無錫市梅村ー二胡の故郷
盲目の音楽家として名高い阿炳(本名:華彦鈞)は中国江蘇省無錫市生れですが、この無錫はまた民族楽器の二胡の生産でも有名です。
2022年4月、江南晩報はこの無錫で「二胡の故郷」と呼ばれている梅村の実情をルポしています。
無錫では古くから二胡の生産はおこなわれていましたが、1965年無錫郊外南東部にある梅村で民族楽器工場が設立されたことで新たな歴史を歩み始めます。万其興と陸林生という2人の青年が蘇州で学び、帰郷してこの無錫で二胡の製作を開始したことです。
江南晩報はそれらの工房の1つである「古月楽坊」の主宰者、朴広軍を取材しています。この工房では毎年5000本余りの二胡を生産し、国内だけでなくシンガポールや日本にも輸出しています。
二胡は胴体に軸をはめ込み、胴に皮を張り弦を張り渡すというシンプルな構造をしていますが、その製造過程は200以上あり、一つ一つを丁寧に仕上げなければなりません。材料の選定では、紫檀や黒檀など貴重な材料の板一枚一枚を叩いたり匂いを嗅いだりします。材料に含まれている水分や油分の量で響きが違うからです。
また胴に貼る蛇皮は、模様や厚みが楽器の音色に影響するため重要な材料です。5,6mの長さの蛇皮の中から最高級の1,2枚を選び出す眼力が必要です。蛇の皮を削ること、これは作業の中でも肉体的・技術的にも大変な仕事で、皮を削るヤスリの角度と力の入れ方が非常に重要となります。
二胡奏者にはそれぞれ個性と好みがあり、伝統的な二胡の音を好む奏者もいれば、若い奏者も増えては現代的要素を加え演奏方法も多様化しています。伝統を守りつつ現代的スタイルで演奏できる二胡の製作が工房の新たな発展にもつながります。
梅村はまだまだ発展期にあり、二胡の生産量は増えていると江南晩報は伝えます。現在、梅村にある二胡工房は20件に達し、そのほとんどが父から子へ、子から孫へと受け継がれてきた家族経営の工房です。梅村は「二胡の故郷」として、伝統を受け継ぎ新たな発展を目指しています。
(22.06.08 記)
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