ホーム 新着情報 月下独酌 中国音楽フェスティバル 中国・音楽の旅  中国香港台湾催し案内
アジア音楽演奏会紹介 モモの音楽日記  アジアの微笑み 上海コレクション 演奏家の世界

上海あれこれ

 上海あれこれI 04.12.20

「中国共産党第1回全国大会址」


  上海の繁華街である淮海中路の南側、淮海公園の近くに新天地という地域があります。香港資本を導入した再開発で、レンガを積み重ねた独特の民家建築である「石庫門」を改造し、そこにブティックやバー、レストラン、映画館などの施設を集中させた地域です。ガイドブックにも大きく載っていて、上海市民だけでなく観光客も買い物や食事に訪れる新名所です。

 そんな新天地の一角に現代中国にとって貴重な建物があります。一大会址:中国共産党第1回全国代表大会址です。1921年7月23日、上海市望志路106号(現在の興業路76号)のこの建物で、中国共産党第1回全国代表大会が開かれました。のちに党を代表することになる毛沢東ら13人が参加した大会は、官憲の捜査の手が伸びたことで最後は上海を離れ、浙江省嘉興南湖に浮かべた船の中で会議を続行したと伝えられています。

 早くから西洋諸外国が進出してきたこともあり、産業労働者が生まれまた知識人が集まってきた上海は、抗日の歴史においてもさまざまに名前をとどめていますし、文化大革命の時期でもいわゆる4人組の拠点として有名でした。また改革開放の流れを一挙に加速したのも上海の発展があってこそでしょう。

、つまり上海は中国と中国共産党の歴史にとっても節目節目に大きな役割を果たした都市であったのです。いま仕事であれ観光であれ上海を訪れて食事や買い物をしていると、どこの国にいるか一瞬わからないことがあります。つまり制限なく街を歩き好きなように活動できるという意味です。しかし中国は中華人民共和国の名が示すとおり、あくまで社会主義の国であり、中国共産党が統治をしている国なのです。

                   共産党第1回全国代表大会址

 ですから歴史においても中国共産党の闘争が現代中国史となると考えていいでしょう。なぜこんなことを強調するかというと、05年が「反法西斯(反ファシズム)戦争勝利60周年」の年であり、中国にとっては抗日戦に勝利した祝いをする記念年でもあるからです。日中全面戦争の発端となった北京郊外の蘆溝橋にある中国人民抗日記念館は、記念年にあたって子供達に教育を行えるよう全面改装をはじめた、というニュースもすでに伝わっています。

 上海も例外ではなく、日中戦争の故地で様々なセレモニーが行われるでしょう。経済的には熱くとも政治的には冷たいといわれる今の日中関係ですが、中国科学院が最近発表した中国人の日本に対して持つ感情の調査でも、日本に対して親近感を抱いているがわずか6%、親近感を抱いていないが54%を占め、2年前に比べると10%近く上がっているとの結果が出ています。「日本は侵略の歴史を反省していない」がその理由の6割を占めているとのことです。

 つまり屈託なく振舞うのはかまわないとしても、隣国の歴史や政情、そして起こりうる問題を常に意識しておくことが必要ということです。にぎやかな新天地の中にある一大会址。一度はここを訪ねて、反映の裏側にある厳しさというものをなどを経験してもいいかもしれません。
  

 上海あれこれH 04.9.17

「秋から本格化・上海万国博覧会の話題」

 
 万国博覧会と聞くと何か懐かしい気がします。1970年の大阪万博の印象が強いからですが、実は05年には愛知万博が予定されています。愛・地球博「自然の叡知」がテーマですが、残念ながらその規模や国内外の注目度は愛知を飛び越して、10年に開かれる上海万博に向いているようです。

 02年10月に開催が決定した上海万博は、10年5月1日から半年間開かれます。テーマは「よりよい都市、よりよい生活」で、入場予定者も7000万人と愛知万博の1500人の4倍以上です。都市生活そのものをテーマにし、今年秋には実施基本案が選定され、その後マスタープラン作成から実際の工事にかかります。

 会場予定地は上海市内を流れる黄浦江にかかる南浦大橋と盧浦大橋の間の地区約400ヘクタールです。上海市の南東部に当たる今でも住民が普通に暮らしている地区で、大阪でいえば淀川のすぐ縁で開くようなものでしょうか。

 上海万博は08年の北京オリンピックとともに中国経済発展の新たな起爆剤として期待されています。日本のある経済研究所の試算によると、総投資が300億元(約4000億円)で、投資と消費・観光収入の最終的な国内生産増加額は2000億元を超え、10年にはGDPを0.47%押し上げるとの数字が出ています。北京オリンピックと上海万博で10年まで年間8%を超える経済成長が続くということなのでしょうが、果たしてその目論見どおりになるのでしょうか。

                   万博予定地近くの盧浦大橋

  上海万博の予定地には造船所から鉄工所などの工場、それにアパートなどがあり現在多くの市民が生活を営んでいます。それを一挙に立ち退きさせるわけですから、たとえ代替地が与えられても2万〜3万の人の生活み影響するわけです。

 また今回は都市がメインテーマとなっていますが、上海市は市街地の再開発の一環として万博を利用しようとしているわけです。実はこれは万博の理念と少し違うもので、国際万博のパビリオンは博覧会後撤収が定められているのですが、どうも市当局は博覧会の建物を最大限利用しようと考えているようなのです。

 実施計画コンペに参加した日本の設計事務所によると、中国での国際コンペは必ずしも設計者を決めるためではないようで、外資の引き入れや資金を引き出すための手段に使われるようです。ですから設計もデザイン重視(突飛なデザインが審査員に受ける)になるそうです。

 さらに著作権の問題が出てきます。万博で出たアイデアを上海の都市計画に生かそうということですが、設計者の許可を得なければならないデザインなどがそのまま都市再開発に利用されてしまうのではないかとの危惧があります。知的所有権保護の遅れの問題です。

 いずれにせよ市民生活には大きな影響を与えます。大阪万博での「宴のあと」を知る日本は果たしてその教訓を伝えることができるのでしょうか。
   

 上海あれこれG 04.8.20

「過渡期を迎える教育事情」

 愛国教育、反日教育という言葉がこの夏日本のマスコミをにぎわしました。中国で開かれたサッカーアジアカップで、日本チームに対して中国人観衆が徹底したブーイングをしたり物を投げつけたりと失礼な態度を示したことについて、中国での特別な教育がその原因のひとつではないかと取り上げられたものです。確かに中国では特定の何かを対象にキャンペーンを張ることはよくあることです。

 もちろんどの国でも特別な教育は行われますし、中国でも一部がそれにのって過激な言動を行うこともありますが、それはやはり少数派で、いま教育で言えばむしろ制度が過渡期を迎えていることが問題かもしれません。

 6月は中国の受験シーズンで、夏休みを経て9月が新学期となります。開放経済の中ではどの大学を卒業したかということが就職に響き、給与ひいては生活水準にも影響しますから、学生も親もいい大学に受かるために必死です。
 
 かつての中国では分配という形で卒業生の仕事が決められていましたが、今では私企業が中心で就職も自由になりました。しかしこれは諸刃の剣で、能力がないとどこにも就職できないという事も起きるわけです。国家・省などの直轄大学卒業生の就職率は8割を超えますが、それが地方の大学になると5割前後におちこんでいるそうで、毎年30万人から40万人が未就職となっています。

 大学受験がこうですから、小学校、中学校への受験勉強も熾烈になっています。中国の受験熱はいまや日本を凌駕しているといってもいいと思います。

                   上海と台北の姉妹校

 最近ニュースに台湾企業が上海の学校給食に参入というのがありました。上海の小中学校の80%が給食を利用していますが、地元企業では品質の問題があるということで、台湾のファーストフード企業が運営の許可を申請しているということです。学校の運営や教育内容も国家の一元的な管理が行われていた中国で、教育も市場化のあおりで変化しているということです。

 上海市では最近私立の学校が増えています。上海の中心部・淮海路の近くに上海市民辧という名を冠した小学校がありますが、そこは台湾の私立学校と姉妹提携を結んでいます。正門に大きく姉妹校「台北私立圭山学校」と看板が掲げられています。また親も車で来る人が多いのでしょうか、駐車場はこちらと案内図もありました。

 校庭では先生が子供達に武術の型を教えています。知力と共に体力も特に鍛えようというのでしょう。校庭では何人かの親と思われる人がじっとその様子を見つめています。私立は学費が高くなりますが、型どおりにはまらない教育を子供に受けさせたいということや、熾烈な大学受験競争を勝ち抜かせたいという思いがあるのでしょう。家庭の裕福さの違いが子供の教育にも影響してきます。

  一方、ある立中学校では、校内へ至る通路の両側には学校がいかに学業に尽くし、また海外との交流も積極的にはたしているかということを訴える掲示板があります。優秀な教師を写真で紹介しているし、上級学校などへの進学率なども表示しています。つまり公立学校というだけで受身の態度で経営していては優秀な生徒は集まらず、営業努力をしなければならないということなのでしょう。

 このように学校の運営が変わったとき、果たして愛国教育はどうなるのでしょうか。
   

 上海あれこれF 04.5.31

「旺盛な消費が経済を支える」


  5月1日から1週間は中国の黄金週間で、今年も旅行や買い物でにぎわったようです。その人出の多さは日本の黄金週間をはるかにしのぐもので、観光地だけでなく上海などの大都市へも近郊の人々が集まってきますので、どこでも人、人、人の波で、交通も大渋滞です。この時期日本からの中国への旅行は避けたほうが賢明でしょう(もうひとつは10月1日からの中国・国慶節の連休です)。

 遠くへ旅行に行かない人々は身近なレジャーということで、公園に行ったり家族で食事に出かけたりするようですが、やはりここぞとばかりに買い物に励む人も多いようです。特に上海はブランド品も揃えられますから、地方からの観光客も多いのです。

 経済都市上海はやはり一大消費都市であるともいえます。上海市統計局がこのほど発表した家計支出状況よると上海市民の03年の家計支出は1人当たり平均1万4867元で、前年と比較すると12.2%の増加です。そのうち食費の消費は4103元で、エンゲル係数にすると37.2%、前年比2.2%の減少となっています。一方で特に服飾関係の支出の増加が目立ち、1人当たりの平均は751元になっています。その他の内訳では通信費が499元、教育費は937元、娯楽費は41元となっています。


                   ユニクロの店

  全体として支出が多くなっており、食費のほか文化や趣味を楽しむことにお金を使っていることがよくわかります。そしてそんな支出を刺激するのが次々と建築される商業ビルや大型スーパーなどです。
 
 浦東地区に昨年建設された「正大広場」というビルがあります。香港資本の商業ビルですが、ブランド服飾店、食料品店、のほかレストランやマルチ映画館も備えています。映画は例えば黒客帝国(マトリックス)などハリウッドの最新映画が上映されます。つまりこのビルに入ると買い物だけではなく食事や娯楽など全ての欲求が満たされるというわけです。

 一方散歩がてらに買い物を楽しもうという人は、優衣庫(ユニクロ)でTシャツを買い、美仕唐納滋(ミスタードーナッツ)でコーヒーでも飲もうかということになるでしょう。また家族連れはフランスの大型スーパー・家楽福(カルフール)で一週間分のまとめ買いとそれぞれ楽しめます。もちろん地元の百貨店やスーパーに香港系、台湾系と入り乱れて商戦は激しく、逆にい言えば選択の幅は大きいということです。

 旺盛な消費が経済を支えているともいえますが、一方でニセブランド品や劣悪商品を売るといった問題も生まれています。上海では上海市消費者権益保護委員会が新たに設置されることになりましたが、今後どれだけ消費者の保護をおこなうことができるのかが健全な消費社会を生み出す試金石にもなると思います。

 特に問題になっている健康食品や不動産、住宅内装、通信などでクレームが多いということですが、はたして納得のいく監督を強化していけるでしょうか。 

  

 上海あれこれE 04.4.1

「麻薬の蔓延に対抗する青少年教育」


  04年1月末春節でにぎわう広州駅で、500グラムの麻薬を持っていた男が警察に逮捕されたというニュースが中国新聞紙上をにぎわしました。今年最初の多量麻薬所持ということで注目されたのですが、麻薬(大麻、コカイン、マリファナなど全ての薬物を総称する)の蔓延は中国の大きな悩みとなっています。

 麻薬の蔓延がマフィアなど地下経済を潤すだけではなく、エイズの感染拡大にも関係しているからです。中国のエイズ感染者数は80万人とも100万人ともいわれていますが、その感染源で大きなものが薬物注射です。麻薬常用などで患者が注射針を共用し、そこから感染していく人が多いわけです。ですから麻薬禁止(中国語では禁毒)の宣伝活動では、エイズ予防も同時に呼びかけるキャンペーン内容となっています。 
 
 しかしそれ以上に問題なのがこの麻薬が青年層に広まりつつあるということです。例えば上海市・北海中学は昨年6月26日の国際反麻薬デーの全国宣伝活動の一環として、「麻薬に近寄らない」活動が行われました。一年生のあるクラスでは生徒が同級生に「遠離毒品(麻薬に近寄らない)」と書いた自作の漫画を見せ、みんなの前で決意を示したそうです。この学校ではすでに六年間反麻薬教育をおこなっており、各学期ごとにも必ず一回の活動が行われます。

                   禁毒教育館入り口にある前言

 こんな状況ですから上海市当局も本腰を入れはじめています。これまでのそんな学校だけの教育では不十分と考えたのでしょうか、6月27日に「上海市禁毒教育館」が新たに開かれたのです。上海駅から地下鉄で南へ一駅、漢中路に上海青年教育活動中心(センター)があるのですが、その4階に設置されました。開館式には陳良宇・上海市党委員会書記も出席し、子供達と一緒に展示を見て回るという力の入れようです。

 もともとこの活動センターは上海市の若者の教育活動の中心にしようということから会議室や、展覧室、図書室などがあり、また青年文化培訓学校(訓練学校)などもあって教育機能も果たすようになっています。もちろん企業が入るビルなどと比べて大規模なものではありませんが、入場料無料で麻薬の恐ろしさを訴えるパネル展示などの宣伝につとめています。

 中国では麻薬製造、販売や所持、使用はもちろん厳しく罰せられます。90年の全国人民代表大会で定められた「禁毒決定」では、最高刑は死刑となっています。裁判即決死刑となる場合もあり、国は厳罰に処する姿勢を示していますが、なかなか犯罪は減りません。

 上海はいま開発優先で都市基盤整備など土木工事にどうしても予算が回される状況ですが、麻薬対策を進めるならばどれだけ教育方面にお金を使うことができるのか、どれだけ教育内容を豊かにしていけるのか、が大きなカギになりそうです。
  

 上海あれこれD 04.1.30

「快適な1日はやはりトイレから」


  生活に必要なことは多々ありますが、食べることと寝ること以外に大切なことといえば、個人的な差はありますがやはり「排泄行為」ということになるでしょうか。

 中国旅行もいいけれどトイレが、という人が多かったというのも事実です。日本では水洗トイレの“個室”でゆっくりいうのが普通です。しかしホテルなど宿泊施設以外で、中国に来て戸惑うのが公衆トイレです。「トイレにドアがない」ことが最大の理由です。通常はドアはなくても仕切りがあるんですが、田舎のほうに行けばこの仕切りもなく、溝をまたいで顔を突き合わすということにもなりかねません。

 かつてはこんな話がありました。日本の観光客のグループが旅の途中でトイレに行ったとき、なかなか帰ってこないのでガイドが観に行ったところ、その理由がわかったそうです。つまり公衆トイレには4〜5人が入れるほどの空間があるのですが、恥ずかしいからということか一度には入らず1人が出てからやっと次の人という方法で、それで時間がかかったということです。

 これが生理的に耐えられないという人もいます。しかし中国人から見れば逆に日本人の感覚が理解できないようです。その例が大衆浴場です。不特定の他人に平気で自分の体をさらしているのに、お尻を出すくらいで何で騒がなくてはならないのか、というところでしょう。
 

                   きれいなトイレは当たり前

  しかし上海においては以上のような光景はなくなりつつあります。商業施設の増加など観光客を多く受け入れる政策も重なって、公衆トイレが新しくなってきたからです。中国では公衆トイレは基本的に有料で、かつて五角程度のものが今は一元と値段が上がったこともありますが、新しいトイレはちゃんとドアがあります。掃除も頻繁におこなっているのでしょうか、においも気になりません。

 上海に来た観光客が必ずといっていいほど見学に来る外灘。ここに新しくできた公衆トイレは外観も白塗りの壁でスマートに作られ、中は手前が“小”、奥が“大”のスペースで、きちんとドアがありきれいに磨いています。また観光客が集まる場所では移動式簡易トイレも置かれるようになりました。ドアの横に一元コインを入れる穴があり、そこにコインをいれて使用するというものです。

 トイレがきれいなレストランがはやるのは今や常識でもあり、こんなところにも上海の意気込みが現れているのでしょう。
 

 上海あれこれC 03.12.3

「全国最初の神舟5号展示」


 11月12日上海展覧センターで中国初の有人飛行士・楊利偉を招いた有人宇宙船打ち上げ報告集会が開かれ、陳良宇・党書記ら上海各界代表に熱烈な歓迎を受けました。同時に上海科学技術館でオールナイトの宇宙飛行展が開かれ、実際に彼が乗った帰還船や宇宙飛行服、宇宙食などが展示されました。通常は60元の入場料がかかるところが無料で、宇宙飛行の成果を見ようと多くの市民が駆けつけました。

 上海科学技術館は上海市の東、上海市の中心を流れる黄浦江の東側ということで浦東地区といいますが、その浦東地区にあります。浦東地区は上海市の新たな発展に伴って開発された地区で、高層マンションや商業ビルが続々と建設されています。科学技術館は総建物面積9万u、天地、生命、智恵、創造、未来を基本展示テーマとした一大イベント館です。

 「中国首次載人航天飛行展」―中国で最初の有人宇宙飛行展―と題されたのは、10月15日に中国が打ち上げた有人宇宙船・神舟五号の展示会です。上海の科学部門や研究者も多く宇宙飛行船打ち上げに関係しており、またやはり上海という街が注目されると政府も判断したんでしょうか、上海でこそ何事も一番と全国で最初の宇宙飛行展が開かれたということは、上海人の心をくすぐったことでしょう。

 
                   帰還船の展示

 内モンゴルの草原に着陸した本物の帰還船や、宇宙服、パラシュート、宇宙食などが展示されました。宇宙船の実物が次に展示されたのは、11月24日に北京で開幕した中国国際宇宙技術展でですから、いかに上海が優遇されたのかがわかります。

 会場ではロケットの実験開発からミサイル、そして宇宙船の打ち上げと中国のロケット開発史の展示や、中国初の有人飛行士・楊利偉が宇宙で撮影した地球の姿のビデオ放送などもありました。宇宙食が入っているアルミ包装の上には、チョコレートやチャーシューなどの表示がありました。楊利偉が宇宙で振った中国国旗も展示され、あらためて上海市民の愛国心、民族魂を刺激したものでしょう。

 現地の新聞では楊利偉が上海明珠塔(テレビタワー)を見学した時に、「中国で一番高いところを飛行した人が上海の最高峰に登った」と彼に託して上海の素晴らしさを記事にしました。やっぱり上海人は自慢好きということがこれでもわかります。
 

 上海あれこれB 03.10.3

「週末は水郷景色の郊外へ」


  上海近郊の江南の水郷景色が今人気になっています。昔ながらの家屋が残っている街に水路が網の目のように流れ、日陰に入って眺めているとそよ風が頬をなで、ゆっくりと時間が流れる、そんな穏やかな気持ちになれるからでしょう。

 週休2日制の普及、高速道路の発達で観光が便利になったこともあり、週末にもなると多くの上海人が郊外に出かけます。 そんな郊外の水郷人気のさきがけとなったのは周荘という街です。上海市内から西へ70キロほど、バスで1時間半ほどのところにあります。900年程の歴史があり、東に伸びる運河により海につながるという地理的条件を生かし、江南の交通の要衝として水運、商業が栄えました。

 周荘には明時代に建設された世徳橋と、それに直角につながる永安橋をあわせた「双橋」があります。上海人画家・陳逸飛がこの橋を素材に描いた「メモリー・オブ・ホームタウン」が紹介されたことから一躍周荘が有名になりました。街中にはかつての豪商の家が公開されており、道教寺院や民家を改造した周荘博物館などもあります。 


                   


  しかし周荘はいまや余りにも有名になり、観光地化してしまいました。訪れる人が多いため駐車場は離れた所にあり、街まで少し歩かなけれならず、また街へ入るためには入場券が必要です。民家をゆっくりと見たいと思っても、ほとんどが土産物屋に変身しているため、呼び込みもうるさく情緒がありません。なにやら衣装を着た女性が踊っているのを写真に取ると撮影料を要求されるし、水郷の街だからと船に乗れば余りに船が多すぎて前へなかなか進みません。

 地元の人にとっては金儲けの絶好の機会とばかりに商業化したので、江南の風景をゆっくり楽しむことはできなくなっています。ですから今や別の水郷の街に目が向けられています。例えば同里や烏鎮、西塘などです。中でも西塘は子供達が路地を走り回るなど、まだしも昔ながらの雰囲気が残っています。ただここも新たな観光地として注目されていますからいつまで楽しめるかわかりません。最近では錦渓という水郷も注目されているようです。

 人間というのは勝手なもので、都会に住んでいながら週末だけ静かなところを求めます。そして人が多くなったら味わいがなくなったと文句を言います。結局観光地化されるのは自分達のせいなんですが。本当に江南を味わいたいのなら、誰も注目しない農村をぶらぶら歩くのが一番いいのかもしれません。

 上海あれこれA 03.7.25

「日本語雑誌で情報入手」


 ある国に長期であれ短期であれ滞在するということは、その国の歴史や文化、伝統に触れる機会を得ることだと思います。観光一つするのでも現地の事情を知っていれば場所を探すのもそれだけ早くなります。
 
 「○○旅の案内」というたぐいの指南書は多く出版されていますが、その影響かそれらの本に書かれている所を訪ねるのに必死で、地元の人々の生活には触れないでいる場合も多いような気がします。どこの国へ行っても日本あるいは日本語から離れられないという人がいるのも事実です。
 
 上海に住む日本人が多くなっていることや情報化社会の進展などの理由で、日本人向けの情報も格段に多くなってきました。北京や大連、香港といった都市もそうなんですが、一般配布される日本語の情報誌が上海では三誌発行されています。「上海ウオーカー(城市漫歩)」、「スーパーシティ(大城市上海)」、「コンシェルジェ上海(都市精粹広告)」がそれで、いずれも広告を取ることで無料配布しており、ホテルやレストランなどで手に入れることができます。


                   


 いずれも月刊誌で、毎号何らかの特集や企業や人の紹介、その他生活情報などが掲載されています。例えば03年7月号では上海ウオーカーが「サークル最前線」、スーパーシティが「それ行け中国人経営者」、コンシェルジュが「大人のBAR」と、それぞれ特色を出すのに工夫をしています。

 上海ウオーカーがこれらの中では一番先行して出版した雑誌だけに、レストランやショップなど細かい生活情報は充実しています。最近ではウオーカーカードを作り、掲載された店の一部で割引があるなどのサービスも開始しています。まあいささか飲み屋関係の情報が多いのがたまにキズですが。スーパーシティは発行母体が不動産仲介会社なので、「部屋探しページ」など企業関係のニュースが多いのです。コンシェルジェは一番新しい雑誌で、特集が“おしゃれなカフェや行きつけのバー”というように、ちょっとオトナのという雰囲気を出そうとしています。

 これらの雑誌を参考にしておいしいレストランを探すのもいいでしょう。逆に雑誌に頼らず自分の足で歩き目で確かめることも必要でしょう。そうして得た情報というものは無駄に終わるかもしれませんが、そんな過程を楽しむ余裕があるのもいいのかもしれません。またそれがイザという時に危機管理の基礎情報になることもあります。

 郷に入れば郷に従え。現地の人との交流で得た情報は、実に貴重なものになるでしょう。

 上海あれこれ@ 03.7.1

「クジ付き領収書でひょっとしたら大金も」


 中国ではお正月は春節(旧正月)が中心で、家族で祝うのはそちらのほうになります。ですからクリスマスなど年末は若者を中心に外食ディナーということで、フランス料理店などは大賑わいだったようです。そんな賑わいに飲食関係者はホクホク顔でしょうが、さらに顔がほころんでいるのは上海市政府かもしれません。というのも日本とは違う意味で税収入が増えるからです。その一つが「クジ付き領収書」です。

 02年10月から上海でインスタントクジ付きの領収書が発行されるようになりました。飲食関係、娯楽関係、家庭内装飾品関係で買い物をすると、領収書20元からクジが付いています。領収書の左にある部分をコインでこすると「謝謝イ尓」という文字か、数字が出てきます。「謝謝イ尓(ありがとう)」は残念ながらはずれで、数字が出るとその数字と同じ額の賞金がもらえるようになっています。

                   


 この領収書にはもう一つこすれば出てくる「密馬(パスワードナンバー)」があり、電話かインターネットで税務局にアクセスし、抽選で当たると本人に連絡が行き、賞金を受け取れます。ダブル抽選ということです。当たりは5元(約80円)から1万元(約16万円)までで、日本のインスタントクジで500円から50万円があたるような感覚でしょう。当たった人は身分証明書を持って30日以内に市の税務署に行き、お金をもらいます。

 これまで特に飲食関連の店ではきちんと領収書を発行しない店も多く、収入をごまかして、決められた基準で税金を納めるという意識が希薄でした。そんな状況で私企業が増えていくと脱税が増えていくし、また国も社会保険の整備や公共事業の増大などで収入を確保していくことが必要になってきました。クジつき領収書はこのような脱税に対する歯止めと税収アップの一石二鳥という意味があります。

 市民にしたらひょっとして賞金があたるかもしれないと購買意欲も増えるし、店にしても収入をかなり正確に把握されるのはつらいものですが、お客が増えればそれだけ売上げが上がると期待できるかもしれません。まあ当局にしてみれば「ええことづくめ」だと宣伝したいわけです。ただ購買力が上がるのはこのクジのせいではなく、旺盛な経済活動が自然に押し上げるものかもしれません。

 いずれにしてもいろんな手段でお金を集めようとする市政府と、税をなるべく逃れたいとする企業との競争は新しいシステムを作り出すかもしれません。

ページトップへ戻る




inserted by FC2 system