充実した学生生活が送れることが期待できそうです。


(02.9.9)
  
*校内演奏会の楽しみ
  
 学生生活で困った事も多々あれど、メリットも無いわけではありません。学校内では結構頻繁に演奏会や講座などが開かれており、たいていは無料なので気軽に聴きに行く事ができます。あ、もちろん外部の人も出入り自由ですよ。ただ、広告など突然前々日くらいに掲示されたりと、普段から気をつけてチェックしておかないと見逃す事も。

 演奏会は、ほとんどが西洋クラシック系。しかし困った事に、広告を見ても推定不能のことも多いのです。演奏者や曲目、作曲者ともども中国語で書いてあるのですから。英語も同時表記してくれぃっ。 

【舞台度胸も満点の学期末試験】

 学期も終わりに近づくと、あちこちで試験が始まります。楽器の実技試験は、我々も自由に見学できるのが日本と違うところ。学生とはいえ、すごく高いレベルの人もいて、かと思うと、ん、何だこりゃ?ホントに本科生?なんてのもあったりと、良きにつけ悪しきにつけ、なかなか勉強になることも多いです。

 先日も弾撥楽器専攻の卒業試験を聴きに行きました。朝一番から開始で、やや厳粛な雰囲気であったものの、1人目の演奏が始まっているのにもかかわらず(というより気付かずに)、民楽系主任なんて大声で喋っているし、わが呉強老師に至っては、自分の担当の学生の演奏が終わった途端、朝御飯をかじりながら論文のチェックをしている始末。

 う、う〜ん・・。何というか、自由な校風ですこと、って感じですね。これ以前にも、古箏の研究生の卒業試験を聴きに行った時、担当の老師はケータイが鳴ったら応答しているし(切っといてよ〜)、その奥さんであり有名な演奏家でもあるS老師(高齢)なんて、ほとんどパジャマのような、キティちゃんのロングTシャツで試験場へふらりと登場! これには一同(特に日本人同学達)びっくり。い〜のかこんなで!?

 が、当の学生達は、まったく気にするそぶりも見せず、自分の世界に入って堂々と演奏しています。こうやって舞台度胸というのが育まれていくのでしょうね。音楽会でも、客席で子供が走りまわろうが携帯が高らかに鳴り響こうが一向に平気なのは、学生時代に既に会得しているからなのでしょうか?
 

楽器もそろって合奏だ

【呉強先生も試験で緊張?】 

 さてその呉強老師も、今年研究生を卒業されます。以前ご紹介したかと思いますが、老師は上海音楽学院卒業後、学校に残ってずっと教職に就いておられ、最近になって今度は指揮の勉強をする為に、研究生として復学されているのです。

 もちろん、そのかたわら学生も教えているので、毎日とても忙しい様子。特に論文が大変だったようで、研究生ともなると、数人の教授陣を前に答弁会なんてのもあるそうです。そのせいか5、6月は老師の御機嫌も悪かったような・・。

 指揮科の試験ってどんなのかな?と、いちど同学に尋ねた事があります。彼曰く、先生によるけどたいていはCDを流しながら指揮棒を振るのだそう。うーん、なかなか楽な試験ではないの。CDなら予想外のアクシデントなんて起こりませんものね。CDを前に大真面目で棒を振る姿も、ちょっと笑えますが。
 
 でも、さすがに研究生の卒業試験ともなると、ちゃんと実際の楽団を指揮しなくてはなりません。60人程度の学生が選ばれ、約一ヶ月の練習を経たのち本番。指揮者も大変だろうけど、学生の方も自分の試験が控えているのに、平行して合奏練習もしなくてはいけないので、さぞかし苦しかろうと思うのですが、もともと技術のある彼等にとっては、何てことはないのかもしれませんね。

 呉強老師の選んだ曲は、「月児高」と「シャディール伝奇」。前者は老師の論文テーマでもありますが、正直いって私も勉強不足で、どんな所に独自の解釈を反映されていたのか、あんまりわからんかったです。はい。後者は新彊の実在の歌手を題材にしたもので、私も日本で楽団に在籍していた時に少し練習した経験がありますが、テクニック的にけっこう難しい曲だった記憶があります。もちろん上音の学生達はラクラク弾いていましたが・・。

 リハの時、所々リズムが合わない部分があるなど、ちょっと心配でしたが、本番ともなるとさすが! すごい集中力でした。老師もだけど、学生達もほんとカッコよかった。普通、試験の時には拍手厳禁なのですが、この時は自然にあちこちから拍手が湧き出て、感動的な光景でありました。合奏ってやっぱいいもんですね。
 

(02.7.25)
  
*上海で1年が経ちました
  
 上海に来て速いものでもうすぐ1年が経とうとしています。1年といっても夏休み、冬休みの期間を除くと、実質9ヶ月くらいなものですから、あっという間。

 これまでにもいろんな問題に直面してきて、一喜一憂するたびに、少しづつ中国のやり方にもなれてきたかな、と思っていました。ところがここ最近立て続けに問題が押し寄せ、自分はちっともわかっていなかったのだということを感じました。

【琴房カードでイライラつのる】

 以前、琴房(練習室)のシステムについてはすでに紹介しました。学期が変わるとカードも新しくなり、前学期のカード及び残り期間は無効になります。カードの期間がなくなると、以降は1時間につき5元の使用料を払わなければなりません。1人1人のカードの持ち時間はあまり多くないため、ルームメイト不在時には部屋で練習していましたが、今学期初め隣人から苦情があり、部屋で練習するなと言われました。

 こちらも練習時間が足りない旨を告げると、彼(学生ではなく作曲家らしい。以降Jさんと記す)は「じゃあ琴房管理の主任にかけ合ってあげよう。一緒に来なさい」と私を連れ管理室へ。しばらく話し合った結果、Jさんから「主任が“没問題”といったから大丈夫だ」というので、じゃあいくらでも琴房を使って大丈夫なんですね?時間がなくなっても追加料金を払わなくてもいいんですね?と確認したら「大丈夫。そのことで問題が起きたら僕に連絡してくれ」と自信ありげに答えるので、「ほおー、やっぱり中国では言ったもん勝ちなんだなー」と思っていました。でも私はそのときまだ本当には理解していなかったのです。中国人が「没問題」もしくは「没関係」と言っても、それは決して確約ではないことを。

 その後、私は琴房の時間を気にせずに使えるようになったのが嬉しくて、1日7〜8時間琴房にいることもありました。当然カードの時間はどんどん減っていきます。が、先輩にも尋ねてみたところ、前年度は時間がなくなった場合、留学生事務所の先生に頼めばサイン一つで時間を追加してくれたとのことで、“私も管理主任が言っていたのはこういう意味だったのだろう”と思い、心配していませんでした。

 今学期、前期に比べ持ち時間は少し増え、最初に240時間が与えられ、第10週以降更に240時間が追加されて、全部で480時間もらえるという仕組み。それでも1日平均3時間半しかありませんでした。

 さて7週目に入ったあたりで、すでに残り時間が60時間足らずに減ってしまっていました。そろそろ前の確約を再確認しておかないとと思い、管理室の主任に聞いてみると「時間の追加?ああいいよ。1時間5元ね」と言われ、んなバカな!この間相談したじゃあないか、と力説しても全く耳をかそうとしません。

【何が規定じゃあ〜】

 あわててJさんに訴え、話をしに行ってもらいましたが、上手くいかなかった様子。そこでJさん経由で留学生事務所の先生と相談し、時間を追加してもらうように頼みましたが、結局は「今年から規定が変わった。以前の方法は通用しない」と言われるばかり。その後も直接管理室に行っていろんな提案をしてみましたが、、「学校の規定だから変えられない。時間を追加してほしければ規定どおり金を払え」の一点張り。

 規定規定って、いつ誰がどうやってどういう基準で決定して、どこに掲示してあるかもわからん不透明な規定なんて、規定と呼ばんのじゃあ!!・・と怒りに燃えながらも、言葉が不自由なものでそこまで言い返せなくて、余計ストレスがたまってしまったのでした。

 ここまで来るともうどうしようもないので、けちけち使いながら第10週まで何とか持たせつつ、時間を追加してもらった現在でも時間が気になってゆっくり練習できません。Jさんとは話し合いの結果、彼の外出時に目印をつけてもらうようにして、不在時部屋で練習しています。でもJさんもルームメイトも同時に不在の時ってなかなか無くって、やっぱり練習不足。

 先生からは「もっと練習しなさい」と言われ、いやでもできないんですと相談しても、「それは学校の規定だから仕方ない。たとえ院長に言ったって無理だ。別の方法を考えなさい」と言われてしまいました。どーしろってのよ。
 

レッスンのことを考えるだけでストレスがたまる

【個人レッスンも勝手になくなる】 

 この「規定」という言葉を中国人は黄門様の印籠のごとく、ことあるごとに打ち出します。

。例えば前回述べた本科生の試験の前後、同じように附属中学の試験もあり 、そのため個人レッスンが2回もなくなってしまいました。当然他の日に振り替えてもらえるものと思っていたら、そんなものはありません。

 これってすごく不公平でしょう?学生によって年間のレッスン回数に差があるなんて。と先生に訴えても「これは学校が決めたことだから。私たちだって土、日にかり出されても給料もらえないのよ」とにべもない。けれどそれとこれって論点がずれてません?だって先生は学校に所属しているんだから(給料をもらう立場だから)仕方ないかもしれないけれど、私たちは学校に学費を払ってんのよ、と言いたい。でも私なんてまだマシな方らしく、例えば有名な先生の学生だと、海外公演なんかで長い間個人レッスンなし、なんて場合も多いそうな。同じ学費払っているのにこれじゃあ納得いきませんよ、まったく。

 だからといって前述の琴房管理事務所も、11時ごろ行くとすでに閉まっていて「中午休息」の札がかかっていたりする。ちょっとあんたら、昼休みは11時半からと違うの!?規定規定と言うんだったら、自分達だって就業規定ぐらい守ったらどうなのよ!?

 そして今日も心の中でこぶしを握りしめながら、一日が過ぎていくのでした。いつか爆発してしまいそうで、こわい。
 

(02.7.12)
  
*受験の季節

【受験について】
  
  春といえば日本なら新入学の季節。そしてここ上海音楽学院では受験の季節なのであります。

 わが留学生寮でも本科生予備軍が数人。昨年も受験したけれど合格できず、今年再び受けなおす人も。前学期には結構遊び呆けていた人達も、4月直前になると急に目の色を変えて練習しています。今ごろ真剣にやり始めても間に合わないと思うんだけれど・・。

 正直言って、留学生のレベルは中国人学生に比べてあまり高くありません。今年の受験生も約1名を除いて、ん〜こんなので受かるのか!?という腕の持ち主がほとんど。でもまあ同じ留学生として一人でも多く合格してほしいところ。

 その後、試験日程発表から合格発表まではあっという間でした。1次、2次と結果が出るたびに中庭の掲示板に合格者の名前が張り出され、私も自分の事のようにどきどきしながら留学生の名前を探していました。高校や大学受験の時の事を思い出しますねー。いやなつかしい。

【まあ留学生枠もあるし】

 結果は・・。留学生楼の住人からは5人合格、2人不合格。受かった同学たちおめでとう!・・でもよく受かったなー、と言うのが本音です。あとで聞いた話によると、やはりというか、学科・楽器ごとの競争率も大きく関係していて、例えば古筝などは人気なので、数十人の中から1次合格十数人、最終通過4人。しかもこの後まだ高考(日本でいうセンター試験みたいなもの)で足切されて、なんと入学できるのはたったの2人!!うわーすごい。高考で落ちた人って、ものすごく可哀想ですね。やっぱり浪人っているのかな。

 かくもすさまじき受験競争・・。音楽の道はキビシイのだ・・。上音の学生って文化程度低い感じで、問題意識なんてもってるように見えない人が多い(失礼)彼らはこの過酷な試練を乗り越えて入学したのかと思うと、実はすごい人達だったんですねえ。

 が、しかし。留学生はかなり水準が甘くて、ちゃんと「留学生ワク」というのがあるらしい。先程の古筝にしても、しっかり別ワクで留学生が合格しているそうな。ま、そうでもなければ、あまりに差のありすぎる留学生は1人も合格できないってわけですか・・。その他、うわさの域を越えませんが、やはり裏でもいろんな事情があるようです。どこの国でも同じですね。

 何でもいいけど、試験が終わったとたん、またまた練習室に空室が目だつようになりました。受かったからってサボッてたら上達せんぞ!!

【音楽祭も花盛り】

 もう一つの春の行事。知っている人は知っている「上海の春音楽祭」。「上海の春」コンクールで入賞して有名になった演奏家も多いので、さぞかし音楽院では盛り上がるのだろうと思いきや同学に尋ねても反応はいまひとつ。ポスターも学内に貼ってはあるものの、演奏会の日程もはっきりしないし、いったいどこで調べればわかるの?状態。HPを見ると、日程らしき一覧はあって、演奏会のタイトルは書いてあるものの、誰が出演してどんな曲目を演奏するのか、具体的なことは全くわからず、こんなのじゃチケットも買えないよ。高いお金を払ってハズレだったらもったいないし。

 結局聴きに行ったのは学校関係の2公演のみ。まずは音楽院付属中学(中国で中学校というのは高校まで含まれます)の民族楽団。オケ合奏のほかに、重奏あり独奏ありの、バラエティに富んだ演奏会でした。

 小学4年生が「イ族舞曲」の琵琶独奏をしたりするんですよ〜、可愛いけどすごい。ちょっと笑えたのが琵琶9人による斉奏「覇王卸甲」。こんな曲、普通斉奏する?でも演奏だけでなく、動作までもが一糸乱れずで、練習の成果を感じさせるものでした。振り付け(?)の練習風景を想像すると、ますますおかしい(笑)。

 あと、フルオケ伴奏付きの柳琴の独奏なんかもあって(実は呉強老師の学生)、う、上手い〜。お子様軍団とはいえ、大人顔負けの水準でした。だけどこんなに上手な附中の学生達であっても、音楽学院に入学できるのはほんのわずか、学年全体のうち1人2人程度なのですよね。きびしい〜。

 で、その音楽学院の演奏家にも行ってきました。大劇院(といっても中劇場)なのでチケットがすごく高くて、最初行くつもりはなかったのですが、、ラッキーなことに第2専攻の学生から120元のチケットをもらってしまった(!)ので、ほくほくしながら向かいました。受付でも3元のパンフを買おうとしたら、担当の子が顔見知りだったのでタダでくれた・・うれしい。

【迫力があって良かった良かった】

 プログラムはオール合奏。擦弦楽器バージョン「二泉映月」以外は伝統曲(?)もなしという、私が思うに結構思いきった選曲でした(だって始めて聴く曲ばかりでしたもん)。以前も一度学生の楽団の演奏を聴く機会があったのですが、なかなかにヒサンな出来映えにがっくりだったため今日もどうかな〜、とあまり期待していませんでした。

 が今回は前回とぜんぜん迫力が違う!所々ん?という個所もあったものの、まとまり感があり、このところ不調の上海民族楽団より緊張感があってある分良かったかも(笑)。聞くところによると今回はかなり以前から練習していたとのことで、演奏会前4日間はほとんど丸1日中やっていたらしいです。お疲れさま。

 音楽祭はほかにも上海民族楽団や、もちろん交響楽団など、もろもろ演奏があったようで、あとから「あれもこれも良かった」と感想をききました。しかしなぜもっと宣伝活動しないんだろう。宣伝しないとお客も来ないんじゃあないの?やる気ないの?と言いたくなります。まあ中国の宣伝ってたいていいつもそうなんですけれど。演奏会も直前にならないと予定出ないし・・。日本と違って宣伝効果をまるで考えていないよね。上海市ももっと予算出してあげればいいのに。

(02.4.5)
  
*後期授業始まる

 今年は2月25日から新学期が始まりました。私自身はチケットが取れず結局28日に上海に戻ることとなり、当日空港に行ったらなんと!同室のEちゃんと偶然にも同じ便でありました。おかげで空港からのタクシー代が半額で済みましたよ、うっしっし♪

 すでに授業は始まっているはずなのですが、授業に出ても学生の姿はまばらで、半分いるかいないか。外地(上海以外から来ている人)の学生達がまだ戻ってきていないのか、学生達にやる気がなく教室に来ないのか(十分ありうる)。

 学校側にも問題があるようです。書法の時間教室に行くと、全く別の授業の学生が座っています。今日だけ教室が変わったのかなあ?と思い、同じ8階の教室を全部のぞいてみてもそれらしい授業はない様子。う〜ん今日は休講かなと同学と話しながら階段を下りていると、先生とばったり遭遇。そこで曰く「今日から教室が7階に変更になったんだ。君たち授業には出るかね」。いやあ、さすがにそこで「行きません」とも言えないでしょ、そりゃあ。

 階段じゃなくエレベーターを使えばよかったね、と不届きなことを考える私たちでありました。あとで掲示板ほか確認してみましたが、教室の変更通知はまったく無し。これじゃあ永久に知らない人は知らないままだと思うんですけど。新学期になってもいいかげんなところは相変わらずでした。
 

学内にある授業や演奏会などのの連絡掲示板

【ちょっと困ったことばかり】

  いいかげんその2。教務課に前学期の成績表をもらいに行くと、まだ点数が出てていない教科があり、 もらうことができませんでした。その教科とはペーパーテストの代わりにレポート提出だった東方音楽概論。

 授業に行くと今ごろ先生に提出している学生がいる!おいおい提出期限は確か1月初めだったでしょ!?そのため大晦日だというのに夜中までかかって必死に仕上げた私の苦労はなんだったんでしょうね。あんた達みたいのがいるから、いつまでたっても成績表がもらえないんじゃないか〜。先生、こんなヤツらに単位やる必要ないです!と叫んでやりたい・・・。
 
 いいかげんその3。私は先日昼から2限目の授業は3時20分から始まることを始めて知りました。だから太極拳の先生が「3時30分に点呼するから3時20分頃には集合しておくように」と以前言っていたのを「ちゃんと時間どおり始められるように、少し前に来ておきなさい」という意味に受け取っていました。
 
 だって午前中の1・2限目と3・4限目(注:基本的に1学節45分単位だが、ほとんどの授業が90分なのでこういう数え方になる)の間の休み時間が30分だから、当然昼からの5・6限目と7・8限目の休みも同じ30分と考えるのが普通でしょう。ところがなぜかこの休み時間は20分しかないんです。う〜ん、いったいどこにそんなことが書いてあるのだ。

 ちなみにこの日遅れて来た同学曰く「3時50分から始まるって聞いたんだけど・・」。いろんな情報が乱れ飛んでいるようです。聞くところによると夜7時からの授業もあるとか(実際にEちゃんも受けているイタリア語)。昼に12時からなんてのもあるらしい。うむむ。

(02.2.10)

*初めての考試
  
 十二月は試験の季節。ほとんどの課目は十二月の最後の授業に試験があって、それ以降は2/25から始まる新学期まで、長い冬休みに入ります。 いまだに授業内容が聞き取れていない私は、試験の内容ももうひとつ把握できていませんでしたが、同学の助けを借りつつ、作曲したり歌ったり実演したりで何とかクリアすることができました。

 中国語の試験も、クリスマス・イブだというのに部屋でひとり(うわ〜さみしい)哀しく傾向と対策とウケを考えただけあって、先生からは大絶賛を受け99点を頂戴することができました。東方音楽概論のレポートも多少てこずりましたが、なんといっても日本語OKだったので、大晦日の晩から年越しでなんとか仕上げ提出。あとは結果を待つのみ。


宿舎での毎日の勉強が大事

【専攻課目の考試】

 一般課目の試験が終わった後は、いよいよ専攻の楽器の実技テスト。このテストの日程がギリギリになるまで決まらず、帰国便のチケットを予約する際、さんざん悩まされたものです。

 我々留学生のうち進修生の試験は本科生とは別にされ、留学生寮の一階の部屋で行われました。民楽系は民楽系で集められ、それぞれの専攻の担当教師が集まって採点をします。今年は民楽系の進修生が多く、学生7人に教師4人でした。

 当日の朝9:00。なんとな〜く学生が集まり、なんとなく演奏の順番が決まり、なんとなく「始めましょうか」ムードになったところで開始。う〜む、厳粛な雰囲気とはほど遠い・・。しかも時間が大幅に過ぎているにもかかわらず、呉強老師が来ない。

私の出番は四番目。やきもきしていたら、三番目あたりで呉強老師登場。やれやれ間に合った。後で聞いたら「朝シャワーあびてたら、お湯が出なくなってねぇ。大変だったわよ」・・・あのね先生。いいのかそんなんで?

 さて、いよいよ自分の番がまわってきました。名前と曲目を言って演奏開始。 一曲目は「倒垂簾」。弾き始めはあまり緊張する事もなく、順調かと思っていたらミスを重ねるにつれどんどん焦ってきました。ヤバい!!二曲目の「三六」にいたっては緊張しまくりでミス続出。なんとか止まらずに弾き終えたけれど、冷や汗いっぱい。

 とはいえ、他の皆も同じで、緊張のあまり手がふるえている子もいたし、やっぱり人前で弾くのって大変なことです。「舞台の下の三年は、舞台の上の三分」という言葉があるそうですが、じゃあ私のように半年しか修行していない者はせいぜい30秒ってとこでしょうかねぇ。確かに弾き始めて丁度30秒くらいはいい感じでしたけど。

【やっぱりこわい先生】

 試験終了後、先生に「今から、明日附属中学の試験を受ける子のレッスンがあるが見るか」と言われ、興味があったのでそのまま残って見学することにしました。その様子たるや、見ている私が逃げ出したくなるほど厳しいものでした。

 相手が小学生だろうがおかまい無しに罵声を浴びせる先生。泣きそうになりながらも、じっと耐えて同じ所を何度も弾く生徒。いやー私のレッスンなんて可愛いもんねと思いつつ、こんなに罵倒されるほど期待されてみたいものだと羨ましくもあり。・・と人に言ったら「怒られるの、好きなの?」と返されちゃいました。いやそういう訳では・・・。
 

(02.1.25)

*上音の練習室

【琴房での練習】

  上音には最近できた「新大楼」と呼ばれる18階建ての校舎があります。上層部が琴房(練習室)、中層部が講義やレッスンを受ける教室、下層部が教務課などの事務所、1階には小ホールまでそろっています。

 琴房を使用するためには、入学手続きのさい管理科にお金を払って(75元)まず自分のカードを作ります。入室するときは管理室にカードを渡し、代わりに部屋のカギを受け取ります。練習が終わってカギを返す際、管理人が練習時間をカードのデータに入力して返却する、という仕組みです。

 琴房を利用できる時間は進修生だと1学期360時間しかなく、平均すると1日たった3時間しか使えないことになり、それではちょっと練習時間が足りません。しかもこのカードのデータというのがもうひとつ信用できない感じなのです。

【信用できない使用カード】

 というのも私は常々琴房カード節約のために、できるだけ同房不在のときに自分の部屋で練習するようにしています。なのに1日5〜6時間近く琴房で練習している同学とカードの残り時間がほとんどいっしょなのは絶対におかしい!途中「こわれたから」といってカードを交換された際、適当に処理されちゃったに違いない。むむっ、来学期は毎日入退室の時間を自分で記録してやるのだ。

 琴房は当然のながら1人1室が与えられ、各部屋にピアノが設置されており、空調まであって(但しほとんどきかないらしい。夏も送風だけだった)まずまず快適。留学生のために13階の約半分の部屋が割り当てられていますが、今年は留学生が多いので全員に行き渡らず、時間によっては満室で使えないことも。

 皆も部屋をいったん確保した後、カギを持ったまま食事に出かけたりする同学もいて、悪循環もいいとこ。仕方ないので私は近頃早朝に琴房に行くようにしています。規則正しい生活が送れるし、何より下手な演奏を他人に聞かれずに済みますからね。

 

新校舎の練習室は有料

【飲料水も目的】 

 そういう琴房行くのにはもうひとつ目的があるのです。ふふふ、それは廊下に設置してある飲料水をもらうこと。

 中国の水道水そのままでは飲めないのはご存知だと思います。そのため一般家庭では業者と契約して飲料水タンクを配達してもらい、専用の家庭給湯器とともに設置しているところも多いようです。しかし寮にはそんなゼータクなものはなく、あるのは水道水を沸かしただけの給湯装置のみ。これは臭いだけでなく、じんましんが出たデリケートな同学もいるらしいのです。

 ということで毎日空のペットボトル(あ、でもミニボトルですよ。さすがに1.5リットルボトルは恥ずかしい)を持参で琴房へと向かう私なのでした。中国に来てますます厚かましくなってしまったような・・。(一応琴房カード代には飲料水代も含まれているらしいので、権利はあるわよね、きっと)。 
 

(02.1.15)

*留学生寮


 上音の留学生はほとんどの人達が留学生寮に住んでいます。ここは基本的に2人部屋で、トイレ・シャワーは共同となっています。設備としてはあまりきれいではないし、最初見たときはちょっと抵抗を感じましたが、もうすっかり慣れっこになりました。シャワーもちゃんと熱いお湯が出て、しかも24時間いつでも使えます。他の学校だと時間制限があったりして、シャワータイムは戦争状態のところも多いようですね。逆に設備の整っているところは部屋代が高いようですし。

 部屋代は1日4ドル。各部屋にテレビも電話もついていることを考えるとまあまあというところでしょうか。しかしそれでも高いといって外に住んでいる留学生も若干いるようです。確かに2人部屋だといろいろ気を使うことも多いし、かといって1人部屋を希望すると1日8ドルと高額なので、外に住んだほうが精神的にも経済的にも楽なのかもしれません。私もできることなら1人部屋を確保したいところですが、ふところ具合を考えると現状が一番。ま、慣れれば快適です。多少同房に気を使うことはあっても。

【同学たち】

 今年はものすごく留学生が多いらしく、寮の3階ワンフロアだけでは足りず、普段客室に使用している2階までもがほとんど満杯状態です。1人部屋希望者が多いせいもありますが。同学達はほとんどアジア系です。マレーシアが一番多いかな?台湾もかなりいます。ほかに香港、韓国、モンゴル、シンガポール、ベトナム等等。エクアドルやアフリカのペナンからの留学生も。

 今年は日本人も多く、9人もいます。寮内では北京語だけでなく広東語やモンゴル語などさまざまな言葉が飛び交っていて、わからなくても聞いているだけで楽しいです(ただし私の場合北京語もわかっていませんが・・)。
  

留学生宿舎の廊下も狭しと荷物が置かれる
【西洋音楽専攻が多い】

 中国の音楽大学といえばつい民族音楽を思い浮かべてしまいますが、上音って実は西洋音楽のレベルが高いことで有名な大学なのですよね。民族音楽はけっこう軽視されているかも。そのあたり日本の伝統音楽と同じ傾向にあるようで危機感を覚えます。

 実際留学生でもピアノ専攻が多いようです。他にチェロやクラリネット、バイオリンなどなど。声楽や作曲、音楽教育なども。民樂系ではやっぱり二胡が多いかな。古筝も人気です。あとは笛、打楽器、中阮、そして私が柳琴。同じ楽器同士だと教えあったりする光景もみられ、先輩のいない私にはうらやましい限りです。

 私は中国語があまりできませんが、それでも彼らは気さくに話しかけてくれます。受付のおばちゃんに何か頼み事をするときなども、気がつくとそばにいて口添えしてくれたりと、彼らの親切心に感謝する毎日です。もっといろんな話ができたらなあ。しかし今はまだ人の話を聞き取るのだけで精一杯。あ〜あ。

 

(01.11.10)

*上音の授業について


 ここ上海でもようやく秋らしくなってきました。日中はまだ暑いのですが、朝晩は寒くて上着なしでは過ごせません。街のあちこちから桂花の香りが漂ってきます。日本ではキンモクセイが主ですが、こちらでは白い花のギンモクセイばかりです。郷愁を覚える香りにちょっとホームシックにかかっているモモでした。

【授業のこと】


 9月も2週目に入る頃、やっと本格的に授業が始まりました。私も中国語に少しでも慣れるべく一般の授業にも参加することにしました。自分のメインの課目である「主修専業」(私の場合は柳琴)のほか、「選修課程」「傍聴課程」を好きなだけ選択することができます。一般の語学学校の場合こういった課目選択は学校側が安排してくれることが多いようですが、ここ上音では自分でスケジュール調整しなければなりません。
 
 選修課程は教務課前に掲示される課程表を見て、自分の取りたい課目を選びます。傍聴課程はというと同じように授業を受けるのですが、選修と違い学期末の試験を受けなくてもよいようです(もちろん成績は残らない)。 いろんな授業はとってみたいと思いつつも、どんな内容なのか見当もつきません。先輩たちに様子を聞きつつ、興味ある課目を選んで試しに出てみることにしました。

【お試し傍聴】

 まずは「東方音楽概論」。なんかムツカシそ〜な感じですが、先輩から「ビデオなんかも見せてくれる」と聞き、また先生も日本に留学経験があるので日本語がペラペラとのこと。内容的にはアジアをはじめトルコ、ギリシャなども含めた各地の音楽を紹介する、というものでした。

 日本の音楽にも強い関心を持っておられるらしく、2回目以降も日本製の教材ビデオを見せてくれたり、授業もずっと雅楽など日本の音楽についての講義が続いています。が、この先生、早口でしかも声が小さい。黒板にいろいろ書いてくれるからまだ授業についていけるものの、2ヶ月近くたった今も先生の話は“聴不憧”(わからない)のまま・・・。

【古詩今唱】

  「今唱」って一体なに?と思い、面白そうなのでこれも覗いてみることにしました。古詩を朗読するのは発音練習にもなるし、詩も覚えられるし。
 しかしテープを聞いてちょっとがっくり。この講義の担当である黄白先生が、児童たちのために楽しく古詩を覚えられるようにと有名な古詩を選んで作曲したものですが、曲調があまりに明るい!軽快すぎてちっとも古詩らしくなく、ひどく違和感を覚えました。が、周りの中国人達はすでに幼少の頃学んだ経験があるのか、楽譜もないのに楽しそうに歌っています。
 ま、でも試験は表演、つまり何曲か選んで歌うか、、自分で作曲するかとのことでしたので、簡単そうだからこれも受けることにしました。

上海音楽学院の新校舎
【その他息抜き課目】

 2週目も半ばを過ぎると他の人と情報を交換したりして、別の授業の様子も伝わってきます。私がいくつか受けるつもりでいた授業は理論中心のようで、どうも今の私の語学力では無理そうな雰囲気だったので、ちょっと息抜きの授業も見学してみることにしました。

 「書法」いわゆる書道ですが、日本とは筆の持ち方が違い、筆の運び方も若干差があります。私自身は行書か隷書を学びたかったのですが、残念ながら1年間楷書をみっちり教えてくれるらしく、楷書が苦手な私にはいい機会かなと思いつづけることに。

 この書法の授業が終わった後太極拳に出るという同学に誘われ、気がつくと先生の名簿に記名してしまっていた・・。試験はこれも表演で、習った型を皆の前でやって見せなければならないようです。しまった傍聴にしておくんだと思ったけれどあとの祭り。
 
【昼休み】

 ここ上音での授業は、1節課(いわゆる1時限)45分単位で1日に8節ありますが、ほとんどの課目は2節課、つまり90分単位です。午前は8時から11時半、午後は1時半から5時まで授業があり、昼休みはなんと2時間!!う〜ん中国人もシェスタをとるのか・・。が私は昼寝の習慣はないので、とっても手持ちブタさんな昼休みなのだ。 
 

(01.10.15)

*はじめに

 ここ上海音楽学院(以下、上音と省略)にやってきて、早いもので1ヶ月余りたちました。生来不器用な性質なのもあり、いろんな事にうろたえ悩む毎日ですが、だんだんと慣れてきて何とかそれなりに楽しくやっています。そんな中での体験したこと、感じたことを少しずつ書き綴っていこうと思います。

【新生活スタート

 学校からの通知では「9月1日から5日の間に手続きをしてください」とあったので、前日の8月31日に日本を出発しました。上音に到着して部屋に入ってみるとすでに日本人が。私と同室になるEちゃんで、彼女は数日前に来ていたそうです。同室が日本人だということですっかり安心してしまった私でした。

  「次の日から手続き開始だと思うけど、何か聞いてる?」「いえまだです。でも9月1日2日って土、日だから休みが明けてからなのでは」・・・ん?じゃあ「1日から5日の間に」じゃなく、「9月3日から」って書けよ〜と、中国のいいかげんさに眉をひそめたのですが、こんなのは序の口。まだまだこれからが大変なのだ。

【言葉のこと】

 そうそう前もってお断りしておかねば。実は私、留学を前にして約1年間中国語を習いました。ちゃんとお金を出して。が結局ほとんど話せない、聞き取れないと言うひどい状態で留学してしまうことになったのです。当然ながら他人との会話はほとんど成立せず、何をするにつけいちいち日本人の同学の助けを借りなければやっていけない状態。ですから文中「〜と言った」とあれば、すなわち「〜と(通訳して)言ってもらった」とご解釈ください。日本人同学達にはホント感謝してます。ありがたや。


上海音楽学院の前の通り  
 
上海音楽学院校門

【入学手続き】

 Eちゃんの予想どおり留学生事務室から呼び出しを受けたのは9月3日のこと。新入生ばかり集まって入学手続きに行きました。手続きといってもあちこちの科を回って書類にハンコを押してもらうだけなのですが、どの科に行けばよいのかさっぱりわからないし、長蛇の列に並んでようやく順番がきたかと思えば「留学生は別だから水曜日に来い」とか、「留学生担当の先生が不在だから待て」といった具合。

 そして財務科で学費を払う際、私の怒りは頂点に達したのでした。入学案内には学費がアメリカドル表記だったので、当然ドルで支払うものだと思っていて、日本でドルに両替して持参したら「人民元でしか受け取れないから両替してこい」とのこと。「ドルを換算して人民元で支払うこと」なんて一言も書いていないのに!!あとで聞いたところによると、その年の担当者によってドル可だったり不可だったりするようです。泣く泣く再両替しましたが、大損くらいました。ひどすぎる・・・。

【本科生と進修生】

 ここで少し学院の制度についてご説明を。もちろん大学ですから学生にも、修士・博士研究生、本科生、高級進修生、普通進修生などいろんな段階があります。私はその中で一番末端に位置する普通進修生です。留学生の多くは初め普通進修生で入学し、留学期間中に本科生になるために努力していますが、現実には1年で合格するのは厳しいようです。しかし本科製と進修生とでは、扱いも卒業後の肩書きもぜんぜん違うので必死になるのも当然のことでしょう。実際学生と知り合いになると開口一番「本科生か進修生か」と聞かれますから。

課目選択のなぞ】

 私の授業は柳琴ですが、それ以外の授業も聴講可能と聞いていたし、個人レッスンは基本的に週1回なので結構ヒマだし、何より中国語に慣れるためいくつかの授業に出ることにしました。教務科の前に張り出している課表から選ぶようなのだけど、今イチわかりにくいのだこれが。その横に「選修課目一覧」というのがあって、授業内容や期間、対象などが一応表示されているのですが、課表のすべてが載っているわけでもなし。先輩いわく「興味のある課目は最初とりあえず出てみて、直接先生にいろいろ聞いてみればいいよ」あ、そう。でも場所すら表示されていない課目もあったりする。

 気功の授業に出てみようと思い、まあ広いところでやるんだろうと運動場らしきところで待っていたけれど、時間になっても誰もこない。不安になって講義棟の前でうろうろしていたら、入り口付近に学生数名と先生が出現、教師休憩室に向かう様子。ひょっとして?と思い、ちょうど居合わせた先輩に聞いたらやっぱりそれが担当の先生でした。しかし皆はいったいどこから湧いてでたんだろう?なぜ先生がそこにいるとわかってたんだろう?でも彼らはちゃんと知ってるのだ。不思議。不思議といえば始業や終業の時間がどこにも明記されていないにもかかわらず、誰も質問している様子がないのです。なんで?

【課目いろいろ】

 課表を見ているとなかなか(中国語ができればの話)面白そうな課目が並んでいます。民族器楽概論、民間音楽、民族音楽学、民歌研究、劇曲、などなど民族音楽を志すものにとっては必須でしょう。そのほか語文(国語)や英語、中米関係史などはわかるけど、毛沢東思想なんてのもあって、おおさすが中国!とうなってしまいました。いったい誰が授業受けてんでしょうね。試験ていったい・・・。

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