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モモの音楽日記上海旅行

 
 上海に行ってきました・後編 16.12.26
 
 三日目は二胡のY老師のお宅へ。新しく家族に加わった大型犬に足を咬まれるというアクシデントもありました(涙)が、奥様の美味しい手料理と上海ガニをいただきながらゆっくりお喋りできました。ちょうど十日ほど前にお嬢さんが出産されたそうで、喜びひとしおな御家族の様子に、ちょっと安心。

 その日の夜は上音にて演奏会。実は昼にも別の魅力的な民楽演奏会があったのですが、Y老師との先約で行けず残念でした。まあ、仕方ないですね〜。

 
♪「国風海韵」音楽会♪

 上海音楽学院の民族音楽科60周年記念の一環として行われた、北京の中国音楽学院との民族室内楽交流演奏会「国風海韵」。上音の構内にある賀緑汀音楽廳にて開催されました。

 中国音楽学院といえば劉徳海、とすぐ名前が浮かぶほど琵琶の人材を輩出しているイメージがありますが、この日も楊靖ひきいる琵琶室内楽団が活躍していました。見た目に興味を引かれのは、正倉院にある五弦琵琶や四弦琵琶、そして福建などで使われる南音琵琶が加わった琵琶六重奏。
 

   
 曲も敦煌古楽にある「惜惜塩」を題材にしたもので、復元した古楽器を用いてどんな演奏を聞かせてくれるのかと楽しみにしていたのですが・・・うーん、正直言って前衛的すぎてよくわからん、でした。

 琵琶を弓で弾くなど新しい奏法を取り入れたりしていましたが、じゃあ復元古楽器をわざわざ使う必要ある?という感じ。古楽器を使うなら、その楽器がどう演奏されていたかを探求すべきでは。バチでなく付け爪で弾く現代の中国琵琶は、それでなくとも昔の音とはかけ離れたものになっているはずですから。
 



 
 演奏会では、他に古箏の重奏や管楽重奏、それにちょっと珍しい古琴二重奏などもありました。どれもこれも難解な現代曲のせいか、観客が途中で席を立つこと、立つこと(笑)。もちろん私も理解できているわけではありませんが、音の出し方とか、あと演奏中の佇まいや衣装も含めたビジュアル的な面においても勉強になったことは確かです。
 

 トリは上音の弓弦楽団による「茉莉花」と「馬車夫舞曲」。二胡を含む胡琴類にチェロやベースが加わった、総勢35名オール擦弦楽器の合奏です。擦弦楽器の楽団といえば、私が留学していた時期の少し前から各音大で試みられていましたが、音大の学生であっても弾撥楽団に比べ音程はバラバラだし音に芯が欠けているし、で「二胡はダメだな〜」なんて思っていました。

 が、最近の学生は音程も良いし、昔に比べて楽団としてのまとまりと滑らかさが出てきた印象を受けました。楽器の配置も工夫されていて(←これは一緒に行ったN嬢のご指摘)、選曲や編曲なども考えられているのでしょう。また何年か経って更に進化した彼らを見る機会があればいいな。

 
♪Music Chinaに行きました♪
 
 さて、今回上海行きの目的のひとつでもあった、Music China。日本でも開催されている楽器フェアみたいなものですね。出展しているのはほとんどがピアノやギターなどの西洋楽器で、開催中はライブステージやレクチャーなどもやっています。





会場周辺では芸人さんも

 中国の楽器の区画もあり、その場で小売りもしてくれます。驚いたのは編鍾を展示していたブース。これ、売ってるの・・・?ちょっと値段を訊いてみたい気もします。
 

巨大な三弦のオブジェ                          編鐘

 私も快板書などで用いる拍板など買ってみました。手元で色々遊んでいるうちに、来年7月の弾撥発表会で使うアイデアがさっそく浮かんだので、ぜひ見に来てくださいね♪


 今回の上海旅行では久々に老師の方々とお会いできたのがとても嬉しかったです。でも懐かしい場所や店がどんどん消えていくのを目の当たりにし、何だか居場所が無くなってしまったような、そんな気持ちになりました。変わっていくのは良い事…なのかな?


 ところで空港で見かけたコレ。そう、上海ガニが売っているんです。空港で買って・・・果たして日本に持ち込んでいいのか? 誰か教えて〜


 
 上海に行ってきました・前編 16.11.28
 
 先月末、四泊五日で上海に行ってきました。以前はレッスンや資料を探すために頻繁に訪れていましたが、最近は英国へ行ったりしているのもあって、上海へは足が遠のいてしまっています。

 が、少し前に二胡のY老師から手紙を頂いており、そこに老師が病気になられたと書いてあったのが気になって気になって…。同じ手紙に、Y老師のお嬢さんが結婚されたとの知らせもありました。初めて会った時はまだ9歳だったのに、もうそんな年頃になったんだなあとしみじみ。

 ♪懐かしの上海音楽学院へ♪
 

   
 まずは上海音楽学院へ。アポ無しで呉強老師の教室を訪問しましたが、レッスン中にも関わらず歓迎して下さいました。開口一番「モモ、あなたまだ結婚してないの〜?ホントに変わらないわね、ちょっと太った以外は」と、相変わらずチクリチクリやられましたけどね(笑)

 それでも「モモ、明日は昼と夜にそれぞれ学内で民楽の演奏会やってるわよ〜。あと、今晩コンサートあるの知ってる?北京の中央民族楽団が来るのよ。きっといい演奏だから、ぜひ聞きに行きなさい」との案内と共にチケットまで下さったという、何だかんだいっても良い先生なのであります。

 旅行前に上海のプレイガイドをチェックしていましたが、そこには老師から教えてもらった演奏会はどれも載っていませんでした。昨年末に来阪された古琴の戴暁蓮老師も「明後日レクチャーするからいらっしゃい」と情報を下さったり、現地だからわかる情報ってけっこうあるものですね。

 学校内を見回っていて、留学当時からの守衛さん達が今も二、三人おられ、私の事を覚えていて声を掛けて下さったのが嬉しかったです。かと思えば練習室が完全デジタル管理になっていて驚いたり。訪れる度に少しずつ「私の知らない世界」が増えている事に一抹の寂しさを感じます。

 変わった事と言えば、音楽関係の店が減ったこと。日本でもリアル書店の危機が叫ばれていますが、中国でも同じですね。音楽学院の傍にあった音楽専門店「天天芸術」に続き、福州路にあった音楽書店も閉店したようです。
 



 
 学院の裏にある学院生御用達の店「元龍音楽書譜」に行くと、店があった場所がセメントで塗りこめられて無くなってしまっている!!・・・のかと思いきや、小さな案内板が。表示に沿って進むと、裏側に入口が。よかった、この店まで閉店してしまったら一体どこに行けばいいのか?と一瞬目の前が真っ暗になりました。

 上海最大の書店「上海書城」でも音楽関係のスペースは少しずつ減っており、特に民族音楽関係はCDなども新しく出版されたものがほとんど無い状態。ネットで無料のものが手に入る時代、作っても売れないから作らない、という悪循環になってしまっているんでしょうね。悲しいな・・・。
 
 ♪中央民族楽団「泱泱国風」♪
 

 その日の夜は、上海音楽聴で行われた中央民族楽団のコンサートへ。パンフを見ると、敦煌牌で知られる上海民族楽器第一廠とのコラボで、工場で特別製作された楽器を名だたる演奏家に弾いてもらう、という趣旨だったようです。
 

月琴の馮満天

 特別製作の琵琶や古箏、二胡中胡に月琴中阮。マイクを通すと楽器の音の良し悪しなんてわからなくなりますが、それでもオーケストラをバックにソロがたっぷり聴けるのは贅沢なこと。またほんの1、2分の宣伝演奏でしたが、月琴の馮満天の存在感に観客も拍手喝采でした。


 上海民族楽器が有する楽団、上海馨憶民族室内楽団の演奏もありました。メンバーのほとんどが、私が留学していたのと同じ時期に上音の学生だった人達で、彼らの活躍する姿が見られたのも嬉しかったですね。


 トリは魏育茹の中阮ソロ「雲南回億」第三楽章。音響があまり良くなくて、正直いって中阮の音はあまり聞こえませんでしたが、この曲はオーケストラだけでも十分に(いろんな意味で)楽しめるのです。

 西洋のオケと違い、笑っちゃうほどタテが揃わない中国民族楽器オケ。この日も「管楽器、遅れるなよ〜」なんて心の中で突っ込みつつ、ハラハラさせられっぱなし。けれどどんどん音が重なり合って最高潮に達するときの何ともいえない高揚感。

 例えていえば汗が飛び散る祭りのような、粗さと一体となった熱さといいますか、緻密な西洋オケには無い感覚だと思います。これがあるから民族楽器ファンはやめられませんね・・・。


 
 こんな時期ですが上海旅行・その7 12.12.3


名家講壇・李祥霆《唐宋印象》於:上海新国際博覧中心
    
 ある音楽イベント会場にて開催されたレクチャー。北京から古琴の李祥霆が招かれていました。実は翌日には古箏の王中山や二胡の高韶青のレクチャーがあったらしいのですが、帰国便の関係で残念ながら行けませんでした。飛行機が当初の予定通り夕方便だったら聴けたかもしれないと思うと悔しい!!

 最初は古琴の歴史やら楽譜の解説やら。でもこういうのって本を読めば書いてあることなんだけどな。なんだか司会者もいまいち素人くさい突っ込みで、みるからに入門者向けな感じです。ってエラそうな事を書いている私もたいした知識があるわけではないんですけどね。

 ただ古琴などの文人のたしなみが否定された文革時代の話や、古曲ばかりでなく創作曲に対する考え方、古琴の考級に関する意見など、案外饒舌な、そして笑いを交えて語るちょっとした話が興味深かったです。

 と、途中から入って来て私のすぐ前の席にどかっと座ったおばさん。見れば上音の琵琶教授、李景侠老師ではありませんか。なるほど、もと北京でのお仲間だから挨拶に来られたのかな。しばらくすると舟を漕いでおられましたが、やっぱ古琴は気持ちよく寝れちゃいますよね〜(笑)。

 質問コーナーなんかも活発にやりとりがありました。こういう時、日本だとたいてい「バカな質問だと思われるんじゃないか」とみんな遠慮して沈黙が流れますよね(笑)。諸外国では沈黙なんてあり得ない光景で、どしどし質問が飛びます。

 この日も質問だけで30分近く費やし、本来一時間半のレクチャーが二時間近くに。例えば「古琴の場合、曲の呼吸が難しいのですが」というちょっとおバカな質問にも、「喋ったり歌ったりするのと同じだよ」と例を挙げて明快に答えていました。

 嬉しかったのはレクチャー中、演奏がばんばん入っていたこと。「酒狂」から始まって「関山月」、「流水」、「陽関三畳」に「欸乃」、そして「梅花三弄」。うーん、メジャー曲オンパレード!!

 最後に至ってはリクエストで「喜洋洋」でも弾こうか?と笑いを取りながら(聴きたかったな〜)「青蔵高原」ともう一曲(タイトル聞き取れなくてわかりません)まで演奏する始末。ファンサービスしまくりですね。マニアックなファンには不満でしょうけれど。

 レクチャー終了後、みな楽器に群がる群がる!! 唐時代の楽器を持参していたとのことですが・・・考えてみれば正倉院の宝物殿にある楽器たちと同じ時代に作られた、いわば重要文化財ですよね。ひゃあ。

 なのに銘の入っている裏側も惜しげなく見せ、大勢の観客が近寄って(触っている人もいたな)撮影大会。貴重な楽器なのに大丈夫?と心配してしまいますが、結構平気な様子でにこにこと観客と写真におさまっています。

 日本みたいに後生大事に大切にするのも文化財保護の観点からすると大切なのでしょうが、李祥霆のように普通に演奏に使って常に楽器を鳴らしておくのと、どちらが楽器のために良いことなのか。考えてしまいます。

♪おまけ♪
 帰り、上海の浦東空港で見かけた、ショーケース。

 これ、生の上海ガニだよね。こんなの外国に持ち出していいの!?しかも空港で売ってるって、どーいうこと!? いやあ、さすが中国、ふところが広いですねえ(笑)。


空港のカニ    
 

 
 こんな時期ですが上海旅行・その6 12.11.26

 上音近くの書店をめぐり、さんざん資料を買いまくって外に出ると、歌声が耳に飛び込んできました。あ、もしかして「例のあの人」なんじゃ?

 上音名物(?)、売花姑娘。まあ姑娘というには多少お年を召していらっしゃいますが(笑)。私が留学していた頃も、近くの通りに立って花を売っているのを毎日のように見かけました。

 この日は茉莉花の花束を手に、歌っていたのはもちろん、例の有名な江蘇民歌。日々の売り声で鍛えた喉で、なかなかの歌声を聞かせてくれます。正直、一度も花を買ったことが無いので話をしたこともないのですが、思い切って声を掛けてみました。

 明日帰国なので花は買えないけれどごめんね、と言うと「いいのいいの。この茉莉花、今日入ったところなのよ。いい匂いでしょう」と香りのおすそ分けをいただきました。「最近はみんな私の事をブログに書いてくれたりしているみたい」と嬉しそうに語る彼女、私のような花を買わない客にも始終笑顔で接してくれました。

 皆さんも上音の近くに立ち寄った際は彼女を探してみて下さい。

ただ少々・・・何といいますか、とても純粋で夢の世界に生きておられる方のようなので、くれぐれも優しく接してあげて下さいね。


上音名物(?)、売花姑娘
    
 
 音楽学院は繁華街のすぐ近くに位置していて、北側に少し歩けば賑やかな大通り、淮海中路に出ます。南側に進むとうってかわって閑静な通りが多く、昔は租界だったこともあり、雰囲気のある建物もあちこち見受けられます。

 そんな通りのひとつ、永康路。短い通りの東側は八百屋など昔ながらの商店が並び地元の人達で賑わっていますが、西側は小さな商店がぽつりぽつりと有るくらい。・・・のはずでした。確か去年までは。

 ところがところが。暗くなってから訪れると、ライトが明々とついたお洒落っぽいお店が通りの両側に並んでいてびっくり。いつの間に!? そして店の前では群衆が奇声をあげている!! 百人近くいたでしょうか、それもほとんどが欧米人。イベントか何かあったのかな。


夜の永康路
    
 帰国してから調べてみると、最近急にこのエリアが開発されて、欧米人急増なのだそうな。こんな調子でどんどんあのエリアが新天地の辺りみたいに変わっていくんでしょうか。ちょっと寂しい気もします・・・が来年は時間があれば昼間に行ってみようかな、な〜んて。

 ふと思い立って地下鉄に乗らず、豫園の周辺の小路をホテルまでぶら歩き。帰宅途中の学生に交じって熱々の大根餅を齧りつつ裸電球に照らされた商店を冷やかしながら、この生活臭ただよう界隈の方が私にはしっくり来るなあ、どうもお洒落な場所は居心地が悪いや、と思ったのでした。 


 
 こんな時期ですが上海旅行・その5 12.11.19


    
 
 上海に留学したのは2001年9月のこと。来年には干支がひとまわりするくらい、長い時間が経ちました。

 以前なら学院に行くと必ず誰かしら知り合いがいて声を掛け合ったりしていたのが、今はすっかり見知らぬ学生ばかり。学院に行っても自分がいかにも部外者のような気がして、どうにも居心地がよろしくない感じ。

 が今年は久々に昔の知人、Yさんとお会いすることができました。彼女はずっと上海に住んでおられる日本人で、音楽学院の漢語班にて日本人学生の通訳ほか色んなサポートをされていた方です。私は漢語班で学んではいないので頻繁にお会いしていたわけではないのですが、何かと中国の道理をふりまわす事務所と学生の間で奔走しておられたのが印象に残っています。

 今は音楽学院には出入りされていないとのことですが、相変わらず忙しくお仕事なさっているようです。全然知らなかったのですがパステル画もお描きになっていて、そちらでもご活躍の様子。知人が頑張っていると自分まで嬉しくなりますね。

 Yさんはフェイスブックで私の名前を見つけて連絡を下さったのですが、先の香港のKくんしかり昔の同学しかり、以前だったらなかなか連絡をとろうとしてもできませんでした。こうやって気軽につながる事ができるなんて、良い時代になったものです。


書店の新しい看板わんこ
    
 音楽学院の裏手にあるY書店は、学院生御用達の老舗。少々割引もきくので、私はいつも真っ先にここに寄ります。すっかり顔を覚えてもらっていて、行く度に「そういや最近こんなの出版されたの、知ってるか?」と奥から出してきてくれたり。

 この店ではずっと小型犬を飼っていて、人懐こいのでお客さんからも愛され、すっかり看板娘ならぬ看板犬の役を果たしていました。が数年前に死んで以来、お店もちょっと寂しい感じに。が、今回訪れた時には新しいわんこが!

 看板犬のほかにも、ちょっとした変化がありました。この書店ではいつも帳簿に手書き、電卓計算という昔ながらの方法でしたが、今回はなんと! カウンターにディスプレー画面付きレジスターが。きけば新しい規則ができて、手書きではダメになったんだとか。いつも一品一品手書きで領収書を作成してくれていた別の楽器店のおじさんも、苦笑しながらピコピコと入力してくれました。

 どちらもすでに老年といえるお歳にもかかわらず、必要とあれば苦手であろうデジタル機器も使いこなす。うーむ、スマホといい中国人の順応性の速さには脱帽ですね。


 
 こんな時期ですが上海旅行・その4 12.11.12

 今回は格安ホテルに宿をとったため、朝食はついていませんでした。コンビニでパンを買うという方法もありますが、ここは中国。10分も歩けば必ず屋台が見つかります。

 朝は路上に屋台がずらりと並び、通勤の人達が列をなしています。肉まんに焼売、焼餅に豆腐花・・・中国の食べ物はどうしてこんなにシンプルなのに美味しいんでしょう。コイン何枚かでお腹いっぱいになれますし、ホテルの朝食で済ませるなんて勿体ない!。



朝の屋台の賑わい
    
 
 音楽学院と周辺の書店をめぐっていると、気がつけばお腹がランチタイムを訴えていました。学院周辺は屋台はあまり多くないしどの店に入って食べようかなあ、と思っていると、ワンタン屋発見。

 留学中はよく通っていたワンタン屋、数年経って無くなったのが、また同じ所に出現していました。つい懐かしくて、きのこワンタンを注文。値段をみると当時の倍の10元に。まあ、前の柘榴ジュース10元のことを考えると、それでも安いですが。


ボリュームたっぷりワンタン
    
 がサイズは昔の通り、でかいお碗に入ったワンタンは一つ一つの大きさも当時のまま。フウフウと冷ましながら、昔の苦しくも楽しい貧乏生活(今もあまり変わりませんけれどね)を思い出しました。

 他の留学生があちこち出かけ学生生活をエンジョイするのを横目にみながら、もくもくと練習に励んでいた昔の自分(ちょっと美化していますが)。お陰で上海に長い間住んでいた割には気の利いた場所も知らず、知人が来たからといって書店くらいしかガイドできない、役立たずな私であります。


 
 こんな時期ですが上海旅行・その3 12.11.5

 皆さんはもうスマホをお持ちですか? 私はまだ従来のケータイのままですが、まわりの音楽仲間はけっこう早くからスマホに切り替えている人、多いですね。

 うーん、そろそろ変えるべき?それにタブレット端末にも興味なくもない。でも今のケータイで十分用が足りるし、操作も慣れるまでは面倒くさそうだし・・・。

 上海に到着して、空港から中心への地下鉄の中。隣は荷物の多さから外国かどこか遠方から帰って来たらしい、女の子三人組。カバンから取り出しいじり出したのは、iPad。旅行にもわざわざ携帯してるんですね〜。

 周りを見ると、皆さん手にしているのはすべてスマホ。まあ空港を行き来する人ってのはそういう層が多いんだろうな、と大して気にもとめませんでした。

 が浦西に入り、大荷物を持ち身なりも良いといい難い人達も大勢乗って来ましたが、その人達が手にしているのも軒並みスマホ。そればかりか、結構いいお歳の方々も座席で下を向きスマホをいじっています。どひゃあ!!

 滞在中、従来型ケータイを目撃したのはたった三人だけ。それも30歳前後の人達ばかり。察するに、きっとこちらではスマホの方が手に入れ易いってことなんでしょうか。おかげで写真を撮るのに自分のケータイ(しかも二つ折りなんて中国では相当昔のモデルです)を取り出すたび、皆の目が気になる・・・。

 去年上海に来た時はまだまだ従来のケータイが多かったはずなのに、一年半の間にここまでスマホが率が上がっているとは!!しかも若者のみならず、年配層まで。これにはびっくりしました。

 日本では操作が複雑でわからないと、お年寄り向けのかんたんケータイを所持する人も多いというのに、片や上海のお年寄りはスマホ。ここに国民性の違いを感じます。以下、勝手な憶測ですが。

 中国では、市場に出回っている商品は必ずしも消費者の使いやすいものばかりとは限りません。でもそれに文句を言う事なく、「これしか無いんだから仕方ない」と諦め、それで何とか間に合わせようとします。

 日本では、メーカーが消費者の為に至れり尽くせりの商品を作りますよね。私自身も留学から帰国した際、「日本ってホントに何でも揃うなあ」と改めて感激したものです。でもこれは裏を返せば、商品があまりに特化され、消費者が自分で工夫する能力を奪っているともいえませんか?

 たぶん上海のお年寄りは、スマホしか無ければスマホを使うさ、と「習うより慣れろ」で使ううち自然に慣れていくのでしょう。なのに日本人は面倒くさい事は頭から拒絶する傾向にあるような気がします。

 実はレッスンをしていて、同じように感じることがあります。日本の音楽の先生は生徒に対し、どうすれば出来ない所が克服できるか、練習方法に至るまで、それはそれは懇切丁寧に説明します。

 中国の先生はただ「これとこれが出来てないから、次回までやってきなさい」と言うだけで、どうすれば出来るようになるかなんて一切教えません。でも生徒は自分の頭で考え、自分で方法を導き出します。

 中国人の学習の習得速度が日本人と比べ物にならないほど速いという現実、皆さんご存知でしょうか。彼らは先生の言う事を素直に受け止め、一生懸命努力して次のレッスンに臨むのです。

 うちの生徒は何か言うと「忙しいから」の一言で済ませ、考える時間を作らない。忙しいからこそ、工夫して練習する必要があるはずなのに。指摘された事を整理し、次までの目標を設定し、それに向かって努力する。これは音楽に限らず、人間の行動の基本ではないですか?

 こんな事を言うと周りから「すぐに中国人の肩を持って」と反発されるのですが、客観的にみて、どちらが前向きで、成長する可能性があると思いますか。

 もちろん日本、中国とそれぞれ良い点、悪い点があります。でも良いところはできるだけ取り入れ、悪いところは真似しなければいいのではないでしょうか。

 なんだかスマホの話がいつの間にかレッスンの愚痴になってしまいましたが(笑)。生徒達にはもっと欲を持ち能動的になって欲しいなあ、と望むのです。先生としては生徒が成長してくれる事が一番嬉しいですからね。



上海の目抜き通り、南京路に建つアップルストア
    
 

 
 こんな時期ですが上海旅行・その2 12.10.29

 前回の上海行きから一年半。大して時間が経っていないと思われるかもしれませんが、私にとっては久しぶりに思えます。

 朝9時の飛行機だったので、上海には早々に到着。が預け荷物がなかなか出て来ない。2,30分は待たされたのではないでしょうか。さすが今の時期、厳しく検査をしているのでしょうが、身に覚えのない者にとっては迷惑この上ありません。

 さて空港から地下鉄に乗り、昨年見つけた格安&交通の便良好のホテルに向かう道すがら、「茉莉花〜」の売り声が。ああ、今ちょうど季節なんですね。

 上海のような大都会でも、季節季節にはこんなふうに売花姑娘が街頭に立って花を売っています。通りがけにふわりと漂う茉莉花の香りに、部屋に飾ってみようかなと思い立ち、チェックインの後に買いに戻ったら・・・もう他に移って居ませんでした。残念。

 まずはざっと書店巡り。うーん、買いたい本が音源が山ほど。たった一年半の間に新しい資料がたくさん出版されているんですねえ。また偶然入荷したばかりのものに出会う事もあり、音楽専門店などは旅行期間中の最初と最後、二度覗くことにしています。

 中国の出版物は日本でもネット販売などで購入できますし私も活用していますが、内容だけは店頭で見なければわかりません。存在を知らない書籍も沢山あるでしょうし。例えば数年前に店頭で見かけた月琴の楽譜などは、上海で一度見かけたきり、二度と店頭に現れる事もなく、ネット販売のリストにも上がっておらず、しみじみ「あの時買っておいてよかったな」と出会いに感謝。

 資料類は「一期一会」。装丁を変えて再び出会う事もたまにありますが(CDなどは逆に安くなっていたりしますが、解説が同梱されていない事も多く資料としての価値は半減しますから)、「また次にでも」ではなく、出会った時に買うべきだと声を大にして言いたいです。

 重い資料類を抱えてホテルに戻ると、柘榴ジュース売りの屋台がちょうど止まっていました。目の前で絞ってくれる屋台では砂糖きびジュースはよくお目にかかりますが、柘榴はあまり見ないかも?

 ということで小杯を注文。柘榴を二つに割り、オレンジ絞りのような機械でプレスしていきます。一杯につきまるまる2個の柘榴を絞りに絞った後、表面に浮いているアクを漉し、小杯といえどフチまでなみなみと注がれ、こぼれんばかり。

 ルビーのような果汁は酸っぱいながらも思っていたよりずっと甘く、一杯10元という値段は最初高いかなと思いましたが、量といい味といい、十分にその価値がありました。美味しかった〜♪

 今回けっこうあちこちで見かけたこの柘榴汁売り。写真は別の所の屋台ですが、一緒にドリアンも切り売りしてました。久々に食べたかったけれど、お腹いっぱいだったので断念。こちらは一期一会でもないので、またの機会に。



柘榴汁の屋台
    
 

 
 こんな時期ですが上海旅行・その1 12.10.17

 
「中国に行ったら嫌な目に遭うんじゃない?」

 今回上海に行きます、と言うと必ずといっていいほど返って来た周りの反応。心配してくれる気持ちは嬉しいけれど、別に何も起きないと思うんだけどな。

 ちょうど同じ時期に行くはずだった知人も旅行をキャンセルしたと聞き、とても残念な気持ちになりました。確かに色んなニュースを耳にすると気分が良いものではないし、不安になるのもわかります。

 でも中国人旅行者の大量キャンセルが伝えられる中、10月に入ってからも大阪の街のあちこちで中国語が飛び交っていましたよ。中国人でもそんなに気にしていない人は多かったようですね。

 実をいうとキャンセルの影響で、私が希望していた便が欠航になってしまいました。夕方の帰国便が朝一の便に変更されてしまったのです。帰国日も半日ゆっくり過ごす計画がパア。仕方なく出発日を1日早め、滞在時間を確保するより他ありませんでした。まったくもう!

 さて上海ではどうだったか。・・・いつも通り、変わらぬ様子でした。私は中国語が下手なので喋ればすぐに外国人とバレるのですが、店で買い物した時も「日本人?見た目ホントに同じだよねぇ」と笑顔で声を掛けられましたし、一度も嫌がらせなんて受けませんでしたよ。

 私自身も旅行中ずっと気をつけていたことがあります。それは「笑顔でいること」。努めて笑顔を作れば自然と自分も相手も愛想が良くなるし、気持ちよく過ごせるかと。何事にも必要なのは「避けずにお互いに歩み寄る姿勢」だと思うのです。・・・日本では怖い顔してますけどね(笑)。

 四泊五日の短い期間でしたが、しっかり楽しんでまいりました。今回も資料類をどっさり買い、持って帰るのにひと苦労。一体どれくらいの重さだったんだろう? と量ってみると、楽譜と音像製品類だけでなんと9キロ。そのうち家の床が抜けるに違いありません。


戦利品の数々(?)。持っていれば何かと役立ちます
    
 

 
 院生演奏会・その7 11.9.20

 今年の院生たちの演奏会、いよいよ民楽最終日。目当ての中阮の学生の他、笙の学生の演奏会もちらっとご紹介します。


 
♪林彦吟(笙) 碩士卒業演奏会♪

 笙といえば日本にもある管楽器です。古式ゆかしき日本のものと違って中国の笙はあちこち改良がくわえられており、外見も音量もより大きく、メカニックな感じがします。

 演奏者の林彦吟は台湾からの留学生。「彦」という感じが入っているから男の子かと思ったら女の子でした・・。

 パンフレットもちゃんと配布してくれましたが、さすが台湾人。可愛いデザインでつい手元に置いておきたくなりますね。


林彦吟演奏会パンフ
    
  
 以下、演奏曲目。
1. 微山湖船歌  簫江, 牟善平作曲
2. 秦王破陣楽  古曲 張之良編曲 
3. 泰郷風情   王慧中作曲(注:泰は本来はイ+泰
4. 鵝鑾鼻之春  盧亮輝作曲
5. 静夜思    簫江, 雷建功作曲
6. 望夫雲的伝説 張暁峰, 高沛作曲

 笙の生演奏は在学中ちょくちょく聴きましたが、独演会としてまとまって聴く機会はそうありません。ピアノ伴奏あり、ダブル揚琴伴奏あり、そして秦王破陣楽は迫力の打楽器伴奏(この曲にはこれがなくっちゃ!)で、飽きさせない工夫もされていました。

 特に「鵝鑾鼻之春」は高音・中音・低音の三種類の笙の重奏でした。合奏などでそれぞれの音色は知ってはいるものの、ちゃんとした演奏者同士の重奏は初めて。各パートの特色が生かされたアレンジも楽しく、なかなか面白く聴かせます。

 在学中、上音には特別優秀な男子学生がいて、完璧に近い知的でシャープな演奏をいつも聴いていたため「いまの笙ってこんな感じの音」と思い込んでいましたが、この台湾の林彦吟の演奏はもっと柔らかい、昔っぽい音がしますね。

 言い方を変えれば「キレの弱い、大ぶりの演奏」かもしれませんが、少なくとも「観客を楽しませる」という姿勢が十分に感じられた舞台でした。

  ♪林彦含(中阮) 碩士卒業演奏会♪

 
さて、演奏会最後は中阮の学生。・・・名前、気がつきました? そう、笙の学生、林彦吟と一字違いでしかも文字のパーツは同じという、粋なネーミング。実は彼女たち、一卵性双生児なのだとか。 
 

林彦含演奏会パンフ
    
  
 演奏は全部で四曲。
1. 山韻     周U国作曲
2. 幽遠的歌声  陳文傑作曲
3. 山歌     劉星作曲
4. Three Colors  A.Fakinos作曲
 
 むむ、いきなり「山韻」ですか! この曲は三楽章から成る協奏曲で、20分にも及ぶ大曲。ボリューム的にも技術的にも、プログラムの最後に持ってくるのが普通だと思うのだけど。
 
 演奏会が終わってから本人に直接訊いてみたのですが、いわく「最後にすると疲れて弾けなくなるから、いっそ最初に持ってきて、後の演奏がリラックスできるようにした」とのこと。なるほど、それも一理あります。
 
 さて「山韻」。冒頭、重厚さを感じさせる低音の響きが腹にずんと・・・来るはずなんだけど。軽っ。随分あっさりした冒頭部分。演奏会も始まったところで、いまいち気分が乗りきれていないのかもしれない。結局、第一楽章はあまり陶酔しきれない状態で終了。
 
 第二楽章は快板で、テクの見せどころ。この楽章はけっこうイキイキと楽しげな様子で、早い音符の連続する中にちゃんと旋律もくっきり浮き出していたし、楽章の中の構成も考えて演奏していますね。圧倒的な迫力・・とまではいかないまでも、某演奏家のCDの演奏よりはメリハリが効いていたと思います。
 
 第三楽章は前の二章で提示されたモチーフを総括する内容なので、さらに大きくゆったりと力強い演奏・・になるはずなのですが。ちょっとテンション下がったまま終了してしまいましたね。第二章で体力も気力も使い果たしてしまったのかな。残念。
 
 次の「幽遠的歌声」は新疆系の曲調で、個人的に大好きな曲です。伴奏の手鼓も悪くない感じでからんでいて、危なげなく楽しめた一曲でした。個人的にはもう少しドラマチックに盛り上げて欲しかったですけど。


幽遠的歌声
    
 「山歌」は、先の黎家棣も演奏していましたが、ややギターっぽい、非常にかっちょいい小品です。ただ快速部分がやたら多いので、You Tubeなどで演奏をみても結構ミスタッチが多い、もしくはミスが無くても必死で弾くせいで音楽性が二の次になっている演奏者が多い、リスクの大きい曲といえるでしょう。
 
 でもひょっとすると、この演奏会の中で一番よかったかも。彼女はこの曲だけは音楽と身体の動きが自然に一致していたのです。他の曲はそれなりにちゃんとした演奏ではありますが、まだ消化しきれていない、自分のものになっていない感じがしました。でもこの曲では、実は途中ミスタッチも多かったのですが、その快速部分でさえ歌が存在していました。
 
 最後の「Three Colors」は中阮と管弦楽団の為の小型協奏曲で、この演奏会のために委託創作された曲のようです。伴奏がMIDIだったのでちょっと残念でしたが。
 
 西洋音楽の作曲家が民族楽器の独奏曲を書くとき、例えば二胡はバイオリン、笛はフルートなどとイメージしやすい楽器に置き換えて作曲することは多いと思います。が、実際は音楽文化が違えば表現方法も違うので、「ただの西洋の旋律を中国の楽器で演奏してるだけじゃん」という違和感のあるパターンに陥りがち。
 
 それでもまだ単音の楽器はマシなほうです。弾撥楽器、特に琵琶や柳琴、阮といったリュート系の楽器はイメージしにくいのか、楽器の本領を発揮できる曲を書ける作曲家は多くありません。メロディを単音で弾くんだったら他の楽器でもいいんでは?と思います。
 
 たとえば中阮の協奏曲といえば、昔は劉星の「雲南回憶」、今は「山韻」を演奏することが多いようです。これはつまり他に突出した名曲が少ないということでしょう。なかなか新曲が出ない、というのも民族楽器の世界の悲しい現状ですね。
 
 で、この「Three Colors」、いわゆるニューエイジ・ミュージック(死語?)とでもいうのでしょうか、現代的な、西洋の、美しい曲、という印象でした。・・・言い方を変えると、中阮らしさがほとんど発揮されていない、つまんない曲でした(笑)。
 
 まあこれは作曲者のせいだけでなく、演奏者のせいも多分にあると思います。例えば今まで聴いたことのない新曲をいかに解釈し、表現するか。これはとても難しいことですが、曲が素晴らしくなるかならないかは、すべて演奏者しだい。
 
 新曲を魅力的に演奏できるかどうか、演奏家の音楽センスが問われるところですが、残念ながら大師と呼ばれる演奏家でも残念な人は多いですね。あと時代による流行なども関係してきますし。
 
 さて林彦含、彼女はちゃんと歌心のある演奏家ということもわかりましたし、技術的にも割と安定していると思います。新曲も今後たくさん弾きこんで、進化させていくことはできるはず。将来に期待!
 
 彼女には台湾に帰った後も、どんどん活躍の場をひろげていって欲しいですね。なんたって、あの呉強老師の弟子、なんですから。
 

 
 院生演奏会・その6 11.8.22

 
♪黎家棣 碩士学位中阮独奏演奏会♪

 今回の旅行のメインは唐一斐の演奏会でしたが、他の中阮専攻の研究生、特に劉星の生徒の演奏を聴いてみたいが為に帰国を延期したのは前に書いた通り。
 
 その、劉星の生徒とやらがこの黎家棣という人です。前回でも紹介した半度レーベルのCDの中にもアンサンブルのメンバーとして名前が載っていましたし、この日は期待満々で会場に向かいました。
 
 配布されたプログラムはA4ペラとはいえカラーで紙も厚く、そこはさすが留学生(香港人は留学生扱いです)。中国人学生も見習ってほしい・・・。が、このプログラムを見て絶句しました。


黎家棣 演奏会プログラム
    
  
 上3分の1がプロフィール、中3分の1が演奏曲目、下3分の1が「鳴謝」とあり、そこには上音だけでなく誰もが知っている大師(つまり高名な先生ってことですね)の名前がずらり。プロフィールにも自分がいかに優秀で、どこどこの楽団で活躍して世界中をまわったか等が長々と語られています。
 
 ・・いるんだよね、こーいう人。名刺にやたら肩書きを並べたがるとか、実情を知っている人からすれば取るに足らない、針ほどの小さいものを棒みたいに大きくいう手合いが。
 
 最近ネットの普及でブログを立ちあげる人も多くなり、その手の人間も年を追うごとに増殖中。実際にはショボい内容のものも、ブログで大々的に書かれていれば皆信じてしまうのがネットの怖いところ。・・いや、人の事は言えませんね。このモモ日記を読んで勘違いする人もいるかもしれない(笑)。
 
 が師匠の劉星はこの弟子とは逆で、例えば彼のプロフィールについての記述。「月琴を学習し上音の民楽科に入学、後に民族理論作曲科に転向するも和声や曲式で不合格となり民楽科に戻る」・・なんて堂々と書いてあったりして、シニカルなユーモアにあふれた人物とお見受けしたのですが。
 
 本当にすごい経歴の持ち主は、わざわざ大げさに書かなくても演奏を聴いただけで自ずと知れるものです。ただ悲しいかな、世間にはプロフィールだけを見て判断する人が多いのも確か。・・何だかこの劉星の生徒の演奏、ちょっといやな予感がしてきました。

  ♪超絶技巧・・なのでしょうが♪

 
以下、演奏会の曲目です。
1. 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番ニ短調 BWV1004 J.S.バッハ作曲
2. 漁樵問答 《神奇秘譜》より
3. 酔漁唱晩  同上
4. 瀟湘水雲  同上
5. 柴市節   劉星作曲
6. 山歌    劉星作曲
 
 6曲中3曲が古琴の曲を改編したもの(2,3,4)ですね。いずれも半度雨棚で購入したCDの中に収録されていた作品です。先にCDで師匠の演奏を聴いてしまったので、すでに私の耳は辛口モードになってしまってます。
 
 一曲目はお馴染みのクラシック曲を中阮に改編したもの。バッハは流行りらしく、劉星だけでなく一昨年に卒業した「二宮くん似」のマレーシア同学も演奏会(中断したままですみません。ちゃんと続きを書きます!)でやっていました。難易度と聴き映えのバランスが良いのでしょう、きっと。
 
 資料用にビデオカメラを回していたのですが・・・途中で切りました。バッテリー切れへの心配が第一の理由ですが、実のところ聴いていてすごくしんどかったから、というのが本音です。
 
 彼は確かに指はよく動きますが、歌っていないのです。超絶技巧を駆使することだけに集中しているのか、沢山の音の中に旋律が埋もれてしまい、何を言いたいのかわからない状態。これではただの音符の羅列でしかありません。
 
 二曲目からの古琴の改編曲、これならばゆったりとした曲(ただし劉星の改編だけあって、あちこちに細かい技が仕掛けてあります)ですし少しは余裕があるでしょう。というより、古琴の曲であるからには重厚な風格は必須なのですが。
 
 しかし古琴曲は三曲とも吹けば飛びそうな感じ。きっと緊張で焦ってしまったのでしょうが、それにしても平板な演奏でした。古曲はそれでなくても平板で退屈になりがちなので、普通の曲よりもっと緩急など考えて弾かなければならないのに。
 
 五曲目は笛子・中阮・大阮の三重奏。・・・これ、事前に一度か二度しか合わせてないんじゃ?というバラバラ感。笛子のピッチずれはよくある事(笑)ですが、中阮と大阮も微妙にずれているんですが。
 
 最後の「山歌」はとてもカッコいい曲・・・のはずなのですが、立て板に水のように、あっという間に終了。できれば要所要所で見得を切るかの如く強調して欲しかった部分も、見事にスルー。
 
 全体的にどの曲も落ち着きや安心感に欠けており、院生の卒業演奏会とは思えない演奏でした。きっと本人も不本意ではあるんでしょうけれど、これは明らかに準備不足と思われます。
 
 とはいえ、友人の友人であるアメリカ人などは、終演後に感激の面持ちで「incredible(すげー)!」なんて言ってましたから、一般の人が聴けば十分にすごいと感じるんでしょうけれどね。
 
 ただ、現在世間で大師と呼ばれる演奏家の多くは、若い頃から素晴らしい演奏をしていたわけではありません(一部の天才を除いては)。周囲の人たちに引き立てられ経験を積むうちに、名実ともに立派な演奏家に成長していったのです。
 
 例えば以前日本で活動していた某演奏家。来日して間もない頃にコンサートを聴きに行きましたが、それはそれはひどい演奏でした。耳の肥えた今ならともかく、昔の私でさえそう思ったのですからよっぽどでしょう。
 
 しかしその後、私が留学中に中国の番組を見るとその人の特集が組まれており、演奏も以前とは段違いに上手くなっていたのを見て、ああこの人はすごく努力したんだな、と思ったのを記憶しています。
 
 つまり、本人に向上心と忍耐力さえあれば、いくらでも上を目指せるということです。この黎家棣くんも、将来きっと素晴らしい演奏家に成長することでしょう。

 
 院生演奏会・その5 11.8.2

 ♪莫干山路五十号♪


 今回の旅行では少し時間もあったので、ずっと前から気になっていた場所を訪ねてみることにしました。

 莫干山路五十号、略してM50。ガイドブックには「上海アートシーンの最先端スポット」などと紹介されており、現代アートを中心とするギャラリーやスタジオが集まったところなのだそうです。

 私自身は近現代アートにはあまり興味がなく、どちらかというと古いモノ好きなのですが、気になっていたのは「半度雨棚」というCDショップ。

 「半度」・・・この名前、前々回の日記でもちらっと書きましたが、作曲家であり阮などの演奏家でもある、劉星が芸術総監として活動する音楽ユニットなのです。

 劉星は今もずっとコンスタントに活動を続けており、CDも色々と制作しているという噂は聞きはするものの、雨果レーベルから出ていた昔のCD以外は一般の店で見かけることも殆んどありません。

 この莫干山路にある「半度雨棚」に行けば何かしら情報が手に入るかも、と思いつつ場所が不便なこともあり、二の足を踏んでいました。が今回滞在が延びて時間ができ、体調も回復してきたし、今をおいて行く機会は無いに違いない。いざ行かん!

♪半度雨棚♪

 地下鉄3号線(4号線でもOK)の中潭路駅で下車、マンションの並ぶ住宅街に沿って10分ほど歩いて行くと、ペイントされた壁が出現。何やら「らしき雰囲気」がぷんぷんしています。ここからは地図を見るより壁に沿って進んだ方が迷わずに行けそう(笑)。


いちめんの壁アート
    
  

ヤンキーなカンフー・パンダ?
    
  
 もともと倉庫が並んでいた一帯を改造したというだけあって辺りは空き地が多く、あまり生活感のない、そっけない雰囲気。かと思うと上の写真の奥にあるように、すごく古そうな家が突然建っていたり。

 このすぐ横が、M50の入口です。コンクリート打ちっぱなしの元倉庫がオシャレに改装されたギャラリーからは、鮮やかな色彩の作品の数々が目に飛び込んできます。

 入口の地図で場所を確認して、目当ての「半度雨棚」へ。たくさん入口があるんだけど、どこから入っても同じかな?


半度雨棚の外観
    
 

店の中。手前も奥もカフェ・スペース
    
   
 おっと、壁に阮が掛かってるではありませんか〜嬉しいな♪平日の昼というのもあってか、お客さんはひと組しかいなくて店内はすごく静か。抑え気味の音量で流れているバックミュージック、これって劉星の作品ではありませんか。

 入口近くの壁には劉星制作、または上音関係の演奏家のもの、あとは民族音楽関係のCDがずらりと展示されています。私も劉星作品はけっこう集めているつもりでしたが、持っていないのも割とあるんだなあ〜。1枚の価格が安ければ資料として全部欲しいのですが、日本のとほとんど変わらない値段なのでさすがに全部はちょっと・・・。

 劉星のCDはMIDIプラス民族楽器の組み合わせが多くて、MIDI嫌いの私はちょっと苦手。なので沢山ある未購入のCDのライナーノートを隅々まで眺めまわし(店で試聴も可能です)、MIDIを使わず生の楽器演奏ものを何枚か選び出しました。

 半度のライブ演奏「流水」、パガニーニやシューマン、バッハ等の西洋クラシックを中阮と大阮の合奏に仕立てた「音楽瞬間」、同じくバッハのチェロ組曲を中阮で演奏した「大地」、そして古琴の名曲を中阮に移植した「広陵散」の4枚を購入。特に「広陵散」は聞きごたえあり、の1枚です。

 劉星はCDはたくさん発表していますが、楽譜は台湾で出版された一冊だけしか私は知りません。ダメもとで案内のお姉さんに「ここでは楽譜などは扱っていないのですか」と訊ねてみると、なんと「広陵散」と「大地」の譜集ならありますよ、とのこと。やったぁぁ!!

 他人にとっては大したものでなくても、私にとっては資料類は宝のようなものです。フトコロは寒くなりましたが、心はほくほくと温かく、やっぱり来てよかったなぁとニヤけ顔で帰途に着きました。

 「半度雨棚」はカフェ併設でランチなどもありますし、ちょくちょくライブも行われているらしいので、興味ある方はぜひ一度のぞいてみて下さいね。


 
 院生演奏会・その4 11.7.12

 ♪老師のレッスンを見学♪


 わが呉強老師は柳琴や中阮の教師であるだけでなく、数年前に民族音楽指揮の修士学位を取得された後は楽団の指導も数多く手がけられ、以前にも増して忙しい日々を送っておられます。
 
 留学から帰国してすぐは度々上海に行ってレッスンを受けていた私ですが、老師の忙しさが半端でなくなり、今や挨拶に伺うのにもスケジュール調整が大変。それでも毎回1時間弱とはいえ、私の為にちゃんと時間を割いて下さるのは有難いことです。
 
 今回は風邪でずっと声が出ず、電話で「うつるから会うのは風邪が治ってから!」とキツいお達しが(泣)。やっと唐一斐の演奏会終了後「レッスン室にいるから上がっておいで〜」との連絡があり、いそいそと向かう私。
 
 うわ、レッスン真っ最中だよ!「遠慮しなくていいよ。さっきの演奏会、どう思った?」・・語りたいけどレッスン中に長話すると学生に悪いしなあ。
 
 そう、中国ではレッスン中に部外者が乱入したり、携帯での通話やメールは極めて普通。しかも邪魔が入った分レッスン時間を延長してくれることもありません。邪魔せず、かつ時間稼ぎしなくちゃ。
 「老師、見学していっていいですか?」
 
 老師によっては毎回レッスン中に他の生徒達を同席させる方もいて、それはそれで精神面の鍛練に役立つとは思いますが、うちの老師はあまり好みません。ゆえに他の生徒のレッスンは滅多に見られないので、この機会、のがさいでか!
 
 さて目の前の付属中学の中阮学生、練習曲を弾き始めます。指もスラスラとは行かないまでも私よりゃよく動くし、ひどい失敗をした訳でもない。・・・が老師、2秒ほど無言の後、「次!」
 
 あら。老師、怒ってますねこの反応は。きっと前回から進歩の跡が見られなかったんだろうな。次に弾き始めたのは楽曲ですが・・・う〜ん、何だか聴いたことがあるような気がするけど何の曲?
 
 それが林吉良の「草原抒懐」だとは、長いイントロが終わってテーマが出て来るまで気がつきませんでした。が最後まで「ホントにあの曲か?」と首をかしげるくらい、リズム滅茶苦茶でほとんど初見としか思えない、ワケのわからない演奏。
 
 えーと、いちおう付属中学の学生だよね? そして楽譜を見ずに弾いたってことは、少なくとも一度はレッスンを受けたことのある曲ってことだよね?
 
 老師、低い声で「いつまでもそんな調子でいいと思ってるの? ここに来るより先に楽理の先生でも探しなさい!!」・・きっとこの学生は毎回このリズム感で臨み、それを直す為の努力をしていないんだな。それじゃあ怒られて当然でしょ。結果、レッスンは20分ほどで終了。
 
 相変わらず厳しいなあ老師。しかし思えば私の時も、どこの馬の骨ともわからないこの私を、よくぞ教えてくれたものです。口調は厳しいけれど、常に私が教師になる事を念頭に置いた上で色んな事を教えて下さいました。
 
 厳しいのは相手に期待するからこそ。実際、アマチュアの生徒相手には大してキツい要求はしていなかったのを覚えています。先程の学生も、きっといつか老師の指導のもと、才能が開花することを祈っています。
 
 続いて同じく付属中学の柳琴学生。こちらは結構安定した演奏で、老師の覚えもめでたい感じです。老師が最近出版された高級練習曲をみっちり、いくつもの細かい指摘を私も傍で聞きながら、非常に得ることの多いレッスンした。
 
 レッスン終わったし老師とゆっくりお話でも・・「昼からも研究生の演奏会の採点があるから、もう行かなくちゃ。ホントはあなたにあげるCDがあったんだけど、持ってくるの忘れちゃった」そーですか老師。がっくり。

♪楽団の指導を見学♪


楽団の練習風景
    
  
 「明後日に楽団の指導が終わったあと時間を取ったげるから、○○の少年宮に来なさい。CDを持参するのを忘れそうだから前の晩10時前に電話ちょうだい!」はいは〜い老師。早く来て練習を見学してもいいですか? とすかさず了解をとる私。
 
 その日は早くホテルを出て、指定された少年宮ちかくの観光名所(?)、田子坊に立ち寄り何も買わずに目の保養(笑)。少年宮にたどり着くと、すでに1階のエントランスには民族楽器の音が響き渡っています。
 
 上階にいくと立派なホールがあり、そこの舞台で練習をしている、少年宮のお子ちゃまの面々。呉強老師は舞台わきの椅子に座って眺めています。どうやら、通常は別の指揮者が指導をし、呉強老師は最後の仕上げを担当している様子。
 
 老師はちょくちょく立ち上がって学生の横に立ち、個人的に指導している姿が見られます。例えば一人一人に演奏させ、「こんな感じを出して」と指示をしています。
 
 二胡や琵琶など自分の学生ではない相手には優しい口調ですねえ、老師。なのに小阮の学生に対しては「アンタ何弾いてんの!」と鋭い声がとんでいます。一人で弾かせ、ちゃんと弾けていないので「真面目に練習してないの!?」と怒り出し、挙句は泣かせていました・・。
 
 しかしやはりアマチュア。上手い子は上手いけれど、小さい頃から習っている割には案外・・、だったりします。でも合奏の本番ではアマチュアでも非常にまとまった演奏であったり、逆に一人一人の技量が高いはずのプロ楽団が本番ではぐちゃぐちゃだったり。個人の技量と集団のまとまり、どちらのレベルが低くても良い演奏は成り立たないのですね。
 
 練習の最後は老師が指揮台に立ち、すごい勢いで仕上げていきます。最初に来た時の音に比べて音は引き締まり、子供たちの目も真剣そのもの。例の泣かされた小阮の子も、激しい部分で自然に身体が動いており、老師から「いま椅子から身体が浮いたよね。その調子!」と褒められていました。
 
 そう、合奏にはこの一体感が必要なんですよね。いつか私も老師のように、生徒達を真剣にさせるような指導ができるようになりたいです。

 
 院生演奏会・その3 11.6.27

 ♪帰国の延期


 今回の旅行の目的である唐一斐の演奏会が行われたのが4月2日。参加予定の中国音楽フェスティバルが丁度その1週間後の9日なので、予定では4日に帰国するはずでした。
 
 しかし7日には中阮の卒業生2名の演奏会があるときき、帰国便変更不可の航空チケットを持ったまま、最後まで悩む私。
 
 2名の中阮の院生のうち、一人は呉強老師の学生。それだけならきっと当初の日程通りにさっさと帰国していたかもしれません。でももう一人は劉星の生徒ということを知った時、好奇心が頭をもたげます。
 
 劉星の名は、阮を学ぶ者で知らないのはモグリだと言えるほど。残念ながらうちの生徒達は関心が無いようで名前を出してもさっぱり反応がありませんが。以前この日記でも紹介したのになぁ。
 
 彼は演奏のみならず自ら作曲もこなし、中阮協奏曲「雲南回憶」ほか多数の現代的な曲調と技法でもって、阮だけにとどまらず中国音楽の世界に新しい意識と技術の改革をもたらした人物です。その劉星の指導を受けた学生、しかも院生の演奏って、一体どんなだろう?
 
 それでなくても唐一斐の完璧に近い演奏会を体験し、日本でぬるま湯生活を送る自分へ新たに喝を入れ直したばかり。柳琴や中阮だけでなく、二胡や古箏ほか色んな楽器も含め、いま現在のトップに近いレベルの学生達の演奏をたくさん聴いて帰って自分の肥やしとしなくては!!
 
 でも例の中阮学生の演奏会は7日。中音フェスは9日。・・・フェス前日の8日に帰国するしか、ないですよね。まあ私の担当は低音パートで難しくはないし、一度だけだけど他のメンバーとも合わせたし、何とかなるでしょ、きっと。
 
 というわけで帰国日を変更すべくJALに電話すると予想通りで、便は変更できないので新たに購入して下さいとのこと。提示された値段が恐ろしく高いので、結局は他の航空会社で片道分のチケットを購入しなおし、元のチケットはキャンセル連絡の上、破棄することに。
 
 上海への旅行はたいてい中国系の航空会社。今回は久々のJALだったので、行きは贅沢気分で舞いあがっていました。機内食も機内映画のプログラムもいつもと違って何だか高級感あるし〜♪


ちなみにJAL機内食
    
  
 なのに帰りはいつも通りのショボいCA。JALの夢ははかなくも片道でついえましたよ(涙)。今後は少し高くても変更可能なチケットを買うべきか悩むところです。


午後の紅茶
    
  
 おまけ。午後の紅茶・北海道メロン味ミルクティー。・・・これ、日本では売ってないですよね、たぶん。午後ティーは日本のモノも甘さというか濃さが微妙に中途半端だと思うのですが、この中国バージョンもしかり。けっこう好きな味ですけどね。
 
  次回は呉強老師のレッスン見学の巻。相変わらずキョーレツでした。


 
 院生演奏会・その2 11.6.6

 
♪簡略化される卒業演奏会♪

 大学院生は卒業までに2回の独奏演奏会を行うことになっています。前にマレーシアの同学の演奏会レポートでも紹介しましたが、たいていは費用の関係で学校内のショボいホールを使用しつつも、中身はちゃんとした正式な独奏音楽会でした。
 
 たとえば、衣装はクラシックなドレスを着用、来場した観客にはプログラムを配布。また演奏会の為に委託創作した新曲や、そこまでいかなくとも新しくて難易度の高い曲、またゲストを呼んでアンサンブル演奏を2曲ほど入れたりと、本科生とは一線を画した選曲で、途中休憩を挟みバランス良くかつ聴きごたえのある演奏会を、というのがまあ常識。
 
 もともと柳琴の同学の開演時間が朝9時半からと聞き、えらく早い時間から始めるんだな〜とは思っていました。普通ならリハの時間も考慮の上、午後や夜に開演のはず。演奏会シーズンだし、採点する先生方の都合が合わなかったのかな。
 
 上海在住の同学いわく、「10時半からはもう一人の柳琴と、午後からは古箏の劉楽の演奏会があるよ。あとは目ぼしい学生はいないけど」???・・・どういう事?同じ日にいったい何人の演奏会があるわけ?
 
 どうやら院生が増加したせいで一人一人正式な演奏会を開く時間や会場の確保が難しくなったらしく、朝から夕方まで1時間単位で時間を区切り、数日間で集中して行うことにしたようです。でもこれでは本科生の試験と同じで、ちっとも院生らしくありません。自然と学位修得に対する意識も軽いものになってしまうのでは?

 ♪唐一斐 柳琴碩士卒業音楽会♪

 さて今回の旅行のメイン、柳琴専攻の同学による演奏会です。


レベルの高い演奏
    
  
 まずは弦楽四重奏の静かな前奏から始まる一曲目、柳琴組曲「仲冬夜歌」。初演かどうかはわからないけど新曲ですね。事前に配布された曲紹介によると、仲冬すなわち陰暦十一月の夜の情景になぞらえ、心を表現したとあります。全部で12の楽章から成り、この日はそのうちの8楽章分が演奏されました。
 
 ハーモニーがとても綺麗な曲です(チェロが度々音をはずしていたのが残念)。特に柳琴とバイオリンそれぞれが始めから終わりまでハーモニクスで掛け合いをする第4楽章などは、ささやきながら対話しているみたいで、あまりに美しくてとろけそう。
 
 他にもずっと和音ピチカートばかりの楽章があったり、ほとんど八度ばかりの双音トレモロが延々続いたり、ただ旋律が美しいだけでなく楽器の特性を生かしつつ、新しい技巧も取り入れた曲作り。作曲者でありこの日の指揮もしていた孫暢氏、なかなかやりますねえ。次回作が期待されます。
 
 2曲目は無伴奏で徐昌俊作曲の「剣器」。杜甫の剣舞を詠んだ詩を題材にした、既に柳琴(最近は中阮での演奏も多いです)のスタンダード・ナンバーと言える曲ですね。
 
 この曲の初演は呉強老師。曲の繊細かつ大胆なイメージを定着させただけでなく、クレジットはないけれど共作者と呼んでいいでしょう。ラストまでの一気呵成感、有無を言わせず畳みかけるような風格は老師ならではのもの。
 
 しかし技術的にはすごく難しいというわけではないので、これは老師の弟子だからということでの選曲なのか、はたまた時間合わせか・・・。
 
 ピアノ伴奏の3曲目は、雲南の少数民族の旋律。どこかで聞いたような、と思って終演後尋ねると(プログラムなるものは存在しなかったので。)、劉文金作曲の柳琴協奏曲「酒歌」とのこと。
 
 そういや少し前に中央民族楽団の張?華の演奏をYou Tubeでフルオケ伴奏バージョンを聞いたところでした。・・でもこんな迫力満点の曲だっけ?
 
 そう思って再度聞き直してみると、ほとんど別の曲のよう。まあ張?華は男性だし昔のスタイルで演奏する方なので、それはそれかなぁとは思いますが・・・特に快速部分は再生スピードの違うテープを聞いているような錯覚が(笑)。
 
 呉強老師系の演奏スタイルは確かにカッコいい。ただ個人的にはそれが必ずしもベストとは限らないと思っています。しかし両者の「酒歌」を比較してみると、唐一斐の演奏は旋律にしろ対比にしろ非常にはっきり表現されていて、メリハリが利いているのも確かなのです。
 
 唐一斐のテクニックの高さには定評があり、例えばつい最近出版された老師の高級練習曲集を評するに「あの唐一斐でさえ録音するのを躊躇するほど」超むずかしい、などと超絶技巧の代名詞がわりに用いられるほど。
 
 そんな彼女が弾くからちゃんと美しく聞こえますが、実はかなり難易度が高いテク満載。何気なく弾いているように見えてもメロディの流れを途切れさせない為にどれだけ意識して指を保留させ余音を残しているか。
 
 ホントに「ここまでやる?」というほどに一つ一つの音を文字通り「確実に」出す、それができるのも彼女の高い技術力あってのこと。またテクニックだけでなく音楽性も、呉強老師の名を辱めないレベルの高さだと思います。それに至るまでの努力と精神力には頭が下がりますね。
 
 構成についても、もちろん本人の演奏についても、碩士(=修士)卒業にふさわしい演奏会でした。彼女のように優秀な演奏者には、今後もどんどん活躍してもらいたいです!

↓ちなみに張?華の柳琴協奏曲「酒歌」の演奏はこちらで観ることができます♪
第一樂章 《美景 放歌 迷人》
http://www.youtube.com/watch?v=5dH65hkFvFA
第二樂章 《月光 起舞 醉人》
http://www.youtube.com/watch?v=uY_MM9AY_Hg&NR=1


 
 院生演奏会・その1 11.5.16

 
♪柳琴専攻学友の演奏会を聴きに上海へ♪

 先月の中国音楽フェスティバル、実はその開催日の前日まで上海に行っていました。情報収集のため上海へは一年に一度は行くことにしています。楽譜に音源といった資料を手に入れるだけでなく、同学とのおしゃべりにも割と重要なヒントが詰まっていたりしますしね。

 さて今回の目的は柳琴専攻の同学の演奏会。彼女は私が留学していた時期に上音付属高校から進学してきた学生で、当時からすでに呉強老師の学生の中でも群を抜いて優秀でした。その彼女が試験免除で大学院にあがったのですから、さぞや卒業演奏会も素晴らしいものが聴けるに違いありません。

 前々から「彼女の演奏会を聴きに行きたいから、確定したら絶対に知らせて下さいね」と老師にお願いしているにもかかわらず、時期的にもそろそろじゃないかと思われるのに連絡が来ない。でも中国人ってせっつくと逆ギレするんですよね・・・だからってこちらから連絡しないと自主的には教えてくれないし。

 東日本大地震があって数日後、呉強老師が安否メールを下さったのでお礼を兼ねて電話をし「ついでに」、演奏会のことを尋ねてみました。すると「ああ、それなら4/2に決定したわよ」・・・決まってたんなら教えて下さいよ老師(泣)

 ♪飛行機とホテルの予約で・・♪

 それからは仕事の段取りをすませ、飛行機チケットを予約しホテルを確保。と書くと簡単そうに見えますがホテル探しにけっこう難航しました。

 私はいつも中国の予約サイトを利用するのですが、昨年の上海行きでは特に万博期間中だったのもあり、なかなか予約がとれませんでした。

 価格を見て「予約完了」の画面が出た後に「満室です」だとか「価格が変更になりました」とメールが届いて一からやり直し、というのが何度も続き、最後は日本語の予約サイトでリクエストしたら一回でOKだったという経験がありました。

 今回も「お、安い」と思い予約すると「キャンペーン期間終了の為、この価格では提供できません」とのこと。サイト内の情報更新、全然してないんですね。まったくもう!!

 結局は昨年と同じ日本語サイトで、中心地に近いホテルを格安で予約することができました。旅行前から風邪をこじらしていて旅行中もほとんど部屋で横になっていることが多かったので、今回のように交通の便のよいホテルで本当に助かりました。

 ただ、いつもなら2kgは痩せて帰るのが、ほとんど食事もしなかったはずなのに3kgほど太ったのはやはり運動不足のせいでしょうか・・。

 さて上海に着いて友達に電話をすると、柳琴の同学の以外にもたくさんの演奏会があることが判明しました。うそぉ、事前に詳細がわかっていればちゃんと予定も組めたのに!!

 しかし飛行機のチケットは安いのを買ったせいで日程変更不可。ど、どうしよう・・・。
 

 同学の卒業コンサート 09.9.7

 5月末に上海に行ってきました。昨年もレポを書いた、中阮専攻のマレーシア人同学の大学院卒業コンサートを聴くために。そう、例の「嵐」の二宮くん似の彼です(笑)。


昨年のコンサートより
    
  
 
♪直前の変更♪

 
「絶対行くから日程が決まり次第教えてね」と前々からお願いしてありましたが、やっと連絡が来たのはコンサートの20日前。昨年もそうでしたが、かなりぎりぎりに決まるものなのですねえ。
 
 こちらも仕事を調整し、何とか六日間の旅程を確保。前の晩遅く、いつもの如くぎりぎりに荷物を用意していると突然電話が鳴りました。
 
 もう11時すぎなのに誰だろう?・・と、受話器のむこうから聞こえてきたのは中国語。「モモ〜、僕だよ〜」と懐かしき脱力気味の声の主は、その卒業コンサートを開く当の本人、蔡為忠くんでした。
 
 「どうしたの今頃?明日の飛行機で上海に行くよ。コンサート楽しみにしてるからね」「そう、そのコンサートのことなんだけど、今日学校から連絡があって、急に延期になっちゃったんだ」
 
 な、なにぃぃぃぃ!? 聞けば、3日前に迫っている今日、いきなり学校側の都合で約1週間後に延期になってしまったらしい。・・そんなあ、コンサートの為に仕事の都合もつけたというのに。
 
 もう出発前日だから飛行機も今さらキャンセルできないし、コンサートを観ないで帰るなんて何の為に上海に行くんだか。むむ、仕方ない。チケットは帰国日変更可能なものだったので、何とか仕事も調整して、滞在を延期してコンサートを観てすぐ帰国しよう!
 
 幸い仕事といっても個人レッスンばかりなので、生徒の皆さんとメール(さすがに深夜には電話できませんから)でやりとりすることしばし。翌日の出発時間ま でには日程調整もすべて終了し、晴れて上海へと飛び立ちました。これも為忠がわざわざ日本まで電話をくれたおかげ。上海に着くまで知らなかったら、大変な ことになるところでした。
 
 しかしさすが中国、こんなぎりぎりにコンサートの日程を変更するなんて信じられん。しかも理由が「審査の先生(卒業コンサートは必須実技試験みたいなもの なのです)の都合が悪くなった」ときた。そんなの、日程なんて前からわかっていることなのに急に都合が悪くなったってどーいうこと!?
 
 何といっても一番可哀想なのは本人。コンサートに向けて万全の準備をしていただろうし、アンサンブルでの共演者の都合もあっただろうし、急に延期になって心理的にもかなり動揺したんではないでしょうか。・・・と考えるのは私が日本人だからかなあ。

 上海三泊四日ツアー・その6 08.8.5

 ♪中阮コンサート♪

 さていよいよ今回の旅行のメインである、中阮コンサートの話を。


  なかなかオシャレなポスターです
 
 彼はマレーシア華人の留学生で、名前を蔡為忠といいます(なんだか訓読みすると鎌倉武士みたいだなあ)。ポスターには『Neil Chua』とありますが姓を広東語読みするとChuaになるのかな?。メールをくれる時のネームは『Neil Tadashi』となぜか日本語読みが混じってますが(笑)。
 
 彼は高校卒業後に上音の本科を受ける準備のため、私より半年ほど前に留学生寮に来ました。なので知り合ってかれこれ7年ほどになります。同じ楽器(・・みたいなものですよ、柳琴と中阮は。私も中阮弾いてましたし)同士なのもあり、練習しているとちょくちょく遊びに来てくれたり相談に乗ってくれたりしたものです。
 
 現在は本科を卒業し、大学院で学んでいます。彼は中阮を始めたのが比較的遅く、そのため技術に関してずっと悩んでいたようです。一時期練習しすぎで手を壊し、長い間レッスンを受けられなかったこともありました。
 
 しかし今では中国人の本科生よりよっぽどいい演奏をします。というのは彼は感性がとても良くて、ひとつひとつの音の処理が丁寧なのです。確かに幼少のころから学んでいると指もよく動き、技術的には申し分ない人も多いのですが、感性に関しては天性のものですから。
 
 為忠はポスターを見ればわかると思いますが、ちょっとフェミニンな感じの、線の細い男の子。そーいえばちょっとアイドルグループ、嵐の二宮和也くんに似てません?下のショットなんて特に。


  コンサートの招待状・・・似てる?
 
  テレビで初めて二宮くんを見たとき、「あっ、為忠がいる!!」と思いましたもん。背格好とか首のすわらないゆらっとした感じ(ファンの方すみません)、為忠にそっくり〜。ついでに言うと、テレビでIKKOさんを見る度うちの老師を思い出したりして。髪型とか頭の上にグラサン載せてるところが似てる〜(顔は 全然違いますけどね)どんだけ〜(笑)。
 
 ま、似てるかどうかはおいといて。演奏の方も力強いというより男性のふところの深さ、プラス女性的な繊細さを感じさせて、ちょっと中性的。また本科生時代は劉波、現在はうちの老師と2人の先生に指導を受けたというところも着目点のひとつ。成長が楽しみな逸材です。
 
 この日の演奏曲目は下記のとおり。
 
 1. 絲路駝鈴・・寧勇 曲
 2. 暁霧・・・・梁在平 曲
 3. バッハ無伴奏チェロ組曲BWV1007
 4. 周二聚会・・劉星 曲
 5. 塞外音詩・・顧冠仁 曲
 6. 山韵・・・・周U国 曲
 
 う〜ん、新曲が少ないなあ。バッハと「周二」以外は本科生時代に何度も演奏済みの、彼にとっては十八番の曲ばかり。大学院卒業までにもう一度演奏会を開かなければなりませんが、今回はとりあえず無難にまとめた、というところでしょうか。


 
 
 一曲目の「絲路駝鈴」、もともとは大阮の独奏曲ですが中阮で演奏されることも多い、阮の定番曲。技術的に難易度は高くありませんが、表現力が試される曲でもあります。本科入学時代に比べ、明らかに重量感が増して内容が濃くなっているのが進歩の証拠。
 
 二曲目の「暁霧」も、音数が少ない中で空間の広がりを出すのが難しい曲です。元は古箏の曲を林吉良が阮用に編曲したものですが、余韻が大きい古箏の響きを中阮でいかに再現するか。
 
 おそらく昔はじめてこの曲を習った時、彼は自分ならどう表現するか、考えに考えたことでしょう。元の古筝バージョンがどんなのか知りたくて、古筝専攻の留学生に原曲を弾いてもらったとも聞きました。硬さがとれなかった以前の演奏に比べ、ちょっと余裕が感じられる・・かな。
 
 三曲目のバッハチェロ組曲。クラシックの曲って一曲の時間が長いですよね・・。演奏者にとっても体力と気力が必要でしょう。予定ではこの曲をトップに持ってくるはずだったようですが、いきなりこの曲だとちょっとキツかったかも。
 
 原曲からどのくらい改編が加えられたか聴き比べていないのでわかりませんが、少なくともチェロとは調弦が違うので、チェロの為に作曲されたこの曲を中阮で弾くためには、当然無理な指法を沢山使っているはず。
 
 にもかかわらず流れを途切れさせずに余韻を残すために保留指を駆使していて、奏でる音は単音でありながら手はずっと和音を押さえている状態。淡々と弾いているように見えて、実はなかなか疲れるワザです。
 
 四曲目は中阮四重奏「周二聚会」。劉星の作品は一曲は入るだろうと予想してはいましたが、まさか四重奏とは。為忠以外の中阮は、呉強老師の学生トップ3の面々が弾いており、覚えやすいフレーズを軽快かつノリノリで歯切れよく仕上げていました。原曲はもう少し柔らかい感じだけど、呉強軍団のプロデュースだと自然とこうなるのかな・・。


 息もばっちりの四重奏(Mさん提供)
 
 ピアノ伴奏ではじまる五曲目、「塞外音詩」。顧冠仁はとても弾撥楽器のことを理解している曲作りをするなあ、といつも思います。楽器の奏法を存分に、それ も無理なく発揮させるのが上手いんですね。ただそのためか、メロディも古典的すぎて皆をあっといわせる冒険もないのが玉にキズ。
 
 六曲目の「山韵」。中阮の独奏曲はたくさんありますが、演奏会にふさわしいような、派手で一定の難易度と長さがある曲があまり多くありません。以前なら演奏会といえば劉星の「雲南回憶」でしたが、最近ではこの曲が演奏されることも増えました。
 
 もともと三楽章から成っていますが、第二楽章に第一楽章のアタマをくっつけて単独演奏されることも多く、この日もそのバージョンで、伴奏はピアノ。
 
 山の静けさ、滴り落ちる水、一陣の風に破られる静寂。流れる川が下りていくにしたがって水量を増し、奔流となって大海に向かっていく。無限の如き反復が少しずつ姿を変えていき、どんどんエネルギーが高まりやがて爆発する、まるでビデオでも見ているように目の前にひろがる光景。何度聴いてもかっこいい曲です。
 
 為忠の演奏は、特に慢速部分は十分に感情が投入され、音の出し方や動作にも彼のセンスの良さが感じられます。快速部分は音の粒がやや均一でない部分はあったものの、スピード感もあり、最後までどきどきしながら聴かせてもらいました。
 
 私が在学中に、彼が奨学金獲得のコンクールに参加する前に「ちょっと聴いてほしいんだけど」と、この曲を弾いてくれたことがあります。すぐそばで聴いたせいか、「気」みたいなのが身体から放射されていて、演奏もですがそっちの方がすごいなと思いました。
 
 今回は舞台に立っているという緊張も当然あるでしょうし、本来なら問題ないはずの部分をはずしてしまった箇所も多いはず。いつもの彼の本分が百パーセント発揮できていなかったのと、今日はその「気」があまり感じられなかったのが残念でした。
 
 以前うちの老師が某音楽祭のゲストとして来日した際、この曲を演奏されました。触れれば崩れ落ちそうな静の部分と、文字通り怒涛のように迫ってくる動の部分の対比、そしてその圧倒的な存在感に鳥肌だった記憶があります。
 
 舞台と客席で距離が離れているのにもかかわらず迫ってくる「気」。会場全体が水をうったように静まりかえって、ただただ老師の音楽を聴き入っている、はりつめた緊張感。これだけ沢山の聴衆をとりこにするには、一体どれだけの「気」が放出されているのやら。
 
 それを考えると、為忠の演奏は他の学生と比べても十分に抜きんでていますが、それでもまだまだ若いんだなと思います。これからもたくさん経験を積んで、もっともっと素晴らしい演奏を聴かせてほしいですね。きっと彼ならできるに違いありません。


 終演後、皆に囲まれてモテモテの為忠くん♪
 

 上海三泊四日ツアー・その5 08.7.29

 ♪朝から美食♪

 三日目はフリータイム。翌四日目は帰国日なので、今日中にできるだけ沢山の予定をすませておかなくては。しかし夜は同学のコンサートがあるから、それまでに上音に戻らなくてはいけないし。
 
 ホテルで遅めのバイキング式朝食をしっかりたっぷりとった後、黄河路の佳家湯包店へ。目当ては上海の美食のひとつ、小籠包。
 
 豫園商城にも行列ができる店で有名な南翔饅頭店がありますが、この佳家湯包も上海にチェーンが数軒ある有名店です。以前河南路の店に行ったところが一帯の再開発のせいで無くなっていて食べ損ねてしまったため、今回はその屈辱を晴らそうと思いまして。
 
 行列ができていたら、と心配していましたが、丁度タイミングが良かったらしく、相席ではありましたが並ばずに入れました。入口で食券を買い、服務員のお姉さんに渡して席につきます。
 
 注文したのは二種類の小籠包。しばらくすると、ほかほかと蒸気が立ちのぼるセイロを抱えた服務員が、まずは純鮮肉湯包を運んできました。


  佳家湯包の純鮮肉湯包
 
 千切りの生姜をのせた小皿に酢をたらし、小籠包は皮が破れないように上部をそっとつまんでレンゲにのせ、それでちょいと酢をすくってから、おもむろに一口かじって中のスープを啜ります。
 
 熱〜っっ!!シンプルだけど、だからこその美味しさ!! 前日ツアーの食事で出た小籠包とはえらい違い。この美味が7.5元(日本円120円ほど。でも値上がりしたよーな?)で味わえるなんて幸せ〜。
 
 お次は純蟹粉包。最初は81元(約1,300円)という値段にやや躊躇しましたが、出てきたものを見てびっくり。さっきのに比べ、大きさが倍もある・・でも6個だけ?と思ったらちゃんと二段に分かれて入っていました。


  純蟹粉包。ファンタの瓶がまた可愛い♪
 
  中はすべてカニ。外側から蟹味噌のオレンジ色が透けて見えています。とろりとしながらもしつこくなく、こちらも美味〜♪2人ともお腹一杯で店を出た頃には、かなりお客さんが増えていました。ガイドブックには「売り切れじまい」とあったので、行くなら早目の時間帯がよさそうですね。

 ♪上海書城♪

 福州路にある上海書城は、上海で一番大きな書店です。日本でも本屋に入ったら時間を忘れ長居してしまう私、留学時代もよくここで半日過ごしたりしていました。
 
 また、この界隈には外文書店や古籍書店などがあり、歴史や美術などの書籍が充実していて、本好きにはたまらないスポットですね。ただ上記の二店は夕方6時頃に閉まるため、なかなかゆっくり見られないのが難点ですが。
 
 7階建ての上海書城、音楽関係は上階にあるのでエスカレーターを延々と上っていかなくてはなりませんが、このエスカレーターがまた鬱陶しい。
 
 日本ではスムーズに上り下りのエスカレーターがつながっているのが当たり前ですが、中国では例えば上がった後ぐるっと裏側まで半周しないと次の階へ上れない、何故かとても不便な配置になっています。デパート等でも同じで、消費者の利便性をまったく無視していますよね。
 
 さて民楽関係は6階にCDやDVD、7階に楽譜などの書籍があります。昔に比べ民楽関係の比率が低くなってきたものの、初日に行った天天芸術とは違う品揃えで、たまに珍しいモノも手に入るので度々のチェックが欠かせません。
 
 
♪ファストフード店♪

 
探している柳琴の新刊書が見つからないので、南京東路の歩行街にある、もう一軒の上海書城にも足を延ばしてみました。
 
 ・・・が。無くなってる!そういえば歩行街にある小吃の老舗、留学中いつも甘い物を買い食いしていた沈大成も閉店しているし。撤退でなく改装中であることを願っていますが。
 
 疲れて荷物も多いので、世界的ファストフードチェーンの老舗(?)、マクドナルドでしばし休息。日本にはないメニュー、ココナッツパイ(けっこう美味でした♪)を食しました。中国ではケンタッキーなどのファストフード店はどこも人がいっぱい。
 
 実は中国のファストフードって結構値段が高く、メニューによっては「日本の方が安いんでは?」というものもあります。街なかの食堂で小吃を食べている方が絶対安いのに、それでも皆ファストフードに流れて行ってしまう。
 
 そして一番不思議なのは、ご年配の姿が結構多くみられることです。お年寄りのご夫婦が仲良くハンバーガーを食べている光景なんて、日本ではなかなかお目にかかれませんよね(えっ?よくある?)。
 
 確かにジュース一杯で長居できるし、セルフのはずなのに日本と違って食べ終わった後のトレイなどは服務員が片づけてくれるし(この人件費が価格に反映されているのかな?)、居心地がいいのかなあ。
 
 中国人は人に対しては見栄を張って惜しみなくお金を使いますが、自分に関しては割と地味な倹約生活を送っているのが普通でした。だんだんと日本人のように、自分や生活に対してお金をかける人が多くなってきたのでしょうか。


 上海三泊四日ツアー・その4 08.7.22

 ♪一日観光、まずは豫園♪

 ツアー二日目。この日は一日観光が入っています。上海に四年もいたのに今さら観光?って感じですが(笑)、食事付きだし行かない手はないかと。
 
 朝の8時前にホテルを出発し、まずは豫園へ。明代につくられた庭園と、そのまわりに豫園商城、上海老街とよばれる土産物屋をはじめ沢山の商店が並んでいる一帯は、上海の雑多なエネルギーがめいっぱい伝わってくるスポットです。ま、ここにいる人はほとんどが観光客ですけれど。
 
 でもちょっと横にそれると古い家並みがごちゃごちゃと詰まっている路地があり、下町の暮らしがふんだんに感じられる場所でもあります。最近は開発でこういった老房子がどんどん取り壊され、なくなっていくのは寂しいことですね。
 
 さて大昔ツアーで来て以来、十年以上ぶりに足を踏み入れる庭園。江南の庭園はイヤほど見ているので大した感慨はないものの、中国の庭園につきものの奇岩、飾り窓など、もやがかかったうす曇りの空の下では特に美しく見えました。
 
 とにかくどこもかしこも人が多くてエネルギッシュな街の中心に、こんな落ち着いた空間があるのがいいですねえ。入場料が必要ですけど・・いや、だから人が少なくて静かなのか。


  あちこちに植えられた緑が涼しげ(写真はすべて同行のМさん提供)
 

  切り取られた風景が絵画のようです。人がいなければ(笑)
 

  ネコも気持ち良さげに居眠り♪
 
  その後まわりの商城のほか、茶葉博物館やシルク工場などの土産物屋めぐりが設定されているところも格安ツアーならではのお約束。お茶以外何にも買わなかったケチな客で申し訳ないですが(笑)

 ♪七宝観光♪

 上海の近郊には、周荘や西塘、烏鎮、朱家角など昔のたたずまいを残す水郷の村が多数ありますが、七宝もそのひとつ。
 
 こういった水郷に行くには、たいていバスなどで一時間以上かかるのが普通ですが、ガイドさんに聞くと「15分くらいです」とのこと。・・・そんな近いところにあるの!?
 
 ガイドさんの言葉通り、あっという間に七宝に到着しました。入口の門で別れ、30分ほどのフリータイム。時間が短いのであわてて観光です。
 

  狭い路地にも人がいっぱい
 
 ほかの水郷と同じく、狭い路を挟んで商店がずらり。雑貨屋あり、食べ物屋あり、買わずとも見ているだけで楽しいもの。暑いので椰子汁を飲んだり、Gちゃんおすすめの手作り湯圓を食したり。買い食いはいくつになってもトキメキますね♪
 
 ほかの水郷と比べ規模が小さめなので、行って戻ったらもうおしまい。時間があったらもっと路地裏なんかをぶらぶらできたのでしょうが、団体行動なのでそれもかなわず。といいつつ集合時間に数分遅れてしまった私達でしたが。
 
 再び上海に戻り、おしゃれスポット新天地なども観光。この新世界、留学中は「なんて物価が高いところだ」なんて思っていたのですが、日本の金銭感覚にすっかり慣れてしまったのか、以前ほど気にならなくなった自分に驚いたりもして。
 
 四川料理の夕食をすませると、この日の観光はすべて終了。バスでホテルに戻った後、まだ時間があるのでお向かいの大きなスーパーへ行ってみました。
 
 留学時代の日記にも書いたことがありますが、私は大型スーパーが大好き♪その土地の人の暮らしぶりが一番顕著にあらわれる場所だからです。同じ系列のスーパーでも、例えば上海と北京と新疆では売っているものが違いますから。
 
 突っ込みどころ満載の「なにコレ」商品から自分へのお土産まで、Мさんの観光も兼ねながら(?)、閉店間際までこのスーパーで楽しみました。
 
 さあ、翌日三日目は一日フリー&中阮コンサート。気合、はいります。


 上海三泊四日ツアー・その3 08.7.14

 ♪留学生寮を訪ねて♪

 上音を後にし、Sさんと途中合流して共に上音留学生寮へ。Sさんとは日本にいる時からの音楽朋友で、彼女のルームメイトGちゃんも、私の留学時代に何かとお世話になった日本人同学であります。
 
 お二人の部屋にお邪魔しつつ他の同学のところへご挨拶も。それにしても寮も知らない人達ばっかりだなあ。去年はまだ知り合いも沢山いたのに・・・。
 
 ついついお喋りしていると楽しくて時間を忘れてしまいますが、しかしここでほっこりしている場合ではない、早く行かないと次の予定地である書店が閉店してしまうではないか!
 
 慌てて学校近くの「天天芸術」へ。この書店は音楽専門店で、民楽関係の品ぞろえもまあまあ充実しています。私にとって何より嬉しいのは、留学中につくったカードで15%の割引がきくこと。なので他の書店に行く前にまずはここへ来ることにしています。

 
♪中国でもエコバッグ♪

 この日も何のかんのと買い込んで、かばんの中は満杯。日本から持参していたエコバッグがお役立ちです♪
 
 実は条例により、六月一日から商店ではレジ袋を配らないことになったらしいのです(上海だけなのか中国全土なのかは知りませんが・・)。実際、スーパーでも皆さん各自ビニール袋などを持参しています。
 
 日本では声高にエコを叫んでいる割には個人個人がそれを認識しているとはとても思えません。スーパーでは随分マイバッグを持参する人が増えたとはいえ、半分くらいはまだレジ袋を当たり前のように貰っているのを見かけます。
 
 高度成長による大量消費、環境破壊などが問題視されている中国ですが、やるとなったらちゃんと条例を作って市民にそれを徹底させる。これは大きく評価されるべきではないでしょうか。
 
 中国人の知人を見ていると、「勿体ない」意識は日本人より高いように感じます。個人が声高に権利だけを主張するばかりで義務を果たさない日本より、よっぽど先進的にも思えるのですが。・・・まあこの条例に関してのみ、ですけど(笑)。
 
 観光客相手のお土産物店では今までと変わらず紙袋に入れて渡してくれましたが、普通の商店では袋が必要ならお金を出して購入しなければならないので、これから旅行に行かれる方は忘れずにバッグをご持参下さいね。

 ♪至福のマッサージ♪

 いっぱいになったカバン。留学生寮まですぐそこなのに、どんどん重くなっていくようです。夜も遅くなって、早朝からの一日の疲れがどどっとのしかかって来 た感じ。本来ならこの後、GちゃんやSさんとまず食事をするはずだったのですが、時間も遅いのでパスしてマッサージに行くことにしました。
 
 復興路をずっと歩くこと十数分。途中ローソン(上海、多いです〜)に寄ってパンやおでんを買い食いしつつ、Gちゃん御用達の盲人按摩院へ。四人そろって全身マッサージ70分コースを受けることにしました。
 
 頭から足まで、痛いけれど気持ちいい〜! 特にふくらはぎの強烈に痛いこと! 結構歩いたから効きますねえ。按摩師の人たちともお喋りで盛り上がりながら、全身のコリを徹底的にほぐしてもらい、まさに至福の70分でありました♪
 
 しかしその後、地下鉄の終電にもうちょっとのところで間に合わず、遺憾ながらタクシーをつかまえホテルに戻ることに。運ちゃん、あまり楊浦区周辺のことは詳しくないらしく、何度も私に「この辺か?」と確認する始末。私だってこんなとこ初めて来るのに知らんっつーの!
 
 部屋に着くころにはすでに意識がもうろうとしており、ちょろちょろとしか水の出ない、しかも固定式(!!)のシャワーでさらに疲れ、間もなく爆睡。まずは充実した初日・・ということにしておきましょうか。


 上海三泊四日ツアー・その2 08.7.7

 ♪便利な国際ローミング♪

 三泊四日と短い旅程の為、初日とはいえ予定がいっぱい。ホテルの近くで昼食をとったのち、呉強老師にアポをとるため電話。
 
 ホテルの部屋から上海市内への電話(携帯電話も含む)は、ホテルによっては無料でかけ放題なのですが、フロントに確認するとここのホテルは料金を徴収されるそうな。ならば自分の携帯でかけてもあんまり変わらないなあ。
 
 日本で携帯を持つようになってまだ一年余りですが、ちょっと買物に行くくらいでは携帯しなかったりするので(それじゃ携帯じゃないやん! と怒られます)、活用しているとは言い難い有様。が、今回の上海では同学に老師に現地ガイドにと連絡しまくり、大活躍でした。
 
 いちおう国際ローミング機能がついているので、上海に着いたらモードを切り替えるだけで中国国内料金で電話がかけられる。世の中便利になったもんです (但し中国の携帯から、例えば中国人の同学が私にかけようとすると、日本への国際料金が発生するのでちょっと申し訳ないですが)。

 
♪観光もそこそこに♪

 さて呉強老師とは夕方に学校で会う約束を交わし、まずはバスに乗って外灘へ。せっかくだからとMさんとおのぼりさんよろしく観光してみたりして。
 
 があいにく空が曇っていて、東方明珠タワーほか高層ビルには霧がかかり、てっぺんが見えない・・・。滞在中ずっと雨がちな天気で、Mさんは特に明珠タワーに嫌われたらしく、最後まで完全な姿をカメラにおさめることができなかったようで。
 
 南京路をぶらつきつつ、まずは頼まれ物の弦を買いに、いつも立ち寄る老舗楽器店へ。ここも以前は私の顔を見るたびに歓迎してくれた名物経理が定年で退職してしまったりと、顔馴染みが少なくなりつつあり、寂しさを感じます。
 
 なんだかんだとうろうろしているうち、だんだんと老師との約束の時間が迫ってきました。でもその前にもう一件寄らねば!
 
 上音の近く、地下鉄の陝西南路駅の東側出口を降りると茂名南路に出ます。ここは通称(って私が勝手に呼んでるだけですが)チャイナドレス通り。道路の両側に専門店が軒を連ねており、留学中はちょくちょく通っていたものです。
 
 通りの店をあちこち物色したいのは山々なれど、いつもの店に入ってこれまた頼まれた服の修繕を二日後に仕上げてもらうようお願いしたところでタイムリミット! 上音へ急いで行かなくちゃ。
 
 うちの老師、自分はレッスンには平気で30分以上遅れてくるクセに、私が遅れると「モモ、3分遅れよ」なんて眉をひそめて指摘するよーな人だからなぁ(泣)。

 ♪懐かしの上音へ♪

 開校80周年を迎え、あちこち改修して新しくなった上海音楽学院。前回上海に来たときはまだほとんど工事中だったのが、完成されてきれいになっていました。急いでて写真撮るの忘れたため御披露できませんけど・・・。
 
 それでも17階建て(18階だっけ?)教学楼は昔のまま。民楽系のレッスン室がある12階までエレベーターで上がり、そこから留学生の練習室がある13階まで階段で・・・ああ、懐かしい。
 
 指定された1306室に行くと、音楽会を明後日に控えた奏者がピアノ伴奏とのリハ中でした。そーいやこの1306室って昔ずっと私が使ってた練習室だった りする・・。当時明けても暮れても練習していた私の汗と涙が刻まれた1306室、ここを使う者はみな自然と努力家になるのです(ホントかよ)。
 
 その奏者、マレーシアの留学生・蔡為忠くん。私が留学する半年前から上海に来て、進修生から本科生、そして今は大学院の二回生。彼については音楽会のレポでまた詳しく触れますが、彼を交えて老師とおしゃべりすること予定の30分をすぎても全然終わらない・・。
 
 今回日程の都合上、レッスンは無理。でも老師と話をしていると、雑談の中にいろんな考え方や新しい情報が手に入るので、それだけでも十分有意義な時間を過ごせます。
 
 私の方から用意してきた演奏上の疑問点に対する解答と解説もばっちりいただいて、為忠くんの音楽会招待状にメッセージ入りサインも貰い、ほくほく気分で上音を後にしました。
 
 でもこの日の予定はまだ全部終わってません。続きは次回。


 上海三泊四日ツアー・その1 08.6.30

 ♪さあ、上海に・・でも運賃が♪

 このところの原油価格上昇で色んなところに影響がでていますが、航空運賃もそのあおりを受けているもののひとつ。
 
 このたび上海に行こうと思い、格安航空券情報をあちこち調べてみましたが、運賃もさることながら空港税と共に別途支払いが必要な燃油料、これがまた高いんですね。
 
 チケット約5〜6万円に追加料金2万円くらい、その上ホテル代も・・となると一体いくらかかることやら。
 
 さて今回の旅行の主要な目的は、来年に上音の大学院を卒業する、中阮専攻のマレーシア人同学のコンサートを聴きに行くこと。仕事の関係であまり長く滞在できないし、ここはツアーで行く方がはるかに安いんじゃなかろーか。
 
 ということで検索した結果、某H.×.Sの「三泊四日\19,800〜」というツアーを発見。これならば日程も合うし、値段も燃油料や空港税をプラスしたとしても三万円台。ホテル代ももちろん込みの上、一日観光もついているらしい。
 
 ただ、一人だと「一人部屋追加料金」なんていうおかしな規則があって、その値段が\12,000。ツアー代金とほとんど変わらんじゃないか〜。
 
 だいたい中国のホテル代って「ひと部屋いくら」であって「ひとりいくら」ではないはずなのに、この制度は絶対おかしい!!日本の旅行会社はこーいうところで姑息に小銭(いや、大銭だ〜)を稼いでるんですね。
 
 あわてて同行者をつのり、中阮をやっているMさんが急遽参加してくれることになりました。おかげで安くついたのが有難い♪

 ♪格安ツアーはやはり・・♪

 さて当日。もともと午後発の便だったのを追加料金を払い午前便に変更してもらったので、京都在住のМさんと奈良在住の私、朝9:15関空発の飛行機に乗るためには何時に家を出なければならなかったかご想像下さい(泣)
 
 上海到着は現地時間の10:45。乗客が少なかったので、いつもなら列をなす入国審査や預け荷物の受け取りもあっけなく終了。出口には旗を持った現地係員 が迎えに来てくれていました。いつもなら独りでとっとと空港バス乗り場に向かうところを、久々のお客さまモードにちょっと感激♪
 
 ツアーなんだからと、ずっと日本語で押し通すつもりだった私。ところが現地係員(どうやらこの日の係員はガイドではなく、ただのお迎え人員でした)が喋る 日本語を耳にした瞬間、どうも無理そうなことが判明。結局中国語でやりとりしてました。・・・聞けばまだ三か月ほどしか経験がないそうな。送迎だけとはい え・・。
 
 ホテルまでバスで送迎してくれるのも、ツアーのありがたいところ。しかしその場所は・・市の中心からは遠い楊浦区の、しかも地下鉄からはほど遠い、バスし か交通手段のないという不便なところ。こんな中途半端な所にホテルなんて建てて、いったい誰が利用するんだろう。不思議。
 
 幸い上音の日本人同学、Gちゃんが事前にホテルから中心や上音までの交通手段を調べてくれていたので大助かりでしたが、そうでなければ毎回タクシーで移動しなければならないところでした。
 
 翌日の一日観光と最終日の集合時間だけ打ち合わせし、ホテルのチェックインを済ませると、あとは解散。昼飯はツアーに含まれておりませんので自力で・・・。
 
やはり格安ツアーはしょせん格安ツアー。ホテルがとんでもない場所にあろうとも、係員の質が悪かろうとも、仕方がない・・ですよね。がまんがまん。

 東方雅韵・阮&柳琴コンサート   08.2.12

 さて演奏者の情報も何もないままのコンサート。でも「阮・柳琴専場」なんてのは滅多にないし、とりあえず行くことにしようかな。同学達も誘ってみよう。
 
 以前北京の柳琴学会で一緒だった河南省出身の師妹(=妹弟子)、去年から上音で呉強老師に柳琴を習っているのですが、実はこっそり内緒で中阮を別の老師に習っていたりして。
 
 彼女に電話すると「チケット買うのちょっと待って!!老師が近いうちに出演があるって言ってたの、ひょっとしたらそれかも。今晩もう遅いから明日聞いてみるね」。
 
 とはいえコンサートは明日の昼。この時点ですでに期限切れでプレイガイドではチケット購入できず、あとは師妹かダフ屋頼み。全部で四人分のチケット、手に入るんだろうか。
 
 不安になりつつ当日師妹とおちあうと、開口一番「モモ聞いて!老師がチケット2枚くれるって!!」やったあ♪でもちょっと待てよ、彼女の中阮の老師って確か・・劉波・・うわぁ。
 
 劉波。阮弾きなら知らない者はいない演奏家。その昔、上音初の阮専攻の卒業生で、現在は上海民族楽団で活躍されています。ちなみに御主人は最近お亡くなりになった笛子演奏家、兪遜發だったりする・・。
 
 無事チケットも手に入れ、会場で配られたプログラムを見ると、やっぱり阮は劉波の独奏。柳琴は・・許暁蕾。確か最近に上海民族楽団に来た奏者だったような。
 
 許暁蕾は瀋陽音楽学院出身で、周常花の弟子らしい。劉波も周常花も師匠は林吉良だし、その辺のつながりかな? 何にせよ、期待せずに来たコンサートの割には楽しめそう♪


  浦東にある東方芸術中心
 
  一曲目は柳琴の「木綿花開」。この曲は開始から凄まじい勢いでガンガンたたみかけていく、オープニングに相応しい曲です・・が。勢いが過ぎて二弦目がゆるんでしまった!
 
 あちゃ〜。伴奏があれば間奏の間に調弦できるけれど、伴奏なしのため間奏部分まで全部独りで弾いているので直すヒマがない。動揺が演奏にも影響してしまい、ちょっと可哀想。でも最後まで止まらず弾き通しました。
 
 二曲目は中阮の「松風寒」。劉波のナマ「松風寒」が聴けるなんて嬉しいなあ。家にこの曲が収録されたCDはいくつか持っていますが、どのテイクも全く違っていて面白いのです。
 
 この「松風寒」は唐詩を題材に古琴の手法を模倣した曲で、劉波の演奏は(テイクにもよりますが)他の人に比べいい味出してますね。彼女の演奏は激しさや鋭さにやや欠けますが、懐の広い、深い感じが持ち味だと常々思っています。
 
 しかしこの日の「松風寒」は・・ちょっとあっさりで物足りなかったなあ。まあ登場一曲目だし、劉波が一人でМCをやっていたのもあり、曲の世界に入り込みにくかったのかも?洞簫の伴奏は広がりがあってよくサポートしていたのですが。
 
あとのプログラムは、次の通り。
・「剣器」(柳琴)
・「臨安遺恨(=満江紅)」(中阮)
・「絲路駝鈴」(大阮)
・「雲南回憶・第一楽章」(中阮)
・「ツィゴイネルワイゼン」(柳琴)
・「潮郷行」(中阮)
 

  許暁蕾の剣器(以下、演奏写真はH同学提供)
 

  劉波の絲路駝鈴
 
 柳琴は二曲目からは自分のペースを取り戻したようですが、全曲無伴奏なのはツラい。「剣器」はもともと無伴奏であるべき曲ですが、「ツィゴイネルワイゼン」はピアノ伴奏があった方が引き立つし、最後にふさわしい感じがするのに。
 
 「臨安遺恨」は逆にピアノ伴奏があまりにひどく、引き立てるどころか落としてました。あまり中国音楽を理解していない伴奏者だったようで、合わせもほとんどやっていない様子。大阮の「絲路駝鈴」も劉波の十八番なのに、今日は慢板と快板の対比がいまいちでした。
 
 「雲南回憶」は劉波ではなく、韓雪という学生の演奏。あれ?韓雪は呉強老師の学生だったはずなのに、何で劉波の演奏会に出てるの?・・後で同学に尋ねると、今季から劉波の学生になったそうで、その辺りの経緯をこと細かく話してくれました。う〜ん色々あるのね・・。
 
 「潮郷行」は噂には聞いていたけど、聴くのはお初。中阮の二重奏で、上海民族楽団の伴奏でした。アンサンブルであっても楽隊が入るとやはり豪華ですね。


 中阮二重奏
 
 劉波はもちろん、許暁蕾もちゃんとした奏者だし、選曲も問題ないし、本来ならとてもいいコンサートができたはず。でも実際は不満足感が残り、ずっしりとした手応えのない、スカスカな内容になってしまいました。
 
 これはもう準備不足の一言に尽きると思います。最後の「潮郷行」はそれなりに練習したのでしょうが、あとの曲に関しては「いつも弾いているレパートリー曲を特にコンサート用に練習することなくそのまま弾いた」感じ。
 
 許暁蕾はちょっと頑張ってた気もしますが、ただそのまま弾くのではなく、伴奏を入れる等の「聴かせる工夫」があれば大分違うのに。その辺は劉波の方が慣れているようですね。(でもピアノ伴奏はひどかった・・)
 
 せっかくの良い素材でも、下ごしらえに手を抜いたり調理方法が良くなかったり盛り付けが美しくないことにより、料理を不味くしてしまう。勿体ないことです。
 
 まあ日本ではその逆の、素材がそんなに良くなくともうまく見せるのも多いようですが・・観客は本場の味を知らないですからね。

 コンサート情報といっても    08.1.28

 明けましておめでとうございます。・・ってもう1月も終わりかけていますが(汗)。
 
 年の初めから古いネタで申し訳ないのですが、昨年秋に上海に訪問した際、ちょうど芸術祭の時期で、あちこちで大小さまざまなコンサートが開催されておりました。民楽のコンサートにもいくつか行ってまいりましたので、ちょっとご紹介したいと思います。が、その前に・・・。
 
 以前、中国(少なくとも上海では)の、特に民楽のコンサートは情報が少なく、情報というとほとんど口コミでした。宣伝する気あんの?というくらいポスターやチラシなんて作っていませんし。仮にチラシがあったとしても当日会場でもらったりとか。宣伝になってないでしょそれじゃ。
 
 それでも近頃は便利になり、インターネットで海外の情報も簡単に手に入るようになりました。コンサート情報も専門のサイトがあり、中国も大都市なら結構たくさんの情報が載っています。ネットでチケット購入できるものもありますしね。
 
★上海文化信息 http://www.culture.sh.cn/
 
 海外のコンサート情報といえば、このオフィス・エーの「催し情報」ページにも載せられているので参考にされている方も多いと思いますが、上記のサイトでは上海で開催される催しが沢山載っていて、月日や会場検索もできるので、旅行者には便利なサイトだと思います。
 
 上海へ旅行する前に、まず期間中のコンサートをチェック。引っかかったのが「東方雅韻〜民楽精品系列音楽会」。民楽の大物がぞくぞくと登場!・・みたいなことが書かれていて、期待度超特大!!
 
 ちなみに。中国(少なくとも上海では)でコンサートを指す言葉は「音楽会」。では日本のように「演奏会」とは言わないのかというと、日本とはちょっとニュアンスが違うようです。
 
 以前同学が「今度演奏会で弾くんだけど、聴きにおいでよ!」と言うのでコンサートで独奏でも弾くのかと思い、当日いそいそと出向いてみると何のことはない、狭い教室の一室で行われる、本科生達の中間実技試験でした。これが「演奏会」!?
 
 「演奏会」とは発表会を含む、規模のあまり大きくない、入場料をとらない、非公式のコンサート、という感じ(・・みたいです)。
 
 「音楽会」はそれとは違い、正式なコンサートのことを指すようです。昔は私には違いがわからなかったので混用していて、後になって周りのけげんな顔が理解できました。まあ言葉に関する失敗は他にも山ほどありますが、それはまたの機会に(笑)。
 
 さて「東方雅韻」。ちょうど私が上海に行く期間、「柳琴&中阮」「箏、簫専場」という二つのコンサートが開催されるようです。やったぁ!!特に前者は単独でさえめったにお耳にかかれない(学校以外はね)、柳琴と中阮のナマ独奏っぽいではないですか。


  会場でしか手に入らないチラシ
 
 しかし詳細を検索しても、柳琴や阮の楽器説明みたいなのがあるだけで、演奏者が誰か書いてないじゃん!!上海だし、中阮といえば劉波?いや、そんな大物だったら名前くらい載せるのでは・・?
 
 じゃやっぱりどこぞの少年宮の無名教師クラス?下手すると少年宮のお子ちゃま達の楽団??でもそんな演奏にあまり高いお金出してチケット買いたくないぞ。
 
 上海に到着したのち、呉強老師や同学に尋ねてみても、誰もコンサートの事すら知りません。同じ専門楽器の業界なのに!
 
 中国人は自分の身内が出演するコンサートしか興味ないんでしょうかねえ。だから宣伝しても集客力アップに何の効果もないんだろか。
 
 プレイガイドサイトや会場などあちこちに直接電話をかけてみましたが、やっぱり誰も何も知りませんでした。まあ、電話を受けた係員も、誰が仔細を把握しているか知らないんでしょうね。
 
 ・・てな訳で、便利になったといっても肝心なところで必要な情報は手に入らず、結局は当日直接会場に行って確かめるしかありませんでした。続きは次回。

(02.10.29)
  
 皆様こんにちは。

 日記、ずっとサボっていてごめんなさい。忙しく日々が過ぎてしまって、気がつくと上海に戻って来てはや2ヶ月経ってしまいました。古くなってしまって、とても書けないネタが増えつつあります。これからは頑張って書きますね〜。

「新鑑真号の船旅」
  
 長い夏休みが終わって、再び上海へ。しかし皆様御存知の通り、飛行機のチケットというのは、夏はとても高額です。しかも半年オープンのチケットなんて買おうもんなら・・。いろいろ考えた結果、時間はかかるけれどとにかく安い!!ということで、船で上海に戻る事にしました。

 上海・大阪間には、新鑑真号と蘇州号という2種類の船が往来していて、それぞれ入港日が違うだけで、値段も大差ありません。蘇州号の方が部屋のランク数が多い様ですが、一番安い二等船室はどちらも20,000円。往復だと、復路はその半額だから合計30,000円、しかも1年オープンなのです。学生だとなんと往復27,000円なんですよ〜。

 飛行機の半額以下ではありませんか。おまけに今回荷物がとても多くて、飛行機だと超過料金とられかねない、もしくは楽器類などの手荷物も飛行機に持ち込めない可能性がありました。船だとかなり制限がゆるいので、そういう心配がありません。

 とはいえ、ほんとに荷物がすごく多くて、心配した友人が家から港まで車で送ってくれました。そしてもう一人の友人とに見送られながら、船上の人となり・・。
 
 当日はすごく良い天気で、波止場と船の白さがとてもまぶしく、ちらほらとではあるけれど見送りの人が見守る中、汽笛を鳴らしながら徐々に港から離れてゆく船、そして視界からだんだんと遠ざかって行く港・・・。なんというか、感動的な、絵になる光景でした。船って、飛行機よりも旅情をかき立てられるもんですね。そういえば紙テープを準備していた人達がいましたが、いかにもって感じで良かったなあ。次回試してみようかな。さらなる感動が味わえるかも。

○食事は安くてなかなかうまい

乗船して、まずロビーでチェックイン。番号札を渡され、各自の部屋へ。私は二等の洋室を予約していて、8人部屋二段ベッドの上段でした。部屋はやはりというかとても小さくて、ベッドと狭い通路があるのみ。身長の高い私にとってはベッドも小さいよ〜。女性の私でこんなだから、男性や欧米人だともっと窮屈でしょうね。

 そして船内探検に。まずトイレ・シャワー室の確認。お、思ったより広いし綺麗。ついでに二等和室ものぞいてみるととても広くて、荷物の多い私にはこちらの方が良かったのかも。その他ひと通り行ってみましたが、全体的にとても新しくて清潔でなかなか良い感じ。

 お昼どき、食事のアナウンスがあり、みなさんぞろぞろと食堂へ。基本的に朝食は運賃に含まれていますが、昼・夕食代は自分持ちです。食堂のカウンターには色々な料理が並べられており、各自好きなものを選んで取って、最後にレジで精算する仕組み。おかず類もひどく高いというわけではなく、一品250〜350円程度。量も結構あるので、いろいろ取りさえしなければ一食500円以内で十分おさまりそうです。メニューも毎回変わるし、味も悪くありません。夜食メニューなんかもあり、なかなかサービスが行き届いています。

 しかし独りだと何もすることがなくて退屈〜。ずっとデッキでぼんやり海を眺めていました。最初は海や空や風、何もかもすべてが新鮮でしたが、そのうちそれが苦痛に・・。目が悪いので本も読めないし。楽器でも弾けば良かったかしらん(笑)。


上海へ向かう新鑑真号(パンフレットより)

○船客は元気いっぱいでうらやましい

 1日目の夕方あたりから揺れ始め、船内をまっすぐに歩けない状態に。だんだん気持ち悪くなってきて、ベッドで休息。揺れは2日目の昼過ぎまで続き、その間ひたすら寝ていました。これが船酔いというものなのですね。実は船に乗ったの初めてだったので。その後は揺れもおさまり、上海に到着するまでずっと快適でした。吐くほど苦しくならなくてよかった。以前聞いた話によると、台風接近で大揺れの時、誰も食事が取れないほどひどくて、でもどうにか食堂に辿り着いたら、コックさんもゲロゲロやっていて食事が出なかったそうな・・。

 今回、鑑真号のキャンペーンで、往復チケット+初日のホテル一泊付きのフリーツアーに参加している人がとても多くて、学生さんから社会人まで、皆さん色々と楽しく情報交換されていました。上海を起点に北京やモンゴルに行ったりする人達もいて、言葉ができなくてもバイタリティあふれてますね。ああ、若さがまぶしい・・。

 1年も上海にすんでいると、中国に対する新鮮な気持ちがどんどん失われていくような気がします。旅行者と生活者の視点の違いというのかな。私も1年前はあんなだったかもしれません。

 最後の夜は、船内パーティーなんぞあったようです。そんなん誰が行くの?なんて思っていましたがどっこい、なかなか盛況だったようで、食堂には人があふれかえっていました。やっぱりみんな退屈だったのかなあ。長い間カラオケで盛り上がっていましたよ。

 3日目の朝、ようやく上海に到着。しかし接岸してから下船までが長い長い。下船前、「船内でビザを申請した人たちは集合して下さい」とアナウンスがありましたが、実際ビザを手にするまで随分時間がかかっていました。普通、アナウンスがあったら、もう準備できているのだと思うでしょ?やはりその辺りは中国、段取りという言葉を知らないお国柄なのでどうしようもない・・。

 二泊三日の初めての船旅は、やっぱり独りだと疲れましたねぇ。人と一緒だと、きっと楽しく過ごせるでしょうけど。うーん、次回帰国は飛行機かな?
 

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